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【ライブレポート】植田真梨恵、間違いなく最高の完成度

BARKS 7月31日(日)17時36分配信

この夏、たった一回のワンマンライブ。7月23日、東京・赤坂BLITZ。<植田真梨恵SPECIAL LIVE "PALPABLE! BUBBLE! LIVE! -SUMMER 2016-">。パルパブルとは、“ふれられる”。ニューシングル「ふれたら消えてしまう」に連動したタイトル。何にふれられるんだろう。音楽、心、体、それとも? 18時、期待満々の幕が開く。

◆植田真梨恵 画像

度肝を抜かれるというか、あっけにとられるというか。オープニングのインパクトは強烈だ。不穏な電子音。怪しいガスマスクの男たちが、明らかに危険な物体が入っていそうな、小ぶりの箱を押して登場。ガスマスクたち(実はバンドメンバー)が楽器を手に取り、猛烈にハードな演奏を始める。箱があく。スモークの中に手がのぞく。うわ、そこにいたの? そんな小さな箱の中に? マジで驚く、ホラーな演出。箱からはい出し、「旋回呪文」「ハルシネーション」「メリーゴーランド」。インディーズ時代の、刺々しいロック・チューンをたたみかける。「G」で軽快にタンバリンを叩きながら、やっと笑顔が見えた。今日の真梨恵、気合の入り方がハンパない。

「たった一夜しかない熱帯夜を共に。素敵な夢を見ましょう」

短パン、スニーカー、タンクトップ、長い髪をパーマでくるくる。少女っぽくも見えるけれど、今日は何だか、はっとするほどコケティッシュ。エレキギターをかき鳴らす「スメル」や「壊して」は、バンドと一体となって複雑なコード展開やテンポチェンジを鮮やかに決める。植田真梨恵の、特にこの頃のインディーズの曲は、メジャーもマイナーも緩急も明暗も、へんてこりんに絡み合ったストレンジ・ポップな聴き心地。扇情的で、刺激的。

「テレビのついてないひとりの部屋で書いた曲を」。そう言って歌う「kitsch」は、ぎりぎりの孤独感と激しく他者を求める心を燃料にした、重量感みなぎるロック・バラード。「未完成品(スケッチー)」も、たぶん同じようなことを言ってる。ひとつ前のMCで、“あとになって、こんなことを思ってたんだって、書いた時のキモチを覚えていない曲もあります”と言ったのは、どういう意味だったんだろう。“その瞬間のキモチは、きっと忘れてしまう”というのは、最新曲「ふれたら消えてしまう」のテーマでもあった。植田真梨恵の、永遠のテーマ。歌だけが残り、僕らはそれについて、ずっと考え続けている。

骨太なピアノ・ポップ「hanamoge」で、がらっとムードが明るくなった。ここまでは全部インディーズ曲、ここからはメジャーデビュー以降の曲がずらり。アコースティック・ギターを手に、穏やかに歌う「アリス」も良かったが、なんといってもこの日最高の名唱だったのが、ひとりで弾き語った「まわりくるもの」。生まれ育ったふるさとのことを思って作ったという、深い思いを詰め込んだ言葉を、語り掛けるように歌う無垢な歌声。ゆめをゆめのままで、ずっとずっと紡ぎたい。ひとつひとつの言葉が清らかな水のように、心のスポンジを湿らせる。ピアノと歌だけでつづった「吠える虎」も、圧巻だった。もう1人で歩いてゆける。なんて悲しい、なんて強い恋の歌。

「一夜限りのライブ、とても楽しみにしてきました。でもライブの準備は準備にすぎなくて、この夜にすべてを出し切らないと、ライブは完了しません。後半戦、楽しんでいきますか」

夏の歌ではないけれど、行く道に思い迷う心に雷鳴が響く感じが、夏っぽくもある「スペクタクル」。愛する人の死という重いテーマを、それとは感じさせずにダイナミックなロック・チューンに乗せて伝える「ハリイゲンシュタットの遺書」。君の心の痛みをわかりたい、でもわかんない、だけどわかりたい。ぐるぐる回る心の内を、軽快なバンドサウンドで聴かせる「わかんないのはいやだ」。いつだって彼女の歌には、歌詞とサウンドの間に不思議なズレがあって、その隙間が聴き手をぞっとさせたり、びっくりさせたり、感動させたりする。ライブでは特に、そのマジックがはっきり出る。歌とバンドの一体感が最高だ。

「まだ終わってほしくないか? もっと声が聴きたいか?」

明るいパワーポップ系の「泣いてない」から「ミルキー」へ、強力な高速ハードロック・チューン「S・O・S」から「ルーキー」へ、後半の盛り上がりはすさまじい。あんな華奢な体で、実はすごいロック・シンガーなんですよ。パーフェクトな音程と、とんでもない声量。本編ラスト「センチメンタリズム」まで、張りつめたテンションと、空間を満たすエナジーは、一瞬たりともゆるまなかった。

アンコール。曲は、みんな大好き「サファイア!」だ。あの、オープニングで使った箱が再び登場し、中を開けると色とりどりの風船。ひもをしっかり握って、歌い踊る姿はまるでミュージカル。彼女の中の無垢な少女性を、明るい方向に爆発させたポップ・チューン。一体、植田真梨恵の心の中には、いくつの顔がしまってあるのだろう。

ここでビッグ・ニュースの発表。10月12日、ニューシングル「夢のパレード」リリース。え、もうやっちゃうの? なんと3か月も前の特別披露。ミラーボールの回る中、スピード感たっぷりで、ちょっぴりせつなさもはらんだピアノロックのアレンジで、痛快に歌うかっこいい曲。リリースが楽しみ。そして、本当のラストはやはりこの曲、「ふれたら消えてしまう」。ステージ左右から吹き出すしゃぼん玉が、きらきら光りながら風に乗って、2階後方のこの席まで飛んできた。PALPABLE BUBBLE、ふれられる泡。泡のようにはかないけど、ふれてもきっと消えないもの。演出、構成、歌唱、演奏、すべてがハイレベルのポップ・ショー。間違いなく、これまでに見た彼女のライブの中で、最高の完成度。

終わって、ちょっとだけ話せた本人の弁によると、オープニングのあの演出は“悪夢”のイメージだったそうだ。なるほど。悪夢から目覚めて、現実の夢を目指す物語、なのかな? インディーズ時代の、孤独や痛みや悲しみをいっぱいにたたえた曲を前半に、メジャーデビュー以降の、広がりや共感や希望へと向かう曲たちを後半に持ってきたのも、そんな意味があるのかも。めんどくさいところ、あっけらかんとしたところ、絡まっちゃうところ、明るく前向きなところ、今までの自分を全部見せるのだ。たぶんこれは、植田真梨恵の自伝ライブ。次なる飛躍へ向けて、腰をかがめて飛びあがる一瞬前の姿。彼女はきっと、高く高く飛べるだろう。いつまでも忘れたくない、思いあふれるライブだった。

取材・文◎宮本英夫 撮影◎竹谷さくら

■<植田真梨恵SPECIAL LIVE "PALPABLE! BUBBLE! LIVE! -SUMMER 2016-">2016.7.23@赤坂BLITZ SETLIST
01.旋回呪文
02.ハルシネーション
03.メリーゴーランド
04.G
05.スメル
06.きえるみたい
07.壊して
08.kitsch
09.未完成品
10.hanamoge
11.アリス
12.まわりくるもの
13.吠える虎
14.スペクタクル
15.ハイリゲンシュタットの遺書
16.わかんないのはいやだ
17.泣いてない
18.ミルキー
19.S・O・S
20.ルーキー
21.センチメンタリズム
encore
22.サファイア!
23.夢のパレード
24.ふれたら消えてしまう

■6thシングル「夢のパレード」
2016年10月12日(水)発売
【初回限定盤(CD+DVD)】GZCA-4148 / GZBB-4148 \1,852+税
【通常盤(CD ONLY)】GZCA-4149 \1,200+税
01.夢のパレード
作詞・作曲 植田真梨恵 編曲 徳永暁人
02.サイハロー -autumn ver.-
作詞・作曲 植田真梨恵 編曲 西村広文
03.210号線
作詞・作曲 植田真梨恵 編曲 岡本仁志
04.夢のパレード -off vo.-
05.210号線 -off vo.-
▼初回限定盤特典DVD収録内容
植田真梨恵のまわりくるめロケ -UTAUTAU vol.2おまけ集-
▼通常盤特典
スペシャル映像が見られるパスワード封入

■ライブイベント出演情報
08月03日(水) 「SHOW BY ROCK!!」“3969”SUMMER FES 2016 大阪
08月04日(木) 「SHOW BY ROCK!!」“3969”SUMMER FES 2016 名古屋
08月08日(月) 大阪・OSAKA RUIDO 8th ANNIVERSARY『888』
08月13日(土) 茨城・rockin'on presents ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
08月19日(金) 岡山後楽園 夏の幻想庭園 FM岡山 FANTASTIC SUMMER LIVE
08月21日(日) 香川・MONSTER baSH 2016
08月26日(金) 東京・GIRL's PIC vol.2
08月31日(水) 「SHOW BY ROCK!!」“3969”SUMMER FES 2016 東京
10月08日(土)、9日(日)、10日(月・祝) MINAMI WHEEL 2016

最終更新:7月31日(日)17時36分

BARKS

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。