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【いま大人が子供にできること(14)】 「年上」の本を求めて、生き急ぐ子供たち

ニュースソクラ 7月31日(日)17時1分配信

無条件に、心から愛していることを伝える

 今年の、ある小学校への欲しい本アンケートで「男の子向け占いの本が欲しい!」についで驚いたのが、『永遠の0』『村上海賊の娘』『火花』というような本へのリクエストがきたことですね。

 どれも大人の世界では有名な作品だし、ビジュアル化もされる・されてるので知っていたって不思議はないけど、いままではリクエストが来なかった作品たちで、しかも男子から?

 女の子たちからは有川浩の『植物図鑑』とかは前から来てましたが(ちなみにご存じだとは思いますが『植物図鑑』というのは図鑑ではなく恋愛小説です、はい)。

 映画化されたからってすべてのものがリクエストされるわけではないので、どれが小学生に読まれてどれが読まれないかは毎回「ふーん」なのですが(そうして小学生にウケないとしても、それは小学生にウケないというだけのことなのですが)これはいままで低学年が中心だった「恐竜」「昆虫」「働く車」が幼稚園保育園にスライドしたように、中学二年生が六年生にスライドしてきたってことなのか?

 小学四年生までの脳は、理屈しか受けつけない生真面目な脳です。
 まずは生まれ落ちた世界に適応し、生き延びるための知識を身につけなくてはいけない、という使命に燃えている脳ですね。

 なので、小学生が好む文章は世界がつかめる説明文・解説文が中心で、図鑑や雑学本ということになります(こちらとしても、ここで日本語を習得してもらわないとあとあとものすごく響くので、小学生にはぜひとも論理的な日本語の文章をたくさん読んでもらいたい!)。

 子どもの脳は、必要なことを習得できるようにセッティングされるのだとつくづく思います。

 それが五年生あたりからは社会性のある脳が発達してくるので、まずは「カッコいい!」を武器に、戦国武将で政治・法律・経済にはまり、そののち、特に男子は女子よりも遅いので、中学二年頃になってようやく他の人と自分を比べることができるようになり、自分はなんなのか、ということを考え、悩み始め、でもまだ哲学書は読めないので自分と同じようにあがいている小説の主人公たちの心情に共鳴したり、そもそも小説というものが何を書いてるかようやく理解できるようになって、小説を読み出すグループができるわけですよ。

 だから、中学二年になると毎年何十人かは小説にはまる男子が出てくるので、中学校では頑張って小説を揃える図書館をやります。

 夏目漱石や太宰治、芥川龍之介は定番…… それに江戸川乱歩、夢野久作、渋沢竜彦、京極夏彦あたりが中学生男子の王道……。

 いまはそれに光文社の新訳クラシックシリーズを入れて『戦争と平和』とかの外国のクラシック定番を揃え、岩波文庫は無理、という子たちのために(まあ、大人でもたいがい無理ですがね)イーストプレスの「まんがで読破」シリーズを用意します。

 このシリーズは新渡戸稲造の『武士道』から、プラトン、ニーチェをはじめ『茶の本』まで揃っているという優れもの。
 ものすごく易しく作ってあるので怒る大人もいるのですが「私はプラトンて、なに?」というよりは「そういう人がいたんだ~」ということを覚えるだけでもいいと思うんですよね~。

 本物は大学生になって読むんでも充分間に合うんですから……。

 というように、いままでは大人の小説は(児童文学ではないものは)中学から……だったんですが、それが六年生から、になってきた感じがひしひしとする……。

 子どもたちがなんか生き急いでいるように見える……。

 で、それは「そうしないとヤバそうだ!」という生存本能のなせる業なんでしょうか?
 それとも、人類が進化?しているということなのでしょうか?
 たった、この五年、十年で……。

 社会の不安がそのまま子どもたちに反映されてるとしたら、人間はとても環境に敏感ないきものなんですね。

 で、もし中二病が六年生まで降りてきているのだとすれば、五年生までにそのための準備をしないと間に合わない、ということになります。

 準備というのは、君は私にとって、欠けがえのない存在だ、君を心から愛しているよ、ということを子どもにちゃんといっておく、ということです。

 中二病で暴走する子たちは自分がとるに足らないちっぽけな存在だ、ということを受け入れることができない……。それまでに愛されている、という自信がないからです。

 人間はただの生物に過ぎませんから、本来、生きている意味なんてありません。

 その子が生きていることに意味がある、と思うのはその子を愛している人たちだけです。

 思春期の、自分の存在意義を探して苦しむ子どもたちを救うのは、別に特別きれいでも賢くもないけど、絶対に自分は意味もなく愛されてるんだ、という自信なのです。

 どうぞそれを五年生までに! 子どもたちにきちんと伝えてください。

 人は、いわれなければわかりません。心に思ってるだけでは伝わらないのです。

■赤木 かん子(本の探偵)
1984年、子どもの本の探偵としてデビュー。子どもの本や文化の評論、紹介からはじまり、いまは学校図書館の改装からアクティブラーニングの教えかたにいたるまで、子どもたちに必要なことを補填する活動をしている。
高知市に「楽しく学校図書館を応援する会」として学校図書館モデルルームを展開中……。
著書多数。

最終更新:7月31日(日)17時1分

ニュースソクラ

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