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小池都知事の「満員電車ゼロ」とは

ニュースソクラ 7月31日(日)20時0分配信

ブレーンが主な反対や疑問に答えよう

 小池百合子東京都知事が誕生した。「満員電車ゼロ」を政策に盛込み、7月28日のテレビ出演では、その実現策として、総2階建て車両の導入、時差出勤、信号システムの改良を挙げた。

 それは、8年前に出版され小池氏の推薦文をお受けした私の『満員電車がなくなる日』の内容であり、決して付け焼刃でなく実行が前提だ。高野之夫豊島区長が10年以上前から提唱していた池袋LRT構想に、地元選出の衆議院議員だった小池氏は当初から賛成し、その会合でお会いして以来、私のことを交通の専門家としてご評価下さっている。

 「満員電車ゼロ」に対し、多くの期待が集まるとともに、以下のような反対や疑問も出ている。
  1)東京都が持つ鉄道はわずかで、他の鉄道事業者へ実行させる権限はない
  2)輸送力を大幅に向上する方策は?
  3)実行する資金の手当ては?

 1)に関して、東京都は鉄道事業者への直接の許認可や行政指導の権限はないが、必要な投資に財政支援することもあり、ユーザー及び地域の代表として大きな発言力を持つ。例えば、さる4月に国が発表した2030年に向けた「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の交通政策審議会答申には、昨年3月に都が「整備効果が高い」とした5路線と地下鉄2路線がそのまま反映された。

 東京都知事が強い意志を持てば、鉄道事業者・関係自治体・国等の関係者の合意を形成し、「満員電車ゼロ」を含め東京圏の鉄道の利便向上や充実を実現できる。

 2)は、『満員電車がなくなる日』の内容である。運行・運賃・制度の3つのイノベーションにより、信号システムの機能向上や総2階建て車両で輸送力を大幅に増強でき、着席サービスに対する対価でその財源を確保でき、制度の適正化でより短期に成果を出せる。より詳しくは、10シート及び36シートのエッセンス(http://www.LRT.co.jp/18man-in)をご覧願いたい。

 さらに、出版後の8年間で実行内容をより洗練させたので、今後、より安価で効果的な方策の詳細を発表する。

 3)は、前項の運賃のイノベーションと公的支援の合せ技である。

 『満員電車がなくなる日』で最も言いたかったのは、「満員電車の歴史は運賃抑制の歴史」という点であり、それさえ改められれば100年間続いた満員電車をゼロとできる。しかし、運賃の一律値上げは社会の理解を得にくいので、良質なサービスを重点的に高くする。具体的には、民鉄各社で普及の進む有料着席サービスを徹底的に進化させる。

 それにより、東京圏の鉄道利用4,000万人/日の平均客単価を100円向上できれば1.5兆円/年、40円向上できるだけで6,000億円/年の増収となる。それは現行の東武・西武・京成・京王・小田急・東急・京急の運賃収入を併せた7,000億円弱/年にも匹敵し、鉄道運賃の抑制ぶりがよく分かる。毎年6,000億~1.5兆円を投じられれば、満員電車は早晩ゼロとできる。

 さらに、都市鉄道等利便増進法は国・自治体・事業者が3分の1ずつ費用負担するスキームだが、現行は速達性向上と駅施設利用円滑化のみで、輸送力増強は対象となっていない。法の目的に「既存の都市鉄道施設を有効活用」と「都市鉄道等の利用者の利便を増進」があり、都から国へ輸送力増強も含むよう法改正を要請したい。

 鉄道事業者の増収に国・自治体の公的支援を加えれば、「満員電車ゼロ」をより短期に達成できる。

 「満員電車ゼロ」は、多くの東京圏住民が切望しており、社会全体の効率性を高めるうえでも非常に効果が高い。郊外の土地・建物の価値が向上し、例えば、満員電車を嫌って都心マンションの2LDKを購入している人たちが、同額で6LDKの豪邸に住み快適通勤できるようにもなる。

 私は、「鉄道事業者は社会的使命に基づき採算度外視で満員電車をゼロにすべき」などとは一切考えない。利用者の最大の不平・不満である満員電車は鉄道事業のビジネスチャンスであり、それを解消する商品を適価で販売し正々堂々と利潤を得ればよい。それこそが自由主義・競争社会の活力だ。

◆阿部等(あべ・ひとし)1961年生、東大工学部都市工学科大学院修了。JR東日本(1期生)に17年間勤務し、鉄道の実務と研究開発に従事。2005年、交通コンサルタント会社「ライトレール」を創業し、交通計画のコンサルティングに従事。各種メディアにて鉄道に関してコメントする機会も多い。

阿部等(交通コンサルタント会社「ライトレール」社長

最終更新:8月2日(火)11時14分

ニュースソクラ

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