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【中学受験】グノーブルに聞く「過去問」活用術<理科・社会>教科により異なる対策

リセマム 8月1日(月)17時45分配信

 受験生にとっては天王山と呼ばれる夏。半年後には入試本番を迎える中学受験生の保護者にとって、そろそろ気になり始めるのは「過去問」のこと。過去問題対策について、「中学受験グノーブル」に話を聞いた。

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◆理科 永井裕康先生

--理科担当のお立場から、開始時期についてアドバイスをお願いします。

永井先生:ほかの教科同様、一般的には9月から始めるのがよいでしょう。ただし、9月がベストだというわけではないケースもあります。

 特に中学入試における理科の特徴のひとつに、「単元数の多さ」があげられます。物理・化学・生物・地学の4分野からバランスよく出題する学校が多いですが、たとえば地学分野ひとつをとってみても、「太陽」「月」「星」「惑星」「流水のはたらき」「地層」「火山と岩石」「地震」「気象」などがあります。

 塾のカリキュラムによっては夏が終わった時点で未習のものもあるでしょうから、その単元の根本を学習してから取り組んだほうが効果的な場合もあります。もちろん、入試問題は知識を前提とした出題ばかりではなく、「読み取り題」「現場思考題」もたくさんあり、演習する時期を選ばない良問も数多くあります。

 したがって、一律に9月、と思い込む必要はなく、個々の状況や志望校によって講師と相談しながら始めることをお勧めします。事実、11月以降に取り組み始めた生徒でも、きちんとした学力があれば合格しています。過去問は「伝家の宝刀」ではなく、志望校の出題傾向を知ることや、それに慣れることが目的なので、先を見据えて9月や10月を過去問以外の学習に費やしてもよいわけです。

--過去問は何年分解けばよいですか。

永井先生:一般論としては、志望度が高い学校は5~10年分をお勧めしています。対していわゆる“おさえ”の学校でお子さまの学力的に合格の可能性がそれなりに高ければ、1~3年分で十分でしょう。

 ただし、試験傾向がやや特徴的であり、慣れるまでにそれなりの量が必要な場合や、お子さんが解いてみて戸惑いを感じた場合は多めに、一方で、普段の学習の延長線上にあるようなスタンダードな問題の場合は少なめに、適宜調整してください。

--計画を立てる際の注意点はありますか。

永井先生:年内にある程度の過去問演習が積めるような計画を立てましょう。お通いの塾のカリキュラム学習も当然のことながら大切ですので、「1週間に1年分」「授業の休講などがあり少し余裕のある週には2年分」などでスタートしてみるのが適切かと思います。

 ただし、タイトな計画を立てて実行できなかったときの精神衛生面を考えると、予定には変更の余地を持たせたいですね。つまり、年末までの大筋を組み立てつつ、まずは2か月程度、仮に9月に始めるのであれば9月分と10月分の計画を立ててみてやり始めてみるとよいでしょう。

 そして秋の中盤に、その時点での進捗や取り組んでみた印象を踏まえて講師に相談しながら調整し、後半戦にあたる11月と12月の計画を立てるのです。この時期であれば、併願パターンも確定しつつあると思われますので、計画を2段階に分けると進めやすいと思います。

--どのように復習すればよいですか。

永井先生:何度も解き直すことは、私は推奨していません。そもそも過去問とは「近い年度ですでに出題された問題」であり、その学校で同じテーマの問題が出題される可能性は低い、とも言えます。同じ学校の同じ問題を何度も繰り返して解くことに時間を費やすのであれば、ほかの中学校で出題された多くの問題に触れてさまざまな経験値を積み上げるほうが力がつき、合格への近道だと考えます。

 理科では、毎年、各中学校が工夫を凝らしてさまざまな出題をしていますが、「今年の○○中学校の問題は、△△年度の□□中学校の問題と同じテーマだ」とか「▲▲年度の■■中学校の問題を経験していた受験生なら得点しやすかったかも」などと思うことがありますね。

 また、時事として話題に上がったテーマなど、次年度はこんなテーマが出題されるのでは、といった場合、そのテーマやそれに近い問題を、近年の色々な中学校から探したほうが効果的かつ良問を見つけられる可能性が高いです。

 もちろん、中学校によって出題されやすい単元や内容は存在します。この場合は上記の限りではありませんので、講師と相談し、個々の状況に応じた的確なアドバイスを受けることも時には必要でしょう。

--本番まであと半年、親は塾とどう関わっていけばよいでしょうか。

永井先生:塾を最大限に利用してください。利用したいと思える講師が見つかっているのであれば、指名してアドバイスを求めればよいと思います。どの学校をどの程度取り組むかなど、計画上の取捨選択だけでなく、取り組んだあとの問題や解答用紙を提出し、解き直しや知識の再確認など、適切な指示を受けることで、学習の精度は格段に向上します。

 中学入試の学習では、視野を広げたり、さまざまな経験により学力の太い幹を形成することも大切です。過去問は、志望校に合格するために必要な経験値を高めるツールのひとつです。過去問の出来に盲信する必要性はありません。戸惑うことがあれば、保護者は塾の講師に遠慮せず相談し、お子さんが合格するための学習を日々積み上げられるよう、支えてあげてください。

◆社会科 濱田剛士先生

--社会の過去問を解くうえで、社会特有の注意点について教えてください。

濱田先生:社会の過去問については、3年分でよいと思います。3年以上古い問題を解く場合、データが古過ぎるケースがあるからです。

 ただ、社会だけ他教科に比べて年数が少なくなるため、圧倒的に演習量が不足することは否めません。そこで、自分が受ける予定のない学校も含めて、他校の最新の過去問に取り組むことをお勧めします。社会の問題には、年によってトレンドのようなものがあります。最近ですと、「ハザードマップ」に関する問題が多くの学校で取り上げられています。

 例外は、記述の多い学校です。こちらを受験予定の方には、過去問集に載っている問題はすべて解くよう指示しています。

--どのように復習すればよいですか。

濱田先生:社会の問題には、“悪問”も多く含まれています。つまり、満点を取らせないための、誰にも解けないような問題です。真面目な子は、解説を読んで、「この答えも覚えなければ」とノートにまとめようとしたりするのですが、かえって貴重な時間の無駄になってしまいます。本人も親も聞いたことのないようなものについては、無視してしまって構いません。

 ただし、親には馴染みがないけれど、受験生はできなければいけない問題があります。これについては、最新年度で他校の問題をいくつも解いているうちに、繰り返し出くわします。

 また、社会は、リード文を読まなくても解ける問題もあれば、リード文を読んでいると文中に解答のヒントが隠されている問題もあります。リード文を読むには時間がかかりますので、受験校がどちらのタイプの学校か、過去問の傾向から把握し、時間配分などの心構えをしておくとよいでしょう。

--「全然点数が伸びない」その克服法は。

濱田先生:10月、11月になっても、全然点数が伸びないと相談に来られる方は多いですね。苦手なところが漫然としており、何から手をつけてよいかわからない状態に陥っています。このような場合は、解いた過去問と解答を担当の講師に見てもらうとよいでしょう。

 講師がよく分析してみると、同じ間違いを繰り返していたり、ある特定の分野が苦手であることがわかり、適切なアドバイスが受けられると思います。社会が苦手、というのは社会全体が苦手、ということはほとんどなく、特定の苦手分野があるということです。その穴をしっかり埋めるだけでも、点数は伸びていくはずです。

--時事問題にはどのように取り組めばよいですか。

濱田先生:興味がないお子さんに、無理矢理ニュースを見せたり、新聞を読ませても、効果は期待できません。むしろ家庭内不和の要因になってしまうと思います。

 大人が指示するよりも、教室の中で「自分と同じくらいの成績の友達が、自分より社会の出来事をよく知っている」という現実を突きつけられるほうが、子どもにはこたえます。どうしても社会の出来事に関心が向かない時には、そういう教室の雰囲気作りを講師に仕込んでもらう、というのも一手です。大抵どこの塾でも、授業中などで時事問題を扱いますので、あまり早くから気を揉む必要はありません。

--その他、親ができる家庭でのサポートはありますか。

濱田先生:体調・モノ・スケジュールの管理です。

 「モノ」の管理とは、テキストやプリントなどの整理整頓です。カバンの中でグチャグチャになっているプリント類を引っ張り出し、教科ごとに並べ替えたりするのを子ども自身が行うのはこの時期には大きな負担です。6年生の夏ともなると、子どもたちは塾でも家庭でも常に課題に追われている状態ですので、ぜひ手伝ってあげてください。

 そしてもっとも重要なのは「スケジュール」の管理です。夏期講習のある日、ない日、で起床から食事、入浴、就寝までの間に、何時から何分間、何を行うのか、定型を決めてください。定型があって崩れるのは補正の対象ですが、何もないのは危険です。せっかくの夏休みが無駄になってしまいます。定型は「体調」の管理にもつながりますよ。

 定型に沿って学習を積み重ねていけば、この夏は本番に向けての大きな財産になります。また、定型を崩さないために、スマートフォンや携帯からお子さんをできるだけ遠ざけ、勉強以外の人間関係のストレスに巻き込まれないよう配慮することも、家庭での重要なサポートだと思います。

--ありがとうございました。

 4教科通じて強調されたのは、「過去問の結果に一喜一憂しない」「塾の講師を最大限活用する」の2点。あと半年、まだまだ伸びしろあり。過去問を「合否占い」にせず、塾の講師を最大限活用しながら「磐石な本番力」の礎にしたい。

《リセマム 加藤紀子》

最終更新:8月1日(月)18時15分

リセマム