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シリコンバレーの反トランプが案外「一枚岩」ではない理由

ZUU online 8月1日(月)18時10分配信

ドナルド・トランプ氏がついに、米共和党大統領候補の正式指名を受けた。先立つ7月14日、先端テクノロジーでアメリカ経済を牽引する、シリコンバレーのそうそうたる実業家たちが、“ある書簡”を提示した。「トランプ氏の政策提言にNo」がその内容である。

■シリコンバレーが危惧する、トランプ氏5つの難点

今回の公開書簡は、シリコンバレーに本拠を置く世界有数のIT企業の有力幹部や投資家、ITベンチャーの関係者145人が発表したものだ。トランプ氏の政策に「No」を突きつけた書簡では、「トランプは未来のイノベーションを破壊する」と強い調子での非難が文面に踊った。

書簡に名を連ねた賛同者のうち52人は企業のCEO、83名は創業者もしくは共同創業者。まさにシリコンバレーの先端IT企業をリードする人々の総意として、反トランプを明確に宣言したのである。

公開書簡の内容は、大きく5つの要素で構成されており、次のように要約できる。

◎非寛容によるイノベーションの阻害

アメリカのイノベーションは世界をリードし、世界を繁栄に導いている。その根底にあるのは、さまざまなチャンスや創造性、知的活動を育む寛容性である。

同氏は、怒り、偏狭さ、新しいアイデアへの恐れにより、イノベーションを大きく阻害している。

◎人種、民族・女性への偏見が損なうクリエイティビティ

優れたアイデアは、社会のすべての階層から生み出され、シリコンバレーはそれらをクリエイティブな力に変えている。機会均等が保証された偏見のない自由な世界における個人の活躍や進歩的な移民政策こそが、クリエイティブを促進する。

同氏は民族や宗教、人種に対す偏見を煽り、女性を見下し、移民に対する敵意を表明している。

◎無知によるインターネット妨害

同氏は“国家の安全上の目的”でインターネットの一部を遮断しようとしている。これは彼の惨めな判断能力とテクノロジーに対する無知の故である。

◎メディアの自由を剥奪

同氏はメディアの自由を奪おうとしており、彼を批判するメデイアに罰を与えようとしている。

◎無策

同氏は突飛で偏見に満ちた政策を思いつきで言っているだけで、具体的政策は何もない。彼の無謀で無理解な姿勢は、アメリカ企業に大きな脅威を与える。市場を混乱させ、輸出を減らし、この国の雇用に減速をもたらす。

改ページ>>一枚岩ではないシリコンバレーの内情とは?

■「トップ1%だけが富を享受」という図式

ただしシリコンバレーも一枚岩ではない。今回の反トランプ書簡を提示したのは、大物とはいえあくまで個人であり、企業を代表してはいない。

そもそもシリコンバレーの支持政党はどこなのだろうか。オバマ大統領の優遇政策などにより、シリコンバレーは概ね民主党支持であるというイメージが広がっているが、内実は少々異なる。

シリコンバレーは、GoogleやAppleなどの巨大企業を生みだす一方で、その果実にあずかれるのは経営層やファンド企業など、一部分の富裕層に限られている。リーマン・ショック以降の不景気を背景に2011年に起こったOccupy Wall Street。不景気への対策を打てない政府への抗議運動において、スローガンとなった「We are the 99%」は米国の資産の30%以上を上位1%の富裕層が所有しており、その中に含まれない99%の人々を指す。ここに象徴される格差問題は、シリコンバレーにも存在しているのだ。

シリコンバレーにおいても状況は同じで、多様性に満ちた理想郷ではなく、実はWASPと呼ばれる裕福な白人層が支配する傾向が根強く、格差社会であるといえる。

■「Make America Great Again!!」という理想郷の響きに民主党も焦る

もともと富裕層の支持政党は共和党であり、それはシリコンバレーでも同様なのだ。Facebookの初期投資家である、ピーター・ティール氏は今回の共和党大会に、シリコンバレーから唯一参加しているが、彼は明確に共和党・トランプ氏支持を表明している。AmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏も、政治的な立場を表明したことはないが、実は密かな共和党支持者ではないかともいわれている。

ただトランプ氏のあまりに偏屈で独善的な政策案が、シリコンバレー経営層に危機感を抱かせ、それが今回の反トランプ書簡につながったといえる。反対書簡の目的は、あくまでトランプに一言いっておきたい、お灸を据えたいということであり、単純に共和党から民主党指示への鞍替えには繋がらない。今回の書簡が、あくまで個人中心で企業を代表するものではないのも、背景にそういった理由があるからだろう。

■富裕層以外も惹かれる、トランプ氏が掲げるかつての豊かさ

一方で、もともと民主党にとって強固な支持基盤である、残り99%の一般人や労働者たちはどうなのか。

たとえ先端テクノロジーへの優遇政策も手厚いシリコンバレーで職を得ていても、テクノロジーの恩恵とは無縁の人々は、日々感じる経済格差に苛立ち、民主党に期待を寄せていた。他方で、労働者に対する諸問題に関して、民主党はなかなか有効な手を打てていない。

そこにトランプ氏が登場した。同氏が声高に叫ぶ「Make America Great Again!!」は、かつて誰もが豊かさを実感できた偉大なるアメリカの復興である。「トランプ氏なら、自分たち残された99%の諸問題を、解決してくれるかもしれない」そう感じた人が、やや無定見とも受け止められる主張への熱狂的な支持の中で、支持政党を急速に鞍替えする可能性が広がっている。

現地時間の7月27日午前、共和党に遅れること約1週間、ヒラリー・クリントン氏が民主党の大統領候補に正式指名された。今年11月に向けて、トランプ氏はクリントン氏と真っ向から、激しい大統領選挙を争うことになる。

トランプ氏はアメリカの国家再生をもたらすのか、それとも極端な孤立主義と差別主義により、アメリカを暗黒面に突き落とすのか。世界さえも揺るがすアメリカの大統領選挙は、いよいよ正念場を迎える。(ZUU online編集部)

最終更新:8月1日(月)18時10分

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