ここから本文です

クリントンVSトランプ 日本にとって望ましい米大統領はどっち?

ZUU online 8月1日(月)19時10分配信

今秋に一般有権者投票を迎える米大統領選。11月8日の投票日に向けて、共和、民主両党の正式な候補指名が終わり、米共和党のドナルド・トランプ氏対米民主党のヒラリー・クリントン氏の構図が公式にも確定した。

次期米大統領をめぐる組み合わせとしては、異色だと言って差し支えないだろう。トランプ氏は当初、共和党の大統領候補の指名を獲得する可能性が低いとみられていたものの、7月19日の党大会で共和党の大統領候補の座が手中に転がり込んだ。

TVのトークショー司会者としても歯に衣着せぬ独特の物言いで人気を得ていたとは言え、1年前の出馬宣言時点で、「泡沫候補、トランプ」が共和党の指名獲得に成功すると見る専門家は皆無に近かった。「不動産王」と言われるように、不動産業で身を興しており、もし米国大統領に就任すれば、「実業家として初めて」の米国大統領となる。

一方で、クリントン氏がもしも、米国大統領になっても、「初」となる。初の「女性米国大統領」だ。女性の国家首長としては、英国で自由化を進めたマーガレット・サッチャーや、現ドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏などもいるが、米国大統領としては初の出来事だ。

また1993年から8年間にわたって大統領をつとめたビル・クリントン氏を夫に持つ、元ファーストレディーは政治的な経験も豊富。オバマ政権で国務長官を務めている姿をすぐに思い浮かべる読者も多いかもしれない。

■トランプ米大統領実現で「日本に核武装を促す」可能性も

日本経済だけではなく、世界的に大きな影響力を誇る米国大統領の選挙で気になるのは、クリントン、トランプの両候補がどんな政策を掲げているか。共和党、民主党それぞれが政権を獲得した場合には、日本への影響も大きいとみられるだけに、気になるところだ。両候補の政策の概略を見ておこう。

まず、最も違いの際立つのが、対外政策のスタンスだ。貿易や移民、安全保障といった分野だと言い換えてもいいだろう。トランプ氏の旗印は「米国第一」。グローバリズムを抑え込むことで、米国人の富と職と安全を確保すると同氏は言う。

トランプ氏の主張は過激で、「イスラム教徒の入国禁止」など無謀にさえ聞こえる発言は党大会での指名受諾演説以降やや抑制的となったかに見えるが、「不法移民対策として国境に巨大な壁を建設」、「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)もNAFTA(北米自由貿易協定)も、米国にとってより公平なものに改定しない限り破棄」など、目を剥くような主張を連発する。

ほかにも、中国の知的財産権侵害を批判し、暗にではあるが日本の円安誘導にも否定的だ。安全保障に関してはオバマ政権の中東外交の拙劣さがイスラム国の台頭を産んだと非難。「弱体化した米軍を再建し、NATO(北大西洋条約機構)を含め米国が防衛する国々に相応の負担を払うよう求める」とも語り、在日米軍駐留経費負担の見直しや日韓両国の核保有による自衛を促す姿勢さえ示したこともある。

■オバマ政権の路線継続が期待される「クリントン米大統領」

一方、クリントン氏は安全保障に関する限り、民主党の中ではかなりのタカ派で通っている。国務長官時代にイラク戦争の開戦を肯定し、イスラム国やアサド政権(シリア)に対しても「封じ込めではなく打倒を」と強硬姿勢を示してきた経緯がある。

ただ、同盟国重視という戦略論ではオバマ路線継承の現実派だ。とりわけ日米同盟を中心に据えたアジア重視への転換を志向しているとも見られている。

他方で、通商政策では、まだまだ高い成長率を示す中国へは強硬な姿勢を示す。中国の不公正貿易に対する報復をクリントン氏は示唆しており、日本を含む為替安に誘導している国に対しては批判的でもある。本来的には、民主党は保護貿易に、共和党は自由貿易に傾く伝統を持っており、今回はその点ではねじれの関係にあると言えるだろう。

一方、税制への取り組みにも両氏の違いが表れている。クリントン氏は、富裕層・大銀行・海外移転企業などへの課税強化を標榜しているのに対して、トランプ氏は法人・中所得層中心にかなり大規模な減税を打ち出している。「大きい政府」志向の民主党、「小さな政府」志向の共和党という図式に沿った形となっている。

■男女賃金格差の是正などでは共通する両候補の社会政策

クリントン氏が男女賃金格差の解消、トランプ氏が最低賃金の引き上げを通じてそれぞれに「格差」問題への関心を表明している。そして、ともに積極的なインフラ投資を主張しており、似た政策を表明していると言えそうだ。

ほかにも社会政策では、最大の争点は医療制度改革(いわゆる「オバマケア」)への姿勢。ビル・クリントン政権の時代から公的医療制度の民主党案作りに関わってきたクリントン氏はオバマケアの拡充を掲げるが、トランプ氏は市場原理に拠った民間医療保険の普及を謳っている。

人工妊娠中絶や同性婚を容認し死刑制度廃止や銃規制に前向きなクリントン氏、その裏返しを唱えるトランプ氏という構図は、民主党と共和党の姿勢をほぼ反映している。

■日本にとって望ましい米国大統領はどっち?

過去を振り返ると、民主党大統領時代の米国は厳しい対日通商政策を突き付けてくることが多かった。自由な市場経済を理想とする共和党に比べ、民主党はその支持基盤である労働組合やマイノリティーを守るため、日本の貿易競争力を少しでも抑えたいという意図が働いていたからだろう。

しかし、今回ばかりは共和党のトランプ路線が実現した場合、通商・安保を中心に日米間の摩擦が高まることは火を見るより明らかだろう。共和党主流派幹部の多くは指名党大会を欠席し、世界の主要メディアもそのほとんどが、トランプ氏の「米国第一主義」を危険な時代錯誤と非難している。

「出来すぎる女性」ヒラリーも100パーセント愛されている人物ではない。内向きな愛国主義や反「既成政党」のうねりが思いがけず大きな怒涛となって有権者を飲み込んでしまった実例を見たばかりの我々にとって、米国世論の行方は11月まで全く目を離せないものと見るべきだろう。(岡本流萬)

最終更新:8月1日(月)19時10分

ZUU online