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マンガン系合金ナノ薄膜からTMR素子を作製

EE Times Japan 8月1日(月)15時55分配信

■結晶格子のわずかな歪みが巨大なTMR効果を発現

 東北大学原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)の鈴木和也助手と水上成美教授らは2016年7月、垂直磁化マンガン系合金ナノ薄膜を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子の開発に成功したと発表した。大容量の不揮発性磁気抵抗メモリ(MRAM)の開発につながる成果だとみられている。

【開発したTMR素子の断面を透過型電子顕微鏡で観察した写真】

 今回の研究成果は、鈴木氏と水上氏の他、WPI-AIMRのレザランジバル助手、杉原敦助手(現産業技術総合研究所研究員)、岡林潤准教授(東京大学大学院理学系研究科)、三浦良雄准教授(京都工芸繊維大学電気電子工学系)、土浦宏紀准教授(東北大学大学院工学研究科)との共同研究によるものである。

 TMR素子を記憶素子としてトランジスタに組み込んだMRAMは、磁化(スピン)を記憶の担体としている。原理的には半導体DRAM並みの記憶容量とSRAM並みの高速性能を実現することができる。不揮発性メモリのため、記憶した情報を保持するための電力も不要となる。すでに256Mビット級の記憶容量を有するスピン注入書き込み(STT)-MRAMは、一部メモリメーカーなどからすでにサンプル出荷されている。現在はDRAMやSRAMなどの代替を目指して、容量がギガビット級の要素技術開発が、研究機関やメモリメーカーで行われているという。

 先端MRAMは、厚みが1~3nmの垂直磁化膜をTMR素子の電極として用いたものを、記憶素子として利用している。この素子サイズを小さくできれば、記憶容量を増やすことが可能となる。ギガビット級の容量を実現できるMRAMのTMR素子の直径は約20~30nmといわれている。この材料には、コバルトと鉄の合金にホウ素が添加されたコバルト鉄合金材料などが用いられる。

 ところが、容量がギガビットを超える次世代のMRAMを実現するには素子の直径が10~20nmとなり、より大きな垂直磁気異方性を発現する先進的な垂直磁化膜材料が必須となる。また、書き込み電流は磁性材料に固有の磁気摩擦の係数に比例して大きくなるため、磁気摩擦が小さい特殊な垂直磁化膜が必要である。

 東北大学WPI-AIMRの研究グループは、マンガンおよびガリウム元素を組み合わせた合金が、高垂直磁気異方性と低磁気摩擦を兼備した優れた材料であることを、2011年に発見したが、その製造技術を開発することが課題となっていた。

 研究グループは今回、非磁性コバルトガリウム合金を下地材料として用いた。これにより、加熱プロセスを用いなくとも、原子が規則的かつ周期的に配列したマンガンガリウム合金ナノ薄膜が作製できることを明らかにし、初めて実証しすることに成功した。これは、マンガンガリウム合金とコバルトガリウム合金の界面で、ガリウム原子が両者をうまく結合することによるもの、と考えている。

 また、下地材料との原子拡散が見られないマンガンガリウム合金ナノ薄膜の形成状態は、放射光を用いた磁気分光からも明らかとなった。マンガンガリウム合金ナノ薄膜の上部には、ガリウム原子を介して(001)方位に高配向した酸化マグネシウムトンネル障壁層が成長しており、高い品質のTMR素子が形成された。

■「超」ギガビットSST-MRAMに対応できる高い垂直磁気異方性

 今回開発した素子は、上部の磁性体層と下部のマンガンガリウム層の磁化(スピン)の配列に依存したTMR効果を、室温で発現することが分かった。また、マンガンガリウム層の磁化(スピン)を垂直方向から面内方向に傾けるためには4テスラ以上の磁場が必要であり、次世代の「超」ギガビットSST-MRAMに対応できる高い垂直磁気異方性を有していることが分かった。

 コバルトガリウムとマンガンガリウムは結晶格子がわずかに異なる材料であるが、マンガンガリウムナノ薄膜の結晶格子がわずかに歪むことで、結晶格子の違いを吸収していることも分かった。計算科学手法から、このように歪んだマンガンガリウム合金ナノ薄膜は巨大なTMR効果を発現することを示唆した。実際の素子においても、マンガンガリウムの結晶性を改善すれば、理論的に予測される巨大なTMR効果を発現する素子の開発に期待できるという。

最終更新:8月1日(月)15時55分

EE Times Japan

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