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【相模原殺傷事件】犯行予告などの情報共有に課題残す

福祉新聞 8月1日(月)10時2分配信

 相模原市にある神奈川県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」に7月26日未明、刃物を持った男が侵入し、知的障害者19人を刺殺した。神奈川県警は出頭した元同施設職員、植松聖容疑者(26)を殺人未遂と建造物侵入の容疑で逮捕。植松容疑者は「ナイフで刺した」と容疑を認めている。刃物を使った大量殺人事件としては戦後最悪とみられる。黒岩祐治・神奈川県知事、同施設を運営する社会福祉法人は27日に県庁で記者会見を開いた。両者の話を総合すると、犯行予告などの情報が関係機関の間で共有できていなかったことが露呈。福祉施設を舞台とした惨劇は、情報共有の在り方に課題を残した。

 死亡した19人の氏名は遺族の意向で非公表。男性が9人、女性が10人、障害支援区分別では最重度とされる区分6が15人、区分5が4人であることを県が公表した。

 県が設置した定員160人(短期含む)の同施設は2階建てで、社会福祉法人かながわ共同会(本部=同県厚木市)が2005年から指定管理者として運営。事件当時、知的障害者ら157人が入所し、職員8人と警備員がいた。植松容疑者は居住棟1階の窓ガラスを割って入ったと供述。職員2人を含む26人が重軽傷を負った。

 かながわ共同会によると、植松容疑者は12年12月から同施設で勤務を開始。周囲には「明るく、伸びしろのある青年」に見えたが、健康保険証を3回紛失したり、入所者の手の甲に落書きをしたりするなど不可解なことが徐々に現れた。背中に入れ墨があることも同僚が発見し、20歳の時に入れたものだと分かった。

 今年2月には衆議院議長公邸(東京都)を訪れ、障害者の殺害を予告する手紙を警戒中の警察官に手渡した。同じ頃、同施設での業務中に障害者を殺すなどと発言し、自ら退職願を出した。

 同施設は退職後の植松容疑者が施設内に入らないよう警戒。警察と連携しながら防犯カメラを設置したり、警察への特定通報システムに登録したりしたが、そうした対応を県には報告しなかった。

 ■偏見の助長を懸念

 犯罪史上類を見ない被害が生じたことを受け、福祉団体は相次いで声明を出した。

 植松容疑者が相模原市長の命令で今年2月に措置入院したとの報道をめぐっては、精神疾患の当事者支援に取り組むNPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)が26日、当事者への偏見を助長しないよう配慮した報道を報道各社に緊急要請した。

 全国手をつなぐ育成会連合会は同日、障害者向けの声明で、植松容疑者が「障害者はいなくなればいい」と話したとする報道に言及。「そのことで不安に感じる人もたくさんいると思います。そんなときは身近な人に不安な気持ちを話しましょう。私たちは一人ひとりが大切な存在です。安心して堂々と生きてください」と呼び掛けた。

 同施設が入会している日本知的障害者福祉協会も同日、会員向けの声明を発表。事件への遺憾の意を示したほか、リスク管理体制の再点検や利用者の不安への対応に努めるよう呼び掛けた。

 ■措置入院見直しへ

 厚生労働省は26日、都道府県などに対し、社会福祉施設の入所者の安全確保に努めるよう求める通知を発出。警察、ボランティア、地域住民との連携強化などを促した。

 27日に同施設を訪問した塩崎恭久・厚労大臣は記者団に「措置入院の解除について、今回は大麻使用のフォローアップができていなかったという指摘もある。よく考えないといけない」とし、検討する考えを示した。


 ◇黒岩知事の話=指導監督する立場から、心からおわびする。犯行予告や措置入院、大麻の陽性反応といった容疑者をめぐる報道があるが、関係機関からの情報提供はなく、県は把握していなかった。情報共有に課題があったとも考えられる。徹底的に検証し、再発防止策を講じたい。措置入院は人権にかかわる問題なので、慎重に取り組まなければならない。専門家を交えながらあるべき姿を模索したい。指定管理者制度の在り方も検証する必要がある(26日、27日の記者会見)。

 ◇かながわ共同会の話=尊い生命が失われ、強い怒りを禁じ得ない。元職員が行ったとはいまだに信じられない。国民の皆様に、福祉に対する信頼を揺るがせたことを深くおわびする。被害に遭った入所者のご家族には個々の事情に応じて誠意をもって対応したい。現在、入所者は敷地内の体育館などで過ごしているが、一部は法人内の他施設に移る方向で調整している。容疑者から衆院議長への手紙は実物を見ていない。容疑者の大麻の陽性反応も報道で知って驚いた(27日の記者会見)。

最終更新:8月1日(月)10時2分

福祉新聞