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東京の下水道、20年五輪見据え整備進む-5年間で9610億円投資、豪雨・震災対策急ぐ

日刊工業新聞電子版 8月1日(月)12時9分配信

ポンプ所など108施設耐震化、75mm降雨対応も

 1360万人都民の安全・安心と都市活動を支える重要な役割を担う東京都下水道局。4月から2020年東京五輪・パラリンピック大会開催に備えて集中的に取り組む事業と、将来を見据えた5カ年計画「経営計画2016」をスタート。5年間で総額9610億円を投じ、施設の老朽化や局地的豪雨、首都直下型地震への対応、海や河川の水質改善など諸問題の解決に挑む。都民の安全で快適な暮らしを実現・維持する取り組みを追った。(大塚久美)

■「最少の経費」
 5カ年計画で掲げた主な施策は「安全を守り安心で快適な生活を支える」「良好な水環境と環境負荷の少ない都市の実現に貢献する」「最少の経費で最良のサービスを安定的に提供」の三つがある。主に下水道管の再構築や道路陥没の未然防止、雨水排除能力や耐震性の向上に取り組んでいる。

 例えば、整備年代が古い都心4処理区では29年度までに枝線再構築を完了させるよう、今後5カ年で3500ヘクタールの枝線を再構築する。五輪競技会場周辺など計64地区を道路陥没対策重点地区に指定しており、取付管を陶製から硬質塩化ビニル管へと敷設替え中で、19年度までに終える計画だ。

 浸水対策では、1時間当たり50ミリメートルの降雨に対応する施設整備を進めている。市街地対策地区では最大で1時間75ミリメートルの降雨にも対応する下水道施設の整備も行っており、整備効果を早期に発揮させるため19年度までに一部完成したものから暫定稼働させる計画だ。

■「面」を強化】
 震災対策としては地震時も下水道機能を維持するため、水再生センターやポンプ所の耐震対策は、全108施設について19年度末までに完了させる予定。マンホールの浮上抑制、マンホールと管の接続部の耐震化なども含めた面的な耐震化を強化していく。

 合流式下水道の改善にも取り組む。現行は処理区平均で1リットル当たり生物化学的酸素要求量(BOD)値70ミリグラム以下から、24年度から強化される下水道法施行令の雨天時放流水質基準(同40ミリグラム以下)達成ができるよう、高速濾(ろ)過施設を6カ所の水再生センターに導入する。19年度までに貯留量換算で累計150万立方メートルの貯留施設の整備を完了する。

 また、汚水に含まれるリンと窒素を除去する高度処理は、改造コストが安価で済む準高度処理の導入や、新しく開発した高度処理「嫌気・同時硝化脱窒処理法」と組み合わせて導入するなど各水再生センターに適した処理法の整備を進めていく。

■民間と共同研究
 東京都下水道局は、民間企業が持つ最先端技術を実際に活用する共同研究を実施してきた。例えば「エネルギー自立型焼却炉および超低含水率型脱水機の開発」では、汚泥焼却時に発生する廃熱を利用して買電よりも安価な発電を行い、補助燃料が不要なエネルギー自立型焼却炉を開発した。国内初の同システムは16年度中に新河岸水再生センター(板橋区)で着工し、19年度に完成する。

 もう一つの技術開発が「高揚程・大口径ポンプ技術の開発」だ。今後、建設する下水道幹線は他の地下施設を避けて深い敷設が必要。接続するポンプ所も深くなるため対応した。約40メートル下から浸水豪雨による雨水をくみ上げるためのポンプ所で使うポンプの大型化で、ポンプ直径は約2メートルに及ぶ。降雨に先行して待機運転が可能な無注水型先行待機ポンプと組み合わせることで、浸水被害の軽減、予防の実現を可能にする。都下水道局は今後も共同研究を進め、日本の下水道技術をリードする構えだ。

東京都下水道局の渡辺志津男技監に話を聞いた。
―都下水道局の強みとは。
 「130年以上にわたり、東京の下水道に注いでこられた関係者の情熱、精神を受け継いだ人材が大勢いる。川上から川下までの下水道のシステム全体を総合的にとらえることができる。現場力、技術力、組織力を力として事業を進めていく」

―人材育成は。
 「現在、ベテラン職員の大量退職の一方、若手職員が急増していることから、砂町水再生センター(江東区)内にある『下水道技術実習センター』で、研修、疑似体験をさせるとともに、局内では技術継承検討委員会を設置するなど、技術継承と人材育成に力を入れている。ここは民間企業にも利用してもらっている」

―五輪に向けての取り組み状況は。
 「各競技会場周辺で重点的な道路陥没対策を実施し、安全・安心な大会を支えるのが第一だ。浸水対策や、合流式下水道の改善対策のスピードアップや環境整備を進める。カヌー・スラローム競技会場として葛西水再生センター用地が活用されるので会場整備・準備・運営に協力する。また、下水道事業の特色を生かしたPR方法として競技会場周辺では、東京2020大会仕様のデザインマンホールぶたの設置も検討しており、開催機運の醸成に貢献したい」

―施設管理の工夫や汚泥再活用については。
 「予防保全を重視した維持管理を実施している。新型焼却炉をはじめとした省エネルギー機器の導入、送泥管ネットワークを活用した汚泥焼却炉の広域的な運用に着手し、維持管理費を縮減する。水処理施設の運転についても水質改善と省エネの両立を目指した二軸管理手法を用いて、最適化していく」

―今後の展望は。
 「東京都監理団体の東京都下水道サービス(TGS)、国、他都市とも連携して技術開発を進めるほか、今後、より具体的な技術開発テーマを発信したい。培ってきた技術やノウハウを引き継ぎ、よりよい下水道サービスを提供するためには人材育成に加え、技術開発がカギになる。開発技術の導入を前提とした共同研究を実施し、民間企業の参加意欲向上を図り、効果的に技術を開発していく」

最終更新:8月1日(月)12時9分

日刊工業新聞電子版

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