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妊娠・出産に伴う「いぼ痔」 悩んだら専門医に相談を

山陽新聞デジタル 8月1日(月)11時17分配信

 女性の妊娠・出産に伴う「いぼ痔(じ)」について、チクバ外科・胃腸科・肛門科病院(倉敷市)の竹馬彰理事長に寄稿してもらった。



 第2回は「妊娠出産にまつわるおしりの話」です。

 妊娠・出産を経験した方の多くがその経過で程度の差こそあれおしりの痛みで悩んでいると思います。私たちの病院にも悩みを抱えてこられる患者さんは多いです。そのほとんどが「いぼ痔」の症状です。

 妊娠24週頃になると子宮もだいぶ大きくなってきます。それに伴い体の中ではさまざまな変化が顕著になってきます。第1に血液量が増えます。子宮が大きくなり胎盤も大きくなるので血液の量を増やすことが必要になってきます。第2に子宮が大きくなることで足の方から心臓へと戻る血液が通る静脈が圧迫されます。肛門周囲の静脈もうっ血しやすくなります。

 第3に妊娠中は女性ホルモンの影響で血液を固まらせる物質が増加します。これにより流産や分娩(ぶんべん)などの出血時に出血が止まりやすくなる半面、血管内で血液が固まる血栓ができやすくなります。

 これらの影響でちょっとした便秘などでいきんだのをきっかけにしていぼ痔が腫れやすくなるのです。

 その1つは「内痔核」。妊娠中にはどうしても大きくなりやすいのです。そのために妊娠前にはいぼ痔(内痔核)が肛門の中から出てくる「脱肛」と言われる症状がなかったのに途中から「脱肛」してくることがあります。また急に肛門が腫れて痛くなる「血栓性外痔核」も多いです。「血栓」(血液の塊)が急に肛門の周囲の静脈にできて腫れるので痛いしびっくりして来院されます。

 このように「いぼ痔」が腫れやすい状態は分娩がすむまで続きます。

 ほとんどの場合は便秘をしないように食事や排便の習慣に注意し、症状が出た場合にも軟膏(なんこう)や坐剤(ざざい)などのお薬を使うことで楽になってきます。軟膏や坐剤に関しては通常の使用の範囲では妊娠の経過に影響を与えることはほとんどありません。医師や薬剤師と相談しながら使ってください。

 しかしそれでも症状がなかなかとれず日常生活に困る場合には妊娠24週以降で妊娠の経過に問題がなければ局所麻酔や腰椎麻酔をして「いぼ痔」を手術することもできます。あまりに痛くて動けない場合など手術をしたほうが楽になることも多いです。まずは専門医に相談してください。

 分娩時に「いぼ痔」が極度に腫れる方も中にはいます。あまりに痛いために早く手術を望まれる方もいますが腫れが強い時に手術をすると傷が大きく治癒にも時間がかかるため一般的には少し腫れがおさまってから手術をするほうが良いでしょう。いろいろなケースが有りますから遠慮無く私たちに相談してください。

 私たちの外来に「これから妊娠出産を考えているんだけど予防的にいぼ痔を切ったほうが良いだろうか」と相談に来られる方が多くいます。そのようなときには「現在困った症状がないのであれば予防的な手術は必要ないのでは」とお答えしています。先にお話ししましたように妊娠の経過中に女性の体は変わっていきますので予防的に手術をしたからといって「いぼ痔」が絶対腫れないという保証はありません。日常生活の注意で予防できることも多いのです。

 最後に出産後ですが、育児に忙しく食事や排便習慣がくるいやすくなります。また授乳で水分不足になり便秘に傾きやすくなってきます。そのために分娩時になんとか乗り切れた「いぼ痔」がまた腫れて痛くなったと来院される方も多いです。お薬で症状が和らぐことがほとんどですが中には手術が必要な場合もあります。当院では赤ちゃんと一緒に入院できるようベビーベッドも用意してあります。お気軽にご相談ください。

 ともかく悩むようならネットで調べるのもいいですが専門医にご相談くだされば良い解決法が見つかると思います。当院では妊産婦の方向けのパンフレット=写真=も用意しております。当院のホームページ「おしりの病気」からダウンロードできます。ご参考になさってください。

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 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院(086―485―1755)

最終更新:8月1日(月)11時17分

山陽新聞デジタル