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知的障害者に進学は必要ない?「お父さんと同じ仕事がしたい」

THE PAGE 8月4日(木)15時16分配信

 知的障害者は進学する必要がない──これまで多くの人にそう思われてきた。知的障害者の大学などへの進学率はたったの0・4%(2014年3月卒)。大半の知的障害者は高校にあたる特別支援学校の卒業後、すぐに就職したり作業所などの福祉施設に入所したりする。進学する選択肢はほぼない。

大学に見立てた4年制の福祉施設「カレッジ福岡」を作った理由

 そういった状況を変えようと、福岡県の社会福祉法人が知的障害者向けの4年制の福祉施設「カレッジ福岡」を2012年に設立した。障害に応じた教養の授業などがあり、知的障害者の新たな進路として注目されている。今春初めての卒業生3人が巣立ち、それぞれが第一志望の職場で働いている。

 “知的障害者も教育を受けることで成長し、社会に十分貢献できる”。 3人から投げかけられるメッセージをひも解きたい。「障害者はいなくなればいい」障害者施設に押入り、入所者を殺傷した男はそう話していたと言われているが、3人のひたむきな姿はその主張がいかに間違っているかを教えてくれる。

「もっと勉強して、上を目指したかった」商社の物流拠点で働く佐藤正啓さん(22)

 カレッジ福岡の1期生、佐藤正啓さんは、文具などを扱う商社「レイメイ藤井」(本社福岡市)にこの春就職した。物流センターに所属し、倉庫から伝票の通りに商品を集めて出荷する「ピッキング」作業を担当している。平日午前9時から午後5時が基本の勤務時間だが、残業もあれば、土曜日の出勤もある。「すごく疲れるときもあるけど、これをやってと頼まれるとやりがいを感じる。信頼されていると思うから」と話す。給与は健常者の従業員と同じ水準だという。佐藤さんの上司の赤星広輝さん(55)は「真面目に取り組んでくれている。これから徐々にできる仕事を広げていきたい」と期待する。

 なぜこの仕事を選んだのか尋ねると、はにかんで「お父さんが同じ物流の仕事をしていて、憧れがあった」と教えてくれた。

 佐藤さんは特別支援学校卒業時には就職ができなかった。「その頃は面接でもうまく話せなくて」と佐藤さんは振り返る。進路に迷っていた時に、カレッジ福岡が発足。福祉施設などに行く道もあったが「もっと勉強して、もっと上を目指したい。資格も取りたい」との思いから入学を決めた。

 カレッジの一番の思い出は「研究論文」だ。カレッジでは毎年、1年かけて興味のあるテーマを論文にまとめて、さらに5分間のプレゼンテーションを行う授業を行っている。プレゼンを行う研究発表会には予選があり、優秀なら本選に進め、上位は表彰される。乗り物が好きな佐藤さんは飛行機や新幹線をテーマに論文を書いた。プレゼンのため、パワーポイントでスライド資料も自作した。「本選には行けなかった。難しいんですよ、どう表現をしたらいいか。資料を作るのも制限時間内にまとめるのが大変だった。でも楽しかった」

 そのほか、授業でマラソンに挑戦したり、ワープロ検定など資格取得の勉強にも打ち込んだりした。「みんなで色々と行事をしたり、台湾に卒業旅行に行ったりして楽しくフレンドリーに過ごせた」。

 カレッジで学んだことについて「対人関係を学べた。みんなにあいさつできるようになって、人とコミュニケーションが取れるようになった。学べて良かった」と話す。ピッキングの仕事も、カレッジの授業で出会い「自分に向いている」と見つけた道だ。

 「もっと集中力を高めて仕事に取り組みたい。みんなから仕事を任せられる自分になりたい」力を込めて話す目は光り輝いていた。

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最終更新:8月4日(木)15時16分

THE PAGE

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