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家畜のふん尿利用の「バイオガス発電」エネルギーの地産地消で注目集まる

ZUU online 8/2(火) 10:10配信

北海道や九州など酪農や畜産の盛んな地域で、やっかいものになってきた家畜のふんを利用したバイオガス発電に注目が集まっている。北海道別海町では国内最大規模のバイオガス発電所が稼働から1年を迎えた。鹿児島県長島町では2018年度の運用開始を目指し、地域エネルギー会社が設立された。

両町の事業が順調に進めば、酪農、畜産地域でエネルギーの地産地消に道が開かれることになる。これまで欧米に後れを取ってきたバイオガス発電は、日本に根づくのだろうか。

■北欧やドイツでは早くから導入

経済産業省などによると、バイオガス発電は家畜のふんや食品廃棄物、木質廃材などの有機ごみからバイオガスを生成し、それを燃やして発電する方法。同じ生物資源を燃料に使うバイオマス発電が有機ごみを直接燃やすのに対し、バイオガス発電はいったん発酵させて抽出したガスを燃やす点が異なる。

再生可能エネルギーの1つに数えられるが、太陽光発電や風力発電と異なり、天候に左右されずに電力を安定して確保することができる点が最大のメリットだ。ほかに発酵の際に残った副産物が液体肥料などとして使えるばかりか、ほとんど臭いを発生せず、温室効果ガスを大量に排出しないことも大きな利点となる。

環境先進国として知られる北欧やドイツでは、バイオガス発電の導入が早くから始まった。ベトナムやミャンマーなど東南アジアでも、クリーンエネルギーとして導入する国が増えている。

しかし、日本ではまだ本格的な導入が始まったばかりで、研究目的を除いて事業として成立している施設が少ない。国の再生可能エネルギー固定価格買取制度で認定を受けた施設も、自家発電を少し大きくした程度の小規模施設がほとんどだ。

このため、国産プラントよりドイツなど海外プラントの方に優れたものが多いとされ、運用ノウハウについてもまだ発展途上といわれている。

■別海町で国内最大規模の施設が稼働

国内最大規模のバイオガス発電所として2015年7月に稼働を始めたのが、別海町の「別海バイオガス発電」。重工業メーカーの三井造船 <7003> と別海町が出資して設立した。

別海バイオガス発電によると、施設は最大出力600キロワットの発電機3基、容量4000立方メートルのメタン発酵槽2基を持つ。1日に牛4500頭分に当たるふん尿280トン、食品残渣など5トンを発酵処理、一般家庭約2800世帯分に該当する年間1000万キロワット時を発電する。

ふん尿は半径10キロ以内にある酪農家90戸余りと契約して集めている。発電した電力は新電力に販売。ふん尿を発酵させた後に残る副産物は、固体と液体に分離し、固体を牛舎の再生敷料、液体を液肥として酪農家に販売している。

別海町は生乳生産量日本一を誇る酪農どころ。人口約1万5300人(5月末現在)のざっと7倍に当たる11万頭近い牛が飼育され、排出されるふん尿が年間約200万トンに達するという。

酪農家はふん尿のたい肥化など対策を進めたが、処理しきれないふん尿の悪臭や環境破壊が問題になっていた。このため、国内では農作物、デンマークでは牛のふん尿を利用したバイオガス発電の実績を持つ三井造船と手を組むことにした。

別海バイオガス発電の有田博喜所長は「施設では農家を悩ませてきたふん尿を余すことなく再利用できた」と胸を張る。別海町農政課も「こうした地産地消の再生可能エネルギーが増えれば、災害に強い自立分散型のエネルギー供給体制を構築することもできる」と夢を膨らませている。

■長島町は2018年度からの運用を目指す

養豚業が盛んな長島町では、鹿児島相互信用金庫や地元の養豚業者らが7月上旬、地域エネルギー会社の「長島大陸エネルギー」を設立した。鹿児島県や長島町とも連携し、事業を進める計画で、鹿児島県はバイオガス発電施設の整備に必要な調査、研究の助成費300万円を2016年度の当初予算に計上した。

早ければ2017年度に豚のふんを活用するバイオガス発電所を着工、2018年度から運用したい考え。発電規模は1800キロワット程度を想定している。

構想では、起こした電気を九州電力に販売し、熱を養豚場内で使用、液肥をジャガイモや稲作農家に売る。町はバイオガス発電所の維持管理で3人程度、液肥の散布時期に70人程度の地元雇用が創設されると目論んでいる。

長島町は人口約1万800人。基幹産業は農業と漁業で、バイオガス発電を2015年に策定した町の地方版総合戦略に盛り込んだ。新会社の設立は環境にやさしい食材というブランド価値を農畜産物に付加する狙いも込められている。

長島町総務課は「液肥の利用を農家の方に理解してもらうとともに、ジャガイモ栽培に適した液肥の開発も研究している。悪臭でやっかいものになってきた豚のふんを最大限に活用し、地域振興に結びつけたい」と力を込める。

家畜のふん尿は酪農、畜産地域の社会問題となり、畜産公害という言葉さえ生み出した。それを電気や熱、液肥などに再利用するわけだから、事業化が順調に進めば地域にとって大きな朗報だ。

しかし、液肥の利用に対する理解は北海道以外で低く、設備投資のコストが高いことなど多くの課題を抱えている。大型施設の建設を促すためには、こうした課題の解決にも急いで取り組む必要がありそうだ。

高田泰 政治ジャーナリスト 
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:8/2(火) 10:10

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