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ROEだけでは日本企業の実力を過小評価してしまう

ZUU online 8月2日(火)11時0分配信

日本企業の利益率は低いと言われることが多い。利益率を計算するときの分母が自己資本であればROE、そして総資産であればROAであり、両者ともに引き上げることが日本企業の課題とされる。

■ネット資金調達額は1999年をピークに減少中

日銀資金循環統計でみると、企業のバランスシートの左側(資産側)には金融資産があり、右側(負債側)には資金調達手段である金融負債と株式・出資金がある。企業は資金調達をして事業を行う主体であるため、資産側に対して負債側が大きい。そして、その差がネット資金調達額(Net Financial Obligation, NFO)となる。企業では、金融資産+ネット資金調達額=金融負債+株式・出資金、という形でバランスする。

株式で資金を調達しても、現金で保有しているだけであれば、右側と左側が同時に増加するだけであり、NFOは増加しない。NFOは、実際に企業で働いている資本(Working Capital)であると言える。

ここ20年間のトレンドで見ると、企業利益は増加している一方で、総資産と株式・出資金も増加してきた。よって、両者の利益率であるROEとROAはまだ低いと言われる。

一方、日本経済の大きな問題は、マイナスであるべき企業貯蓄率が恒常的なプラスの異常な状態が継続し、企業のデレバレッジや弱いリスクテイク力、そしてリストラが、総需要を破壊する力となり、内需低迷とデフレの長期化の原因になっていることだ。

企業貯蓄率が恒常的にプラスになっていることは、トレンドとしてNFOが減少してきたことを意味する。NFOは1999年10-12月期の114.7%(GDP対比)をピークとして、2016年1-3月期には66.4%まで減少している。

改ページ>>マクロから見る日本企業の評価とは?

■カギを握るのは企業貯蓄率 マイナスになれば日本経済拡大の可能性大

会計やマーケットのミクロ経済ではROEやROAが重視されるが、企業がどれだけ実際に働いている資本を効率的に使っているかを見るマクロ経済では、このNFOに対する利益率の方が重要であろう。企業のネット資金調達額に対する利益率(RoNFO)を見ると、2016年1-3月期には18.3%となり、1990年前後のバブル期(+20%程度)以来の高さになっている。

分子の経常利益は法人企業統計を使い分母のサンプルと一致しないため、他の利益率との単純な比較はできないが、RoNFO自体の時系列的な比較は有効である。株価が強く上昇すると、株式・出資金が時価評価で膨らむためNFOが増加し、RoNFOを下押しするが、その下押しに十分に耐え、+18%程度を維持している。

長年のリストラや事業再編・再構築、または新規企業の興隆などによる構造改革により、マクロ経済としての日本企業は、かなりの高利益体質になっているばかりではなく、資本効率的になっていることが確認できる。

ミクロ経済のROEやROAだけでは、日本企業の実力を過小評価することになってしまう。マクロ経済では、日本企業のRoNFOは高いため、企業貯蓄率がマイナスとなりNFOが増加する環境となれば、日本経済の拡大は著しくなる可能性を秘めていることになる。

三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)の政策により企業を刺激し、企業活動を回復させ、企業貯蓄率をマイナスに戻し、デフレ完全脱却を目指すアベノミクスの方向性は正しいと考える。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

最終更新:8月2日(火)11時0分

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