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攻めのソフトバンク、格付けが下がっても攻勢を弱めない理由

ZUU online 8月2日(火)18時10分配信

ソフトバンクグループ <9984> が今年も数々の話題で市場を賑わせている。実質的な孫正義社長の後継者の退任、英半導体設計企業の買収など、話題は尽きない。一方で、同社の格下げや相次ぐ社債発行など、楽観視できない要素も少なくない。攻めの姿勢を支える財務体質に問題はないのだろうか。

■退任、買収……2016年だけでも話題は多い

6月には孫正義社長の後継者と目されていた、ニケシュ・アローラ副社長を退任させ、孫社長自身が当面、社長の座に留まる意向を示した。アローラ元副社長は、孫社長が自らの後任として白羽の矢を立て、165億5600万円の報酬を手土産に口説き落としたことをきっかけに、Googleからソフトバンクへ移った。大型の人事として、大々的に発表されたことも記憶に新しい。

次期社長候補の突然の退任による動揺が収まらない中、次に飛び込んできたのは英半導体設計大手ARM・ホールディングスの買収の報せだ。ブレグジットを決めた国民投票以降、経済先行きの不透明感が漂う英国でも、BBCがトップニュースとして伝えるなど注目を集めた。グローバル展開を見据え、攻めの姿勢を貫くソフトバンクは、買収の資金需要などに備えて大規模な社債の発行も予定している。

■負債12兆円で格下げでも、グローバル志向は止まらない

ARM社の買収費用は約240億ポンド(約3兆3000億円)に上り、日本企業による海外企の業買収案件としては、過去最大規模になる見込みだ。今回の買収については、ARM社が強みを発揮する、あらゆるモノをインターネットにつなぐ「IoT」関連事業の拡大を視野に入れている。

ソフトバンクでは、9月末までにARM社の全株式を買い取り、完全子会社化する方針だ。買収資金は、2兆3000億円を手元資金で賄い、残りの1兆円をみずほ銀行からの借り入れで工面する。

ソフトバンクによる電撃的な買収劇は今回に始まったものではない。2013年には米携帯電話会社のスプリントを約216億ドル、当時のレートにして約1兆8000億円で買収した経緯がある。今回のARM社の買収と合わせて、わずか3年の間に、5兆円を超える資金を買収に投入することになる。

スプリントに続いてARMと、度重なる大型買収案件によって財務体質は悪化し、2016年3月末時点で、同社の有利子負債は連結ベースで約12兆円にも上る。

ARM社の買収発表を受け、日本の格付け機関であるJCRは、ソフトバンクグループの格付けを「クレジットモニター」に指定している。「クレジットモニター」とは、定期的な見直し以外に、大幅な業況変化や合併、訴訟など、いうなれば継続観察と適宜格付けの見直しを必要とする対象だ。

さらに、JCRはソフトバンクを継続観察の対象に加えるとともに、見通し方向を「安定的」から「ネガティブ」に格下げした。

■社債発行に追い風を吹かせるマイナス金利

ソフトバンクによるARM社の買収発表を受けたロンドン金融市場では、買収が好感され、ARM社の株価が急騰したのにつられ、マーケット全体を押し上げ、通貨ポンドも上昇した。

一方、ソフトバンクグループの株価は、大型買収による財務体質の悪化を懸念した売りが広がり、株価は一時10%以上の値下がりとなった。マーケットからは、買収に絡み厳しい洗練を受けたソフトバンクだが、2017年3月期には、4000億~5000億円規模で、個人向け社債のさらなる発行を計画している。

社債の発行で調達する資金で、過去の社債の償還のほか、低金利が続く環境で、資金需要に備えるとみられる。まるで自転車操業にも見えるが、2016年2月に導入されたマイナス金利政策によって、社債の利払いも抑えられる追い風となる見通しだという。

■ARM買収は「アリババ」になるか、「スプリント」になるか

買収した企業が必ずしも、グループの経営に貢献しているわけではない。鳴り物入りで買収したスプリント社の業績がさえず、2016年4-6月期決算では、前年同期比で赤字幅が約15倍の3億200万ドル(約320億円)に膨らんだ。携帯契約者の流出に歯止めがかかる一方で、赤字傾向がまだ続いている。

それでも孫社長がさらなる大型の投資をするのは、自分の嗅覚に自信があるからかもしれない。

実績もそれを物語っていると言えそうだ。かつて中国のEC最大手のアリババに対し、20億円を出資。その後、アリババは米ニューヨーク市場に上場を果たし、時価総額は2300億ドルに達した。結果、30%を超えるアリババの株式に出資していた同社は莫大な利益を上げることに成功した。

■投資は長い目で、案件を嗅ぎ分ける孫社長

「アリババ・マジック」ともいえる投資案件に続く、華やかな成功体験を、ソフトバンク、孫社長はまだ成し遂げていない。数多くの投資案件が持ち込まれる同社で、孫社長がアリババに続く、ビジネスの原石をいかに探し出せるか。スプリントの買収効果はこれまでのところ限定的で、さらにARM社買収によるソフトバンクとの相乗効果も未知数だ。

アリババのケースでは、孫社長が出資した2000年からニューヨーク市場に上場して利益をもたらすまで、実に14年の月日がかかっている。直近の大型買収案件も同様に、効果をみて取れるには、まだしばらくの時間を要するのかもしれない。

巨額買収による先行き見通しは必ずしも明るいものではないが、足元のマイナス金利政策下では、ソフトバンクにとって資金調達には絶好の環境ともいえる。2015年12月に発行した個人向け社債では、満期7年・年率2.13%で、3700億円を調達する予定だ。預金での利息が見込めないなか、今後の社債も個人投資家からは人気を集めるのは間違いなさそうだ。(ZUU online編集部)

最終更新:8月2日(火)18時10分

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