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複雑な3D形状にパターン形成する「MID」とは?

EE Times Japan 8月2日(火)10時43分配信

■MIDって何!?

 「MID」(Molded Interconnect Device)と呼ぶ技術があるらしい。日本MID協会が2014年に公開した資料では、「機械的機能と電気的機能を持った電気回路配線付きプラスチック射出成形品」と記載されている。しかし、読んでみてもなかなか分からない。

【MIDの製造プロセスはこちら】

 また、プラスチックのめっき技術や3次元(3D)の回路パターニングなどによって、複数の製造方法が開発、実用化されているという。国内は、パナソニックが「MIPTEC」、三共化成が「SKW」を展開している。ここまでくると、もう何が何だか分からない。

 そこで、今回「LDS」と呼ぶMIDの製造技術を用いるモレックスに、「MIDとは」「メリットは何なのか」「どんな製品に応用されるのか」について話を聞いてきた。

■複雑な3D形状のプラスチック材にパターンを生成

 国内でMID製品の技術サポートを行う日本モレックスの下山博司氏は、「MIDは、プリント基板加工装置などの販売を行うLPKFが特許を持つ技術。従来は困難だった複雑な3D形状のプラスチック材にパターンを生成できる」と語る。複雑な3D形状とは、へこんでいる部分や角、スルーホールなどの部分を指している。通常の基板に適用もできるが、2D基板からの置き換えでは効果は薄れてしまうという。

 LDS(Laser Direct Structuring)は、レーザーを用いたMIDの製造方法だ。特殊な成型材料を用いて、指定したエリアにレーザーを照射。レーザーを照射して活性化した表面に無電解メッキを行うことで、パターンを形成することができる*)。

*)LDSもLPKFの特許で提供される技術である。

 LDSを用いたMIDのメリットは、「小型化」「軽量化」「高精度化」とする。まず、プラスチック部品に直接パターンを生成するため、小型化が可能となっている。ネジどめなども不要のため、軽量化もできる。部品を多く使うと組み立て時に公差が出てしまうが、MIDは組み立てを簡素化できるため、高精度化にもつながる。

 下山氏によると、MIDの多くある製造方法の中でLSDのメリットは、対応したプラスチック樹脂が多くそろっていることにある。特に、耐熱性に強い樹脂もあり、小さな部品をはんだ付け実装することも可能になっていることが挙げられる。

■2007年から製作を開始

 モレックスは2007年に携帯端末用アンテナとしてMID製作を開始している。アンテナの性能は、周りのICや筐体の鉄、アルミなどによって左右される。しかし、一般的にアンテナの位置付けは低く、製品の空いたスペースに配置されることが多いという。

 下山氏は「携帯端末に限らず他の製品でもそうだが、何回かトライアルをして製品の改善を行っていく。製品の改善を行っていくと、部品の実装位置が変わったり、使われる部品自体が変わったりするのが避けられない。そのため、アンテナ性能を左右してしまうケースがあり、その都度アンテナを作り直す必要があった。MIDによって、レーザーのプログラムを変更するだけで、パターンを自由に生成し直すことができる」と語る。

■金属の上に直接パターンも?

 2007年にMID製作を開始後、モレックスの携帯端末向けアンテナは、NokiaやMotorolaなどに採用されてきた。2000年代後半には、耐熱性の高い樹脂や誘電率の低い樹脂が登場し、ケーブルやマイク、スピーカーを組み合わせた製品を開発した。2010年以降は、LEDライトや医療機器、車載機器に向けたMID製品の開発を進めているとする。

 直近では、「パウダーコーディング」と呼ぶ、金属の上に直接パターンを形成したいというニーズに対応する方法をLPKSが開発。金属の上にレーザーを当てても活性化しないため、表面に膜を形成するパウダーコーディングを行う。これにより、絶縁するとともに、レーザーに反応するようになるため、金属の上でもパターンの形成が可能になるという。

 日本モレックスは、「第7回 医療機器 開発・製造展」(2016年6月22~24日/東京ビッグサイト)で、自動車のテールランプにパウダーコーディングを応用したサンプルを展示している。テールランプ内部にある階段状の金属にパウダーコーディングを適用したのだ。下山氏は、「金属の上にもパターンを形成できるようになったので、放熱対策として自動車分野にも取り入れることはできないかを調査していきたい」と語る。

■実装、組み立てなどの対応も可能

 モレックスのMID製造の特長として、下山氏は「設計からメッキ、組み立て実装まで一貫して行えること」を挙げる。MIDの製造を行う上海工場では、LDS用の装置は「業界トップクラス」(下山氏)の台数を保有。SMT実装、プラスチック溶着、金属を含むインサート成形などの対応ができ、設計から実装まで一貫した生産体制としている。

 下山氏は、今後について「さらなる狭ピッチのパターニングに対応したい」と語った。

最終更新:8月2日(火)10時43分

EE Times Japan