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IoTの裾野を広げる無線センサー開発キット

EE Times Japan 8月2日(火)10時45分配信

■シリコンラボ、IoT事業強化の一環として

 Silicon Laboratories(シリコン・ラボラトリーズ/以下、シリコンラボ)は、無線センサー端末などIoT(モノのインターネット)端末のプロトタイプを短期間、低コストで実現できる開発キット「Thunderboard React」(サンダーボード・リアクト)を発売した。無線/マイコンモジュールに、各種センサー、アンテナ、電源を備えたボード、ソフトウェアや連動スマートフォンアプリ、クラウド環境も無償提供され、購入直後から無線センサー端末として動作する。「IoTシステム開発の初期段階でのエッジ端末の開発、調達という問題を解決する開発キット」(同社)という。

 シリコンラボは近年、事業成長領域として“IoT”を掲げ、IoTの末端を構成するエッジ端末やデータセンターに向けた製品事業の強化を進めている。特にエッジ端末向けでは、2012年にZigBee用RF IC大手のEmberを、2013年に低消費電力マイコン「Gecko」で知られるEnergy Microを買収するなど、積極的なM&Aを展開。2015年にもBluetoothに強いBluegiga Technologiesを買収し、IoTエッジ端末のキーデバイスであるマイコン、RFデバイスの扱いを広げてきた。

 その結果、マイコン、RF、センサー製品で構成するIoT事業が売上高の約4割を占め、シリコンラボの主力事業にまで成長した。「IoTで一層必要性が増す」というサーバなど通信インフラ機器向け事業(タイミングICや絶縁デバイスなどを展開)を含めれば、「IoT関連売上高は、全社売上高の6割を占める」(日本法人社長 深田学氏)とし『IoTのシリコンラボ』といえるような事業ポートフォリオを構築。「今後も、IoT向けの注力を加速させる方針」(同氏)だ。

■44×25mmサイズの基板にMCU、RF、4種のセンサー、LED、スイッチを集積

 そうした中で、今回、発売に至った開発キット・Thunderboard Reactは、現在のシリコンラボが持つIoTエッジ端末向け製品、技術を集積した象徴的な製品の1つといえるだろう。開発キットのメインであるボードは、44×25mmサイズとボードと呼ぶよりも“モジュール”と呼ぶ方がふさわしいような小型ボードだが、「IoTエッジ端末」に必要な構成要素を全て詰め込んでいるのだ。

 キーデバイスであるマイコン/RF部は、このほどサンプル出荷を開始したばかりのBluetoothスマートモジュール「BGM111」で構成する。このBGM111のサイズは、12.9×15×2.2mmとBluetooth 4.2対応モジュールとしてはかなり小型だ。そして、この小型化を可能にしたのが、BGM111の核を成すマイコン「Blue Gecko」だ。

 Blue Geckoは、ARM Cortex-M4ベースの最大動作周波数38.4MHzのフラッシュメモリ内蔵マイコンながら、ペリフェラルとしてBluetooth 4.2対応RF回路を持つ。通常、マイコンの外付けで必要なBluetooth用RF ICが必要なく、マイコンにアンテナを付けるだけで、Bluetooth対応が済んでしまうというもの。シリコンラボでは、Blue Geckoを「BluetoothスマートSoC(System on Chip)」と呼んでいる。BGM111は、このBlue Geckoに、チップアンテナ、外付け部品を実装したモジュールであり、今回発売したThunderboard Reactのボードは、BGM111に、IoTエッジ端末で必要になるデバイスを付け加えた製品だ。

 IoTエッジ端末で必要になるデバイスとしては、シリコンラボが展開する温湿度センサーやオプティカルセンサー(照度/近接/紫外線センサーなどとして動作可能)の他、ホールセンサー、6軸加速度/ジャイロセンサーといったセンサーを搭載。他にもLEDやスイッチを備え、コイン電池(CR2032)1個で動作する。

■ソフト、アプリ、クラウドも無償提供

 Thunderboard Reactには、ボードとともに、ボード動作に必要なソフトウェア一式も同梱される。Thunderboard ReactボードとBluetoothでつながる先のスマートフォン用アプリも無償で提供(iOS用/Android用)。開発の手間など一切なく、Thunderboard Reactボードを動作させ、スマホから動作状況や制御が行える。さらに、センサーから取得したデータを最大30日分記録し、グラフ表示などの解析が行えるクラウド環境も無償で利用可能だ。

 ここまで“すぐに使える”にこだわったThunderboard Reactを製品化した理由について日本法人IoTスペシャリストを務める水谷章成氏は、「まずはIoTを体験してもらい、IoTの裾野を広げたいという思いがあったから」と説明する。

 「無線、センサーを使ったIoTを実現したいという潜在需要は大きい一方で、無線やセンサーを使いこなすための“入り口”は少ない。無線の知識がなくても、Thunderboard Reactがあれば、取りあえずIoTを体験したり、IoTシステムのプロトタイプを構築したりできる。IoTの“入り口”として、幅広い層へ販売していきたい」(水谷氏)

■“パインウッドダービーカー”同梱版も

 Thunderboard Reactの価格は、29米ドル(現状の国内販売価格は約3800円[税別])に抑えた。さらに、海外で愛好家の多い“パインウッドダービーカー”を同梱したキットも販売(価格は59米ドル)している。

 傾斜を利用して走らせるパインウッドダービーカーの中に、Thunderboard Reactボードを装着し、ホールセンサーでタイヤの回転数や、モーションセンサーで車体のバランスなどのデータを取得でき、“より走るパインウッドダービーカー”の製作を手助けする。

 「Thunderboard Reactは、ホビーユーザーもターゲットであり、パインウッドダービーカー付きセットはその一例」(水谷氏)と、これまでシリコンラボがあまりターゲットとしなかった層へのアプローチも行う。

 「もちろん、本格的にThunderboard ReactをベースにIoT端末開発が行えるよう回路図やソフトウェア開発環境も用意している。Thunderboard Reactをきっかけに、BGM111やBlue Geckoの販売数が増えることが目的ではあるが、1人でも多くの人が、IoTやGeckoに親しみを感じてもらえれば。今後もThunderboard ReactのようなIoTの入り口となる製品を開発、販売し、IoTの裾野を広げていく」(深田氏)としている。

最終更新:8月2日(火)10時45分

EE Times Japan