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「攻めのIT」へ舵を切るIDOM、ローソン、白山工業の取り組み

@IT 8月2日(火)21時21分配信

 SAPジャパンは2016年7月29日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪でSAP Forum Tokyoを開催した。本稿では「Opening & Customer speech デジタル変革 is LIVE -2020年に向け、今、描くべき日本企業の成長戦略とは」の模様を紹介する。

●「デジタル変革」を作り出す側に回れるのか?

 講演の始めに登壇したSAPジャパン代表取締役社長の福田譲氏は「本フォーラムには弊社の日本でのイベントで過去最大となる約4000人の方に参加をいただいている。2015年に続き『デジタル変革』に焦点を当て、『2020年に向け、今、描くべき日本企業の成長戦略とは何か』について、実際にデジタル変革に取り組まれているお客さまにご登壇いただく」と紹介。

 「デジタル変革の中心に位置付けられるIoT」について、「CEO自らがデジタル変革を強力に進め、成功を治めている企業」としてアパレルメーカーの米UNDER ARMOURの活動をビデオで紹介した。

 「製品を誰がいつ、いくらで購入したかはPOSデータで分かるが、その後、その顧客とつながり続けることはできない。UNDER ARMOURは、クラウドを介して1億6000万人ものユーザーとつながり、誰がどのようなエクササイズをしているか、どのようなダイニングをしているのか、その睡眠は深いのか浅いのかなど、きめ細かな情報を積み重ねて、25ものECサイトを運営。現在の売り上げの28%はモバイルアプリ経由のものだ」

 続いて福田氏は「UNDER ARMOURのように、経営者がデジタル変革の可能性、破壊力、危険性にいつ気が付いて、いつ実際に行動を起こすのか。デジタル変革の波に飲み込まれるのではなく、デジタル変革を作り出す側に回れるのか。『攻めのIT』が企業競争力を決定付けるようになっている」との見解を披歴し、日本ならではの取り組みとしてパナソニックの事例をビデオで紹介した。

●新規事業で重要なのはデータ

 続いて、「いつもお話を伺うたびに、ワクワクする」(福田氏)顧客としてガリバーインターナショナル改めIDOM(イドム)の執行役員 新規事業開発室長 北島昇氏の登壇を促した。

 北島氏は「2016年7月15日に社名を変えた。変わるもの、変えないものをはっきり区別し、日本語の『挑む』を新社名に込めた。これまでの自分たちのコアを別の領域で生かしていく。人材だけではなく社内に保有するデータをどのように新しい形に変革して行くべきかを念頭に置いて活動している」と述べた。

 新規事業では、「トップから『既存事業の否定を厭うな』。『シナジーを気にせず、営業をつぶしてオーケーだ』と言われている。進めているのはプラットフォームビジネスの立ち上げだ」(北島氏)とし、北島氏は具体例として2016年8月中旬からのスタートを予定している、「月額定額4万9800円で車を1台手元に置いておける」サービスの開始について解説した。「世界初。レンタカーでも、カーシェアリングでもなく、ローンやリースなど、負債を背負って車を利用するのではなく、車を自由に利用できる」と説明する。

 「新規事業で重要なのはデータ。SAPをはじめ、さまざまな方々と手を組んでいきたい。ぜひ、お力添いをお願いしたい」(北島氏)

 これを受けて福田氏は「デジタル変革は従来の業種の垣根や定義を大きく変えるといわれている。2016年5月に、SAPは米国大手物流企業のUPSと業務提携した。同社が目指すのはモノを運ばない物流業。全米8拠点に3Dプリンタを配置し、モノとして『印刷』する。運ぶのは『ラスト1マイル』。まさに業種そのものが変わろうとしている」と語り、同様の視点から、『製造小売業』への転換を宣言したローソン 執行役員 兼 ローソンデジタルイノベーション 社長 白石卓也氏を紹介した。

●周りからおぜん立てされた仕組みではイノベーションは生まれない

 白石氏は「ローソンは41歳を迎え、肉体改造に取り組んでいる。ローソンというと1万2000の店舗に目が行きがちだが、その裏には物流センター、お弁当工場、原材料発注センターがある。これらのサプライチェーン全体の生産性の向上をどう進めるか。ポイントとしては2つ。見える化とテクノロジーによるイノベーションだ」と述べる。

 見える化では、「店に入って何も買わないで返ってしまった顧客はどれほどいるのか」「店舗の前をどれだけの人が歩いているのか」などは分からない。だが、「現在のテクノロジーを応用すれば見えない顧客が見えてくる。それによってさまざまなイノベーションを起こせると考えている。そのためには型作り、業務プロセスの定型化、標準化が重要だ。2015年、ITの内製化という大きな試みを手掛けた」(白石氏)と解説した。

 「ローソンの情報システムは日本の多くの企業と同様に、ユーザーの要望をベンダーに伝え、ベンダーからの提案を受けて進めていた。しかし、テクノロジーの進歩を見ると、周りからおぜん立てされた仕組みではイノベーションは生まれないと考えている。自らがチャレンジして知見を集め、進めていくやり方に変え、同時にパートナーシップを推進し、基幹システムの再構築に取り組んでいる」

 そして、「われわれの最大の強みは店舗。デジタルと店舗での顧客とのコミュニケーションというアナログをどのように融合していくか、最大のチャレンジだ。皆さまがパートナーとして参画していただけることを望んでいる」(白石氏)と結んだ。

 以上の2氏の講演を受けて、福田氏は「デジタル変革推進のマグニチュードを理解している経営トップと、実際にそれを進める強い決意を持ったリーダーが存在することを感じた。経営トップにデジタル変革の重要性をしっかりと伝えることも重要だ」とした。

●SAP HANA Cloud Platform上に大規模な地震観測ネットワークを構築

 続いて、福田氏はSAPと協業している世界的な地震計のトップメーカーである白山工業 社長の吉田稔氏を壇上に招いた。

 吉田氏は地震計について次のように解説する。「新築の場合、地震への対応は住宅メーカーが説明してくれるので、それを信じて大丈夫だが、10年、20年たつとハウスメーカーは何も言ってくれない。自分で対応しなければならないが、素人のわれわれは戸惑ってしまう。しかし、方法はある。わが家には15個の地震計を設置してある。東日本大地震を含め全ての地震のデータが残っている。それを見ると、素人でも地震が起きたときに『これは大丈夫だ』と分かる」。

 同社は世界最先端の地震観測ネットワークを手掛けていることでも知られている。「だが、世界最先端と言っても20キロに1つの地震計が設置されているにすぎない。家1件ごとをカバーすることはとてもできない。そこで私は、スマートフォンを活用した地震計を開発し、友人の家に設置した。そこに東日本大震災が起き、さまざまなデータを収集し、今後の地震対策に多いに役立つことが期待されたが、問題は設置場所。全国の各家庭に設置させてもらうには、時間もコストも掛かる。データを見るのも研究のためで、防災に役立たない」(吉田氏)。

 そんなとき同社は、SAPと知り合った。「SAP HANA Cloud Platform上に大規模システムを構築した。地震が発生すると、全ての端末からデータがSAP HANA Cloud Platformに集まる。プライバシー、セキュリティを保ってブラウザ上でいつでもデータを参照できる。『マイ震度』という名前で近くSAPからアプリが無料で公開される予定だ。オープンイノベーションなので、皆さまもぜひ、プロジェクトに参加していただきたい」(吉田氏)と呼び掛けた。

●23年ぶりに刷新されSAP HANA Cloud Platform

 これを受けて福田氏は「SAPは2015年2月、23年ぶりにコアのERPとアプリケーションをSAP HANA Cloud Platformとして刷新した」とビデオを使って解説した。

 「指が熱いものに触ったとき、“熱い”と手を引っ込めるようにビジネスでは即応することが重要だ。また、熱いものに触ると、次から熱いモノに触らないように、人は予測し、学習する。コンピュータも同様で、これはいわばAI。これらは残念ながら従来のリレーショナルデータベースとディスクによる40年前から行われてきたシステムでは無理。

 基幹系システムは目の前の仕事をこなすので精いっぱい。大量のデータを蓄えはするが、それを分析し、パターンを発見し、予測するシステムは基幹システムからETLでデータを抜いて、隣のデータベースに渡し、パフォーマンスを確保し、BIツールがあって、予測をするためには、そこからさらに隣に移し、専門のツールを用意し、半日かけてバッチ、バッチでようやく“熱い”。『これは触ってはいけないのだ』と分かる。これでは、遅い」(福田氏)。

 福田氏は「SAP HANA Cloud Platformはリアルタイム性と情報処理能力を高めた上で、シングルプラットフォーム上でネイティブにさまざまな機能を搭載した」と解説。SAP Forum Tokyoが新たな経済現象「デジタルエコノミー」の広範な羅針盤となることを示唆し、オープニングスピーチを終えた。

[丸山隆平,@IT]

最終更新:8月2日(火)21時21分

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