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普遍性と汎用性を併せ持つ“サメ映画”の魅力

オリコン 8月5日(金)8時40分配信

 夏に観たい映画と言えば、ホラーやパニックムービー。さらに、海やビーチが舞台になり水着の若者たちが素肌をさらす“海もの”だろう。ジャンルはさまざまだが、そんななかで今年ちょっとしたブームが来ているのがサメ映画だ。かつての名作『ジョーズ』(1975年)から40年以上が経過し、さまざまな進化を遂げた“サメ”がスクリーンで大暴れ。A級作品はもちろんのことB級、C級アクションの映画ファンの間でも熱い人気を誇るなど、その楽しみ方はさまざまだ。

【写真】リアルさでも人気?サメとタコが一体化した最恐キャラ・シャークトパス

◆サメを最強のモンスターキャラとして認知させた『ジョーズ』

 サメ映画の元祖といえば、やはりスティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』だろう。巨大なサメが海やビーチで楽しんでいる人たちを襲い、容赦なく餌食にしていくショッキングな映像は当時多くの人を恐怖に陥れ、大きな話題になった。広い海で人食いザメに追いかけられたら逃げ場がなく、圧倒的な絶望が待っているなかでのサバイバル。現実には存在しない生物や怪物ではなく、世界中の海に生息しているサメを最強のモンスターキャラとして描くことで現実味が増し、説得力のある恐怖映画として成立させた。ホラー要素も十分味わえるため、海で起こるパニック映画『ジョーズ』は夏の定番となり、現在もユニバーサルスタジオジャパンの人気アトラクションのひとつになっている。

 その後、CG技術の進化によってサメの描かれ方が変わっていくなか、『ディープ・ブルー』(1999年)は、DNA操作されたサメが高度な知能を手に入れて暴れ回るという新たな設定で観客を驚かせた。知能を持つサメが人間を追いつめる様は、パニックアクションムービーとして同ジャンルのファンにも楽しまれ、サメ映画ファンの裾野を広げた。また、キャストにサミュエル・L・ジャクソンを起用しており、サミュエルが容赦なくサメの餌食になるシーンには度肝を抜かれた人も多いだろう。

 シリアス系では、スキューバダイビングを楽しむカップルが海のど真ん中に置き去りにされ、サメに襲われる恐怖を描く『オープン・ウォーター』(2005年)が話題になった。映画らしい“ド派手ななにか”があるわけではなく、ただ海のなかで起こったことを淡々と映し出していく。そのストーリー展開とラストの描写とともに、誰にでも起こりうるリアルを静かに描く新たな恐怖ジャンル映画としてもサメが注目された。

 こうしたシチュエーションを変えたり、進化させたサメが暴れる映画が続々と登場するのにあわせて人気も広がり、ゾンビ映画のようなコアファン層が形成され、“サメ映画”というジャンルが確立されていった。

◆B級、C級に必須のお色気的な要素が盛り込みやすいサメ映画

 そうしたなかでいま盛り上がっているのは、シリアス系のサバイバル的なサメ映画を上回る熱いファンが多い、サメがさまざまな姿に進化して人に襲いかかるパニックアクション的なB級、C級“トンデモサメ映画”だ。

 キングギドラのような3つの頭を持つサメが登場する『トリプルヘッド・ジョーズ』、バカンスにやって来た若者たちを何十種類もの人食いザメが襲う『シャーク・ナイト』、恐竜のような体を持つ古代からよみがえった巨大人食いザメが襲いかかる『ディノシャーク』。そして、巨大化した竜巻によって空中に巻き上げられた大量のサメが雨のように降り注いで襲いかかる『シャークネード』。サメと竜巻という自然災害を組み合わせ、空からサメに襲われるというこれまでの常識を覆す最上級の恐怖を描いた同作は人気シリーズとなり、『シャークネード エクストリーム・ミッション』では竜巻に乗ったサメが戦闘機と空中戦を繰り広げ、果てには宇宙に飛び出して宇宙飛行士を襲う。その壮大な物語では、宇宙空間でのサメとの攻防のシュールな絵面が飛び出し、壊滅寸前となったアメリカで大統領が自らマシンガンを持ってサメに立ち向かうなど、まさに“トンデモ”なところがウケているのだ。

 ほかにも“B級映画の帝王”と呼ばれるロジャー・コーマン製作のサメとタコが合体した『シャークトパス』がシリーズ化されたり、巨大ザメがさまざまな敵と対決する『メガ・シャークVS~』も人気のシリーズとなっている(そのなかでも『メガ・シャークVSメカ・シャーク』は怪作の呼び声が高い)。

 これらの本格的なパニックホラーとは一線を画するB級、C級サメ映画が成立するのは、そもそもサメの恐怖が観客の間で確立されていることが根底にある。前述の『ジョーズ』『オープン・ウォーター』しかり、数々のシリアス系のサメ映画で描かれ、しっかりと浸透している普遍性を帯びたサメの恐怖。それをベースにした“恐怖とスリル”が多様性を持って描かれるようになり、さらに一部では、その恐怖を笑いに昇華させる作品へと進化を遂げた。サメというキャラクターと、サメに襲われるという物語の汎用性の高さが、さまざまな進化系を生み出し、ひとつのジャンルとして発展しているのだ。

 また、もうひとつのB級、C級作品に必須(?)の人気要素として“お色気”があるが、夏のビーチが舞台になる多くのサメ映画には、ビキニの水着美女が襲われるというシチュエーションが必然的に入る。そもそもの設定に無理なく若者たちの水着姿などの“裸”を入れやすく、サービスショット的なセクシー要素も盛り込めるのだ。ストーリーやアクションのバカバカしさやチープさが売りでもあるB級、C級作品にとって、もうひとつの欠かせない要素であるお色気が備わっていることでも、サメ映画はファンを拡大しやすいポテンシャルがあった。

◆地上波放送も後押し、出オチ感満載“トンデモサメ映画”がファン拡大中

 とは言っても、サメ映画ファンにとっての最大の魅力は、“次はどんなサメが登場するのか”“次はどんな対決ものになるのか”といった点が予想を超えておもしろおかしく描かれているところにあるのだろう。例えば『シャークトパスVS狼鯨』はオオカミとクジラが一体化したモンスター(ホエールウルフ)が、サメとタコが一体化したシャークトパスと戦うというわけのわからない展開。出オチ的なニオイしかしないのだが、作り手は真剣。設定の滑稽さと真剣なアクションとのギャップ、ありえないサメの雄姿に魅了され、いつのまにかクセになってしまうのだ。

 こうしたB級、C級サメ映画は、日本ではほとんどが劇場公開されることなく、ブルーレイやDVDでレンタル・発売されるか、CSやBSの映画専門チャンネルで放送されるなどし、コアファンに愛されながら、じわじわとファン層を拡大してきた。その一方、テレビ東京では映画ファンに人気の『午後のロードショー』(月~金 後1:50~3:55)で、7月中の毎週木曜日に4週連続でサメ映画を放映する“サメ映画祭り”を実施していた。企画者の熱い想いがにじむこの特集放映は、2014年からスタートし今年で3年目。サメ映画のおもしろさが地上波放送を通して話題になり、回数を重ねるごとに徐々に一般層にもファンが拡大しつつある。

 また、新作映画では、今夏もシリアスなサバイバルアクション系のサメ映画『ロスト・バケーション』が7月23日から公開され、好調な出足を見せている。“夏にピッタリのサメ映画”が、そのおもしろさとともに広く浸透しつつあるようだ。
(文:奥村百恵、編集部)

最終更新:8月5日(金)8時40分

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