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韓国新空港「拡張」で決着、激しい誘致合戦の舞台裏 福岡との微妙な距離感

qBiz 西日本新聞経済電子版 8月2日(火)10時56分配信

 【釜山・鶴加寿子】韓国南東部で検討されてきた新空港建設は、既存の金海(キメ)国際空港(釜山市)を拡張することで決着した。滑走路は1本増やして計3本になり、利用客数は仁川国際空港(仁川市)に次ぐ韓国第2の規模となる。都市間の激しい誘致合戦が繰り広げられた「新空港建設」が、「現空港の拡張」という意外な結論になったのはなぜか。

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 釜山市中心部から車で約40分。金海国際空港は同市江西区の中州にある。2015年の利用者は約1240万人。格安航空会社(LCC)の路線充実で混雑が激しくなった。政府の予測では23年ごろに利用者数1678万人となって「飽和状態に達する」見通しだ。

 新空港の候補地は、釜山市沖の加徳島と、内陸部の慶尚南道密陽(ミリャン)市だった。海上を一部埋め立てて建設する「加徳島案」に対し、「密陽案」は山地に造成する。近隣自治体も巻き込んだ誘致合戦の末、政府が6月下旬に出した結論は、そのどちらでもない既存空港の拡張だった。

 中央メディアは「新空港よりも工費が安い」と評価したが、南東部の不満は爆発。密陽市に近い大邱市の地元紙は政府発表の翌日、朝刊1面を白紙で発行し、猛烈に批判した。

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 政府の決定根拠は、フランスの調査会社の報告だ。加徳島案は海上埋め立ての工費がかさみ、密陽案は交通アクセスが悪いとして、既存拡張を有利とした。

 ただ、背景には、激しくなりすぎた誘致合戦がある。「大邱出身の中央官僚が密陽案を優位にしようと画策している」との臆測も飛び交い、釜山市長が「加徳島案が選ばれなければ職を退く」と繰り返すなど、混乱が生じ始めていた。

 「どちらか一方を選べば地域分断の恐れがあった。それを回避したかったのではないか」と東西大(釜山市)の張済国(チャンジェグク)総長は指摘する。メディアも「分断回避の妙手」(韓国日報)「絶妙な政治的選択」(釜山日報)と分析する。

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 「ここまで状況を悪化させたのは政治家だ」(朝鮮日報)との批判は多い。

 新空港構想は、盧武鉉(ノムヒョン)大統領が06年、釜山財界などの要請を受けて検討を指示。続く李明博(イミョンバク)氏が07年大統領選で建設を公約に掲げたものの、採算がとれないと白紙化した。朴槿恵(パククネ)氏が12年大統領選で計画推進を公約に掲げ、論議が再燃した。

 福岡空港(福岡市)も過密化を背景に「新空港」か「既存拡張」かが論議され、工期や事業費などを勘案して現空港の拡張に決まった。韓国の場合は、政治家が選挙のたびに口約束で地域の期待をあおった結果、新たな建設地を選べなくなった-という構図に映る。

 「公約違反」の批判をかわそうと、政府は大規模に拡張し「事実上の新空港」とすると宣言した。ターミナル整備も進め、年間利用者3800万人を見込む。早ければ21年着工というが、仁川空港とのすみ分けなど将来像はまだ見えない。

 来年末には大統領選を控える。張総長は「宣言通り計画を進めるのか、政治家の姿勢が問われる」と指摘している。

西日本新聞社

最終更新:8月2日(火)10時56分

qBiz 西日本新聞経済電子版