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所属事務所に24時間監視される韓国のアイドルたち

ハンギョレ新聞 8月2日(火)6時18分配信

アイドル芸能人、幼時から寄宿舎生活 管理という名の監視 携帯電話は押収、玄関には防犯カメラ設置 統制下で日常的な友人関係もできず 「マネージャーが全部してくれたので 自分でできることは何一つなかった」

 「同じ年頃の友だちのようにスマホでゲームしたりする?」
 「携帯電話もないのに…」
 「どうして?欲しい盛りなのに」
 「中学の時、パパがこっそりと買ってくれたけど、マネジャーに見つかって…。マネジャーが投げて壊してしまいました。その時、携帯電話は私が持ってはいけないものだと思いました」

 インタビューに応じた女性の話だ。当時、彼女は高校生だった。何にでも興味がある時期なのに、携帯電話を持っていないというばかりか、持ってはいけないことに順応していたことに驚かされた。「初めはどうしてあれもこれもダメだと言われるのか、怒りっぽくなりましたが、何度も繰り返さるうち、これが私の運命なのだと思うようになりました。私は早く大人になりたいと思っています。そうなれば私も好きなことができるから」。幼い時に演技を始めた彼女は、中学までまともに演技をさせてもらえず、礼儀知らずな行動をすればマネジャーに叩かれることもあった。当時、彼女のマネジャーは「演技が上手で真っ直ぐな性格を育てるためだ」と言っていた。

 芸能マネジメント企画会社が、所属する芸能人を管理するという名目で犯す人権侵害が深刻だ。過度なダイエット、携帯電話押収、私生活監視などは基本で、時によっては体罰も加えられる。昨日や今日のことではない。2011年公正取引委員会が「大衆文化芸術家標準専属契約書」に青少年芸能人に対する学習権や人格権など基本権を保護する条項を新設するなど、一時は人権侵害解消のための動きもあった。韓流熱風で“スター”を目指す若者が増えた最近では、企画会社のこうした行為が「韓流スター養成の秘訣」のように認識され、深刻な弊害が憂慮される。

 最も問題なのは私生活の監視だ。韓国の芸能人は、練習生時代からデビュー後まで企画会社の細かい統制を受ける。未成年者が多いアイドルを一つの宿舎に閉じ込める強制団体生活がその始まりだ。ある企画会社の関係者は「現在活動しているデビュー5年未満のアイドルは、ほとんど団体生活をしていると見ていい」と話した。以前はデビューと同時に寄宿生活をしたが、近頃は練習生時代から寄宿舎生活をするのが普通になった。歌手のヒョナはある芸能番組で「小学生の時から寄宿生活をした」と話した。家が遠かったり自分の意志で寄宿生活をする人もいるが、大抵は企画会社の厳格な規則に従ってのことだ。歌手のトヒはある放送番組で「初めは団体生活の意味が分からなかった」と話したが、デビューするためには彼女も会社の規則に従わなければならなかった。

 寄宿生活は徹底的に企画会社の管理者マインドに従って規制される。マネジャーが一緒に暮らして、一挙手一投足まで統制する。寄宿舎の玄関には防犯カメラも設置される。ちょっと宿舎の外に出る時もマネジャーと一緒でなければ許されず、一人で外に出ることはできない。後から考えれば寄宿生活は全般的に悪くはなかったというアイドル出身のある俳優も「スケジュールのない時は部屋から出られず、スケジュールが終わって帰ってきても、ずっと宿舎にいなければならず厭だった」と話し、「時々、マネジャーに隠れて外に出て行き、帰って来てからひどい目にあったことも多い」と打ち明けた。韓国より早くアイドル文化が始まった日本では見られない光景だ。ある日本のアイドルグループのメンバーは「韓国のアイドルたちが一つの宿舎で生活しているのに驚いた」と話した。

 寄宿生活に始まる企画会社の統制は、携帯電話の使用禁止、恋愛の禁止などにつながる。あるガールグループの関係者は「恋愛は当然禁止。携帯電話やiPad、iPodなどインターネットを使える機械も禁止だ。寄宿舎にテレビがない所もある」と話した。ガールグループ「ヨジャチング(GFRIEND)」と「宇宙少女(Cosmic Girls)」は放送で「携帯電話は持っていない」と打ち明けたことがある。ガールグループTwiceのナヨンは放送で「恋愛禁止が3年」と話した。育ち盛りの子供たちを閉じ込めて、食べることまで監視したりする。ソルヒョンは放送で「デビューを控えて毎日、朝と夜に体重検査があった」と話した。あるガールグループのメンバーは「食事も恋も思い通りにできなくて、平凡な職業がうらやましいと思った」と話した。

 今年1月、日本ではアイドル歌手の「恋愛禁止契約」を巡って「幸福追求の自由を顕著に制限している」という判決が下された。東京地裁はファンと交際したアイドルグループのメンバーを相手に所属事務所が提起した損害賠償請求訴訟で芸能人側に勝訴判決を下した。韓国では2013年に青少年芸能人の人権を保護する「青少年保護法」改正案が発議されるなど、芸能人の人権侵害に対する関心は高いものの、主に扇情性の側面で注目が集まっている。携帯電話の押収、寄宿生活の強制など、望まない統制と監視を受けることに対する問題意識は低い。

 企画会社もこうした統制は「メンバーが成功できるようにするため」と主張する。ある企画会社の関係者は「忙しいスケジュールの中で効率的に動き、ようやくデビューしたメンバーがかんばしくない状況にまきこまれないよう管理しているだけ」と話した。しかし、メンバーの“商品性”が落ちることを憂慮する面が一番大きい。別の企画会社の関係者は「携帯電話を押収するのは、異性芸能人による万一のアタックを遮断するため」として「熱愛説でも出回れば、広告違約金を支払わされることもある。デビューさせるまでに大金をかけているのに、問題が起きれば企画会社は大きな打撃を受ける」と話した。通常、練習生時期からデビューまでにかかる費用は、一人当り約2億ウォン(約1900万円)という。

 10代から20代初めの大切な時期を、全面的な監視と統制の中で過ごすことに対する憂慮の声も強い。インターネットはもちろんテレビの視聴すら禁止されたある10代のガールグループメンバーは、最近の流行語なども全く知らないと話した。ある地上波テレビ局の芸能ディレクターは「日常的な交友関係も結べずに人生の重要な時期を過ごさなければならない実状が心配だ。ガールグループ内でのいじめや葛藤が手のつけようもないまで深刻になるのも、統制されてばかりで人間関係に無知であることが大きな原因になっている」と話した。社会化の過程を経験できずに、正常な社会人として根をおろすことに困難を感じる人も多い。若くしてデビューし、今は中堅になったある女性芸能人は「マネジャーが全部してくれたので、一時期活動を中断したら自分でできることは何一つとしてなかった」と話した。

 こうした統制が実際に効果があるかも疑問だ。防弾少年団(BTS)は、練習生の時から携帯電話も個人で所持でき、恋愛禁止令もなかった。防弾少年団の企画会社は「禁止しなくても、彼らは夢をかなえるために自主管理していた」と話した。デビューの2年前から一緒に寄宿生活をして練習生時期を過ごしたフィエスター(FIESTAR)も、寄宿舎生活をしなくなった今の方がむしろメンバーがよくまとまるようになったと言う。大衆文化評論家のハ・ジェグン氏は「防犯カメラのような監禁に近い監視や、強圧的な私生活侵害は反人権的だ。韓流の中心に立っただけに、韓国のスターシステムのイメージ失墜につながりかねない過度な統制は無くさなければならない」と話した。

ナム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:8月2日(火)6時18分

ハンギョレ新聞