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好走を見せるも不運に見舞われた琢磨。より攻めの姿勢を求める

オートスポーツweb 8月2日(火)22時34分配信

 ウィスコンシン州ロードアメリカで久しぶりにロードコースで高い競争力を持つマシンを走らせた佐藤琢磨は、オハイオ州ミド・オハイオ・スポーツカーコースでのシリーズ第13戦を楽しみにしていた。ロードアメリカと同じように速いマシンで戦えることが期待できたからだ。

■速さを出せなかったAJフォイト陣営
 しかし、レースの前週に行った事前テストで、琢磨たちは期待通りのパフォーマンスを発揮できなかった。スピード、特にフレッシュタイヤのグリップが高い時にキッチリ速いラップを刻む瞬発力が不足していた。

 ジャック・ホークスワースとふたりで丸1日は走り込んだことで、豊富に得られたデータを基に、ミッド・オハイオに新セッティングを持ち込んだAJフォイト・レーシングだったが、金曜日のプラクティスからふたりのラップタイムは下位に沈んでいた。

 厳しい時には運も味方はしてくれない。フレッシュタイヤで走ろうとしたタイミングで雨が降り出したり、組み入れられる予選グループが、明らかにもうひとつのグループより強豪揃いとなっていたり……。Q1でタイムを出せず、琢磨の予選順位はトロントに続いて20位となった。ライバルの層が薄いグループで走ったホークスワースもQ2進出はできず、予選17位に。

 ミド・オハイオは長いストレートが1本しかなく、しかもキンクと呼ばれる左に緩くだが曲った部分があるため、オーバーテイクは非常に難しい。最後列のひとつ前、20番グリッドから90周のレースを戦う琢磨とすれば、決勝ではライバル陣営とは異なる作戦、つまりは序盤の早いタイミングでのピットストップ……という作戦を選択するのが当然だった。2週前のトロントで琢磨はこの作戦の恩恵を受け、シーズンベストタイの5位フィニッシュを達成している。

 快晴、強い日差し、やや蒸し暑いコンディションでレースは行われた。ロードアメリカに続き、ミド・オハイオの緑豊かなコースも芝生の観戦エリアにはとても多くのファンが陣取り、華やかな雰囲気の中でインディカーレースは開催された。

■2戦連続でストラテジーがはまる
 スタートで琢磨はブラックタイヤを装着。ショートスティントでそちらはおしまいにし、残り3スティントは全部レッドタイヤで戦うというのが、基本方針だった。2セットはユーズドだが、ラバーが乗ってグリップの高まった路面であれば、さほど摩耗によってパフォーマンスダウンは起こらないという読みからだ。

 レッド装着のマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポート)にはパスされたが、琢磨はファーストスティントを無難にこなし、12周でピットイン。3周後にフルコースコーションが出たことで一気に8番手までジャンプアップすることに成功した。

 決定的な瞬発力こそないものの、レースペースで安定したラップタイムを刻み続けられるものに仕上げられていたマシンで、琢磨はミスなく、燃費セーブも心がけながら上位を走り続けた。

 61周目、ホークスワースが激しいバトルで一瞬ラインを外れたためにコースアウト。これで二度目のフルコースコーションとなり、ほぼ全車がピットへと雪崩れ込んだ。この時点でトップだったミカエル・アレシン(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)はピットロードでのアクシデントで優勝争いから脱落。

 琢磨はチームクルーたちによる素晴らしいピット作業でコースに戻ったが、彼ら以上に素早いピットワークを実現したチャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ)に先行を許し7番手となった。先頭はこのイエローの少し前にピットしていたためにステイアウトしたコナー・デイリー(デイル・コイン・レーシング)だ。

 キンボールはリスタート直後のバックストレッチ・エンドでコースから飛び出し、デイリーはゴール前6周というところで燃料切れからピットに向った。

■好走もゴール目前にアクシデントが
 その次の周、4番手に浮上した琢磨に、すぐ後ろを走っていたセバスチャン・ブルデー(KVSH)が追突してきた。ブレーキをロックさせたのが原因だった。ふたりは揃ってコースアウト。ブルデーはそこでスタックしてリタイアしたが、琢磨は砂埃を捲き上げながらコースへと復帰した。

 琢磨のポジションは9番手に落ちていた。しかも、ジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)が真後ろに迫り、アタックしてきた。その攻撃を何とか封じ込め、琢磨は9位でチェッカーフラッグを受けた。

「あれは完全に僕のミス。パスできない相手にイライラが募り、ミスを冒してしまった。琢磨には悪いことをした」とブルデーは誤っていた。この接触さえなければ、琢磨は今シーズンのベストリザルトを記録できていた。それはまた、2戦続け20番グリッドからのスタートとなりながら、2戦連続でトップ5フィニッシュを果たすという見事な成績になるはずだった。

「今回もストラテジストのラリー・フォイトが完璧な戦略を選んでくれました。序盤のピットタイミングは楽観的に過ぎる早さだったかもしれないけれど、結果的によいタイミングでイエローが出て、順位を大幅に上げることができた」

「残念なのは、最後の最後に起きたアクシデント。20番手スタートで9位フィニッシュは悪くないけれど、4位は間違いなかっただけに、本当に悔しい。実績あるドライバーらしくないミスだったし……」とコメントし自身のレースを振り返る。

「僕らのマシンは、レースペースでは安定していたし、それなりのラップタイムを刻めるものになっていました。しかし、トップ5をずっと走っていたのは、あくまでも作戦の良さによるもので、まだトップグループで戦うためのスピードは得られていなかった」

「最後のスティントで燃費が厳しくなってカルロス・ムニョス(アンドレッティ・オートスポート)に差をつけられた点も、同じタイミングでピットしているんだから、そうなるのがそもそもおかしい。僕らの燃費計算が慎重過ぎるんだと思う」

「ゴール後に僕はピットまで問題なく帰って来れたけれど、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)とか何人かがコースでストップしてたでしょ? あそこまで燃費でも攻めたいですね。今日それができていたらブルデーに接近を許すこともなく、あんなアタックを仕掛けられずに済んでいたんだし……」

 延期となったテキサス戦を含め、インディカー・シリーズは残り4戦。佐藤琢磨はどんな走りを見せてくれるだろうか。次戦ポコノは、8月21日に決勝レースが行われる。


[オートスポーツweb ]

最終更新:8月2日(火)22時35分

オートスポーツweb

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。