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イギリスのEU離脱は今後どのような影響を及ぼすのか

ZUU online 8月3日(水)6時10分配信

2016年6月23日、イギリス国民はEU(欧州連合)から離脱すること選択した。この選択が正しかったのか、それとも誤りであったのかはわからないが、この選択は世界経済に大きな影響を与えることになった。今後EUはどうなってしまうのか、また日本への影響はどうなのかについて考えてみたい。

■イギリスがEU離脱を選択した理由は?

EUは、加盟国の政治的・経済的統合を進めていくことを目標とした組織である。

そのため、加盟国は国家の主権も一部制限されることになる。イギリスはEUの前身であるEC(欧州共同体)の時代から加盟しているが、以前から他の加盟国との間で意見の対立がみられ、もともとEUとはなじんでいなかった。しかし、欧州を一つにまとめて世界と戦うという目標を達成するためにはイギリスを抜きにすることはできず、イギリスもまた自国の経済に自信が持てる状況ではなかった。そのため、通貨の統合はせずポンドの存続を認めるなどEU側が譲歩し、イギリスもEUに参加してきたのである。

ところが、2011年以降のユーロ危機の際にはイギリスも少なからず影響を受け、金融危機の再発防止に向けて金融に対する規制強化が進んだ。この規制強化が、金融立国であるイギリスの不満を高めることになった。それに加え、EUの基本条約では加盟国の国民に域内の移動の自由を保障しているため、新たに加盟した東欧諸国などの低所得の移民が仕事を求めてイギリスに流入した。その結果、社会保障費等の負担が増大し、イギリスの財政を圧迫することになった。さらに、ISIS問題による難民受け入れも加わり、EU離脱の気運が高まっていったのである。

EUの発想は先にも述べた通り、ヨーロッパを一つの大きな経済圏とすることで国際競争力を高めていこうというものである。しかし、ヨーロッパといってもイギリスとその他のEU諸国では、実は歴史的背景や法体系が大きく異なる。フランスやドイツは「大陸法系」で、イギリスは「英米法系」である。つまり、思想や法体系的にはイギリスはヨーロッパよりアメリカに近い。大陸法系の特徴は司法に対する不信と立法府に対する信頼で、英米法系の特徴は立法府に対する不信と司法に対する信頼である。そのため、イギリスは規制を好まず、自由を重んじる。ところがEUでは多くの規制が作られており、イギリスからすると窮屈であると感じていたに違いない。そんな時に国民投票が行われたため、離脱派の勢いが強くなっていったのである。

イギリスは議院内閣制の国であり、間接民主制を採っている。したがって、本来は国民に選ばれた政治家が判断をするのが筋である。それなのにキャメロン首相は国民投票をしても離脱派が勝つことはないと考え、安易に国民投票を行ったのである。当時の英国民の不満を解消するには、国民投票の結果を示しEUに存続することの正当性を示したかったのであろう。しかし、蓋を開けたら離脱派の勝利で思惑が外れ、当初離脱派が勝っても辞任しないと公言していたにも関わらず、キャメロン首相はすぐに辞任した。一方、離脱派を主導し勝利した前ロンドン市長のジョンソン氏は与党・保守党首選への不出馬を表明し、同じく離脱派のリーダーである英国独立党のファラージ党首も党首を辞任すると発表した。

政治家として自ら決断すべきことをせず国民投票に逃げたキャメロン首相は、政治家として最低である。また、虚偽の情報で国民を惑わした揚げ句、離脱した責任を問われるのを恐れて前線から離脱するジョンソン氏やファラージ氏も愚かとしかいいようがない。EU離脱が決まってから、「EUとは」と検索している英国民も情けない。国民投票というのは、そういう危険を孕んでいる。

■離脱が世界経済に及ぼした影響

離脱の結論の是非はともかく、離脱によって世界経済は大きな影響を受けた。イギリスの国民投票から一夜明けた2016年6月24日の東京株式市場では大暴落が起こり、日経平均株価は前日比1,286円安の1万4,952円となった。同じように、NYダウは、610ドル安い1万7,400ドル、NASDAQは、202ポイント安い4,707ポイントに下がっている。ヨーロッパの主要指標であるドイツDAXは、6月25日に前日より699ポイント安い、9,557ポイントとなっている。

為替相場は、ドル円が一時1ドル=99円台に突入し終値で102円、円ユーロが7円安い113円、円ポンドが18円安い139円になるなど、同日の外為市場も大荒れとなった。

一方、金相場は6月23日に4,549円/gであったものが、7月7日現在で4,841円/gまで価格が上昇している。「有事の金」と言われるように、安全資産である金の需要が高まった結果であるといえよう。イギリスのEU離脱がユーロ崩壊の始まりになるのではないかとの懸念から、一気に不安心理が強まり安全資産へのシフトが起こったわけである。

では、世界経済は今後どうなっていくのであろうか。EUからの離脱によって、イギリスはEU市場へのアクセスがこれまでより難しくなる。今後どのような貿易協定を結ぶかによって関税などの状況は変わってくるが、イギリスの輸出の多くはEU向けなのでその影響は大きいであろう。また、制度というのは安定しているときには何も起こらないが、ひとたび不安定になると一気に不安が増し、景気に影響を及ぼす。イギリスを失ったEUの信用低下は避けられず、イギリスの経済も低迷すれば、ヨーロッパ全体の景気が悪化し始める。そうなればユーロ安になり、EUの購買力が一気に落ちることになる。この点、ドイツは輸出国なのでユーロ安により輸出が増える可能性はあるが、EU全体でみると購買力低下の影響の方が大きいといえる。

これに対して、EUを離脱してもEUメンバー国と貿易ができないということはないし、関税の問題は協定によっていくらでも回避できるからイギリス経済は心配ないと楽観視する人もいる。しかし、EUがイギリスの言いなりになることで、スペインやイタリアのEU離脱の動きを加速させるおそれがある。イギリスに続いてEUを離脱する国が現れれば、ギリシャなど経済的に苦しい国ばかりがEUに残るということにもなりかねない。したがって、そんなに簡単には条件を引き下げることはできないであろう。

米国については、7月の米国雇用統計の結果は好調だったものの、EU離脱の影響を考慮して米国の追加利上げも先送りされる可能性が高まっている。利上げが行われなければ、円高が長引く可能性が高い。そうなれば、日本にとっては厳しい環境が続くことになる。

■日本経済への影響

日本経済への影響としては、円高による輸出産業へのダメージが心配される。日本企業の対ドル想定レートが110円前後であることを考えると、100円割れの状況が続けばかなりの減益になるであろう。また、これまで日本の景気を下支えしてきたインバウンド需要にも影響がでる。今は情報が瞬時に伝わるため、他国の経済の低迷が日本にも飛び火する。イギリスやEUの経済がダメになるかどうかはわからないが、短期的には日本の経済にとって悪い影響を及ぼすことは明らかである。さらに、2016年はアメリカ大統領選挙も控えている。もし、2017年からトランプ氏が大統領になってドルが暴落するようなことがあれば、円高はさらに進むことになる。トランプ氏はTPP離脱も表明しているので、輸出という側面では日本にとってマイナスとなる。

ただ、日本とイギリスとの関係を見てみると、イギリスはEUの玄関口として魅力があったが、EUを離脱してしまえばその魅力はなくなってしまう。ロンドンのシティが世界の金融センターでありえたのは、英語圏でかつEUの金融センターであったからで、EUを離脱してしまえば、それをドイツやフランスに移転すればよいだけである。したがって、金融に関しては日本にとってそれほど影響はないであろう。

また、英国向けの輸出額は、2014年度1兆1,842億円で、EUの15.7兆円、米国の21.2兆円と比べても小さいため、英国との2国間貿易のみを見れば影響は限定的である。

以上のように、イギリスのEU離脱問題は日本経済にとって良いことはないが、離脱までは2年間あることから、その間に情勢が変わればEU離脱を撤回するということも可能性としてはゼロではない。今は、むしろアメリカ大統領選挙が気になるところである。大事なのは、予想外のことが起こった場合に、どのような行動を取るかを事前に考えておくことである。(提供:百計オンライン)

最終更新:8月3日(水)6時10分

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