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専門家のアドバイス通りで「争続」に? 遺言を書く際の5つの注意点

ZUU online 8/3(水) 19:10配信

専門家のアドバイスに従って遺言書を作成したら、相続人間でもめる原因になった。このような事例が実は多々ある。

■専門家任せにしてはいけない

ところで自分が亡くなった後のために、遺言書を作成する方もいるだろう。専門家に相談をして、相続内容を確定する。自宅不動産は長男、金融資産のうち預貯金は妻、株や投資信託は次男に相続させよう……。このようなやりとりが、専門家のアドバイスの基に進んでいく。

弁護士などの専門家に相談すれば、法的には問題のない有効な遺言書ができることは間違いない。しかるべき費用を払い、ほとんどの場合は公証役場で公証人が関与して遺言書を作成するのだから、当然と言えば当然である。

しかしながら、専門家に遺言書の作成を依頼して安心してはいけない。法的には有効な遺言書になっても、それが将来の相続人間の争い、つまり「争族」までをも回避する遺言書になっているかといえば至極疑問な場面が多い。繰り返しになるが、専門家に遺言書の作成を依頼しても安心はできないのだ。

ここでは、専門家に任せっきりにせず、「争続」を回避する遺言書の書き方をお伝えしよう。専門家に相談するときに、次の事柄を意識し、遺言書に盛り込んでもらうとよい。

■付言事項の書き方が「争続」を回避するカギ

遺言は二つの項目から構成される。一つ目が遺言事項であり、二つ目が付言事項である。法的な効果が認められるのは遺言事項であって、法的拘束力とは関係のない事項が付言事項だ。

遺言事項の記載は専門家のアドバイス通りに従って決めればいいことだから、ここでは割愛する。詳しく解説したいのは「付言事項」だ。

付言事項に記載するのは、財産の分け方を決めた理由や残された家族への最期のメッセージなどである。たとえば「不動産は長男に相続させるのは長男一家と同居していたからであり、次男は納得して欲しい……。相続人間では争うことなくこれからも仲良く暮らして欲しい」と書く。これが付言事項の典型であろう。

この付言事項だが、書き方を誤るとマイナス効果になることがある。相続人間の対立を煽ってしまうことがあるから、付言事項の書き方には、細心の注意が必要なのだ。付言事項に最期のメッセージを書く際に、以下のポイントを参考にして欲しい。

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■付言事項は「平等に、同じ分量で、具体的に、プラスの言葉」で書く

1 相続人は全員登場させる

当たり前のことだが、付言事項は相続人のすべてを登場させなければいけない。長男の名前はあって、次男の名前がないとなると、次男としては面白くなく、無用な対立を招いてしまう。相続人のすべてが登場していない遺言書も見受けられるがまったくもって望ましくない。

2 相続人以外も平等に登場させる

家族とのエピソードを付言事項に書く場面も多いが、ここでも登場人物には注意が必要だ。たとえば長男の子ども(遺言者から見たら孫)が遺言で登場するのなら、次男の子も登場させるべきだ。人間はつまらないことで反感を覚えるものだから、ここでも配慮が必要なのだ。

3 同順位の相続人へのメッセージは行数をそろえる

相続人へのメッセージは、行数まで配慮しなければいけない。長男へのメッセージは5行あるのに、次男は3行しかないのなら、やはりこれも兄弟間の争いの種になるのだ。

そんな行数だが、すべての相続人分を同じ行数にすることまでは必要ない。たとえば妻へのメッセージは7行あって、長男へのメッセージは5行しかないとしても、長男はさほど気にしないのだ。長男から見たら「母親(遺言者から見たら妻)の立場と自分の立場は違うものだ」とわかっているからだ。

行数をそろえるべきなのは、同順位の相続人へのメッセージだ。具体的には長男と次男は行数をそろえる。次男からすれば、長男は兄であっても相続においては同じ「遺言者の子」である。「同じ立場の相続人は同じ行数にする」と覚えておくとよいだろう。

4 分け方の理由は「具体的に」書く

資産の分け方を明記するのは遺言事項だが、付言事項で分け方の理由を書くことが望ましい。注意点は出来るだけ具体的に書くことだ。

たとえば財産を多くもらえる長男は被相続人と同居していた、家業を継ぐことになっている、長男自身の生活を犠牲にするほどの介護をしてくれた。このような事情があるならば、相続人にとって明らかなことでも、しっかり遺言のなかに記載をする。

一方で財産をもらえない、あるいは少ない額しかもらえない相続人ならば、なぜそうなのかを具体的に書く。被相続人が特定の相続人にお金を貸していた、生前に結婚資金や新築資金のために贈与していた、被相続人がそれらの清算のつもりで相続させる財産を少なくしているのかもしれない。具体的に書くことで、相続人も納得しやすくなる。

5 プラスの言葉を使うなら全員に

付言事項で礼や褒め言葉を記すなら、特定の相続人だけにしてはいけない。ここでも「平等に」、各人にプラスの言葉をおくる。とにかく将来の紛争を回避するためには、相続人の立場を考え、特定の相続人だけを追い詰めることはしてはいけないのだ。

いかがだろうか。私も専門家の一人だということもあり、遺言書の作成をプロに依頼することはよいことだとは思う。法的な効果がない遺言になっては元も子もないのだから、ここは専門家に任せるべきなのだ。

けれども専門家は遺言者の家族ではない。家族にしかわからないそれぞれの立場などを踏まえた上で、付言事項はむしろ遺言者が主導して作成にあたるくらいの心構えがよい。家族の為にも、「争続」を回避する努力をしよう。(碓井孝介、司法書士).

最終更新:8/3(水) 19:10

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