ここから本文です

営業出身エンジニアが、20代で外資系IT企業のアナリストになれた理由

@IT 8月3日(水)6時10分配信

 就職はキャリアの第一歩。それだけに、その後のキャリアをどのように形成していくかも考えて、就活を行う必要がある。

【その他の画像】アバナード ソフトウェアエンジニアリンググループ アナリストの濱口兼行さん

 1つの会社で経験を積み重ね、キャリアを築いていく方法もある。転職でキャリアアップを図ったり、キャリアの幅を広げたりする方法もある。

 今回お話を伺った濱口兼行さん(26歳)は、新卒で入社した企業でのさまざまな経験を、次のステップへと転職でつなげ、現在はアクセンチュアとマイクロソフトが合弁で設立した外資系IT企業「アバナード」で活躍しているエンジニアだ。

 IT業界でキャリアをどのように形成していくのか――濱口さんのストーリーは、就活生諸君の業界研究、企業研究の参考になるのではないだろうか。

●シーラカンスDBに名を記すもIT業界を志望

 濱口さんは大学の水産学部で、海洋生物の研究をしていた。

 「海洋廃棄物に関する研究の一環として、エビやカニといった甲殻類の殻から、グルコサミンを分解するタンパク質の遺伝子を研究していました」

 さらに“生きた化石”とも呼ばれるシーラカンスの遺伝子の一部も解析した。その結果、世界中の研究者から参照されるシーラカンスの遺伝子データベースに、現在も、濱口さんの名前が記載されているという。

 そんな濱口さんが、なぜIT業界を目指すに至ったのだろうか。

 「当時、SNSで知り合ったメンバーたちが開催するいろいろなオフラインイベントに参加していました。人と人とがオンラインで知り合い、リアルな世界につながって、一緒に何かをするという流れがとても楽しかったのです」

 SNSのサービスとしての面白さに魅力を感じた濱口さんは、いつしか自分もそうしたサービスを作る仕事をしたいと思うようになった。プログラミングの知識こそなかったものの、心は次第にIT業界志望へと傾いていったという。

 そうして濱口さんが選んだのは、東証一部上場の大手SI企業だった。

 SNSではなく企業向けシステムの開発が主力の企業であったが、就活時の濱口さんには、その違いがあまりピンと来ていなかった。入社したのは2012年4月のことである。

●営業職で商品知識を深めてから開発職に

 入社後1カ月間の研修では主にコンピュータ概論を学び、具体的なプログラミングについて学ぶチャンスはなかったという。

 研修を終え、マイクロソフトのCRM(顧客管理)パッケージソフトウェア「Dynamics CRM」を取り扱う事業部に配属された。

 ただし、濱口さんの担当は「営業」だった。

 個人向けのサービスではなく企業向けシステム開発メインの会社、希望していた開発職ではなく営業職――就活時に思い描いていたものとはだいぶ異なる社会人生活のスタートだったが、濱口さんは「これもキャリアステップの1つ」と考え、真剣に取り組むことにした。

 濱口さんのミッションは、パッケージソフトウェアの新規顧客開拓。

 パッケージソフトウェアとは、特定の業務において汎用的に使えるように作られた既製のソフトウェアだ。プログラミングのスキルがなくても、あらかじめ用意されているオプション設定を変更すれば、ある程度のカスタマイズが行えるように設計されている。

 濱口さんは、そうした製品の特徴を利用して、顧客ニーズに合わせたカスタマイズを行い「このようなことができるようになる」とデモを見せながら説明し、受注につなげていったのである。

 詳しい商品知識が身に付き、顧客提案のコツもつかめてきたころ、濱口さんは開発職へ異動になった。同年12月のことである。

●必要なスキルは全て現場で学んだ

 念願の開発職だったが、入社後プログラミングを学ぶ機会がなかった濱口さんは、開発スキルを、全て現場で身に付けていったという。

 「Excelのマクロや、簡単なバッチコマンドの作成などからスタートし、その後、先輩が開発したカスタマイズ部分のプログラムを手本に、プログラミングを勉強していきました」

 Dynamics CRMを本格的にカスタマイズするには、やはりプログラミングが必要で、主にマイクロソフトのプログラミング言語であるC#が使われている。

 濱口さんは、先輩たちが作成した既存のプログラムをワンステップずつ実行したり、プログラムの実行を途中で止めたりしながら、どのような処理がなされているのかを学んでいったという。

 「その後は自分で設計書を見ながらプログラムを書いたり、先輩エンジニアからレビューを受けたりしながら、プログラミングを学んでいきました」

 そうして開発エンジニアとして独り立ちし、2年ほどたったころ、濱口さんは転職を考えるようになっていた。

●「もっといろいろなことができるはず」

 濱口さんが転職を考えたのは、営業を経験したからこそ見えてきた現実が原因だった。

 「Dynamics CRMは、マイクロソフトの製品なので、SharePointなどと組み合わせると、もっと活用の範囲を広げられます。しかし以前の会社では、そのような提案機会があまりありませんでした」

 SharePointは、マイクロソフトが提供している文書・情報共有アプリケーションソフトで、複数人のグループで、スケジュールやMicrosoft Office製品群で作成した文書ファイルなどを共有し、共同で編集・管理が行える。Dynamics CRMと組み合わせると、クライアントに対して、いつ、誰が、どのような見積もりや提案書を作成したのかといった関連情報が共有できるようになる。「活用次第で、もっと便利になるのに」という歯がゆい思いが、どんどん募っていった。

 いざ転職となると濱口さんに迷いが生まれた。

 これまではB2Bのシステムソフトウェアの開発を手掛けてきたので、次は就活時に想像していたIT業界――インターネット上で提供されるSNSや情報検索サービス、地図情報サービスなど、B2Cのサービスの開発を手掛けてみたいと考えていた。

 その一方で、これまでに培ってきたDynamics CRMに関するノウハウを生かして、もっといろいろな提案と開発が行える企業で仕事をしたい、という思いもあった。

 結果として、濱口さんは後者を選択した。

 「既に結婚して家族がいたので、収入を下げたくなかったというのもあります」

 経験のないB2Cのサービス開発では、またイチからキャリアを築いていくことになる。もちろん経験の幅は広がるものの、すぐに高収入は望めないだろう。しかし、これまでに築いたキャリアがそのまま生かせる仕事ならば、経験に応じた収入アップも見込めるというわけだ。

●これまでの経験を全て生かせる会社に転職!

 Dynamics CRMとマイクロソフトの他の製品と組み合わせたさまざまな提案を行い、自ら開発していきたい――そんな濱口さんの希望条件を100%満たしてくれるのがアバナードだった。

 アバナードは、アクセンチュアとマイクロソフトの2社により戦略的合弁会社として2000年に米国シアトルで設立した企業であり、日本法人は2005年に設立された。

 顧客企業のコンサルティングをしっかりと行い、マイクロソフト製品を中心としたシステムの提案を幅広く行う同社は、濱口さんにとってまさに理想的な職場だった。

 コンサルティングファームでは、システムの開発フェーズを外部のパートナー企業に依存しているところも多いが、アバナードでは基本自社内で行っているという。そうした点も、濱口さんが同社にひかれたポイントだ。

 「プログラミングを知らずに上流へステップアップしてしまうエンジニアがいますが、果たしてそれでいいのかと常々思っていました。そこで採用面接で『どれぐらい自分で手を動かしますか?』と聞きました。たとえ上流にステップアップしても、自らプログラミングをする機会があるのは当社の魅力だと思っています」

 また、技術の習得においても満足しているという。

 「マイクロソフトの開発者向けサービスであるMSDNにも加入しているため、リリース前のOSやアプリ、開発環境など最新の情報やプロダクトに触れられるなど、とても助かっています」

 現在、濱口さんは、顧客企業のシステムの移行プロジェクトを担当しており、マイクロソフト製品を組み合わせたさまざまな提案を行いながら、移行のためのツール開発にも力を発揮している。

●業界の絞り込みは大切! プログラミングは学んでおきたかった……。

 そんな濱口さんに、就活生へのアドバイスをいただいた。

 「IT業界を志望している人は、IT業界という大枠ではなく、Webサービスなのか、ゲームなのか、企業システムなのかなど、希望業種をより細かく絞り込んでおくと、ミスマッチが少なくなるのではないでしょうか」

 SNSがきっかけでIT業界を志望した濱口さんが、企業システムの開発を中心とするSI企業に就職してしまったのは、細かな絞り込みができていなかったから。このアドバイスには、自身の反省も含まれているのだろう。もっとも濱口さんの場合は、企業システムの分野でキャリアをしっかりと築いていっているので、結果的に正解ではあったのだが。

 「そして、学生時代に少しでもいいからプログラミングを勉強しておけばよかったと、今でも思います。ベンチャー企業などではプログラミング知識のある人しかエンジニアとして採用しないというケースもあります。プログラミングを勉強しておけば、就職先の選択肢が広がるのではないでしょうか」

 開発職を目指していても、濱口さんのように営業職に配属されてしまうこともある。この点についてはどうだろうか。

 「営業に配属されたのは良い経験だったと思います。そのおかげで他の製品や技術にも興味を持つようになって視野が広がりましたし、お客さまへの提案スキルは、エンジニアとして上流にステップアップしたときに役立ちます。営業を経験することは、キャリアステップとして“あり”だと思います」

 希望と異なる部署に配属される、仕事内容が思っていたのとは違った、など不本意な状況に置かれる可能性は誰にもでもある。「災い転じて福となす」の見本のように、「現実」を血肉とし、「未来」へしっかりとつなげていった濱口さんのキャリア形成は、ぜひ見習いたいものだ。

[竹内充彦, 聞き手:@IT編集部,@IT]

最終更新:8月3日(水)6時10分

@IT

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

暗闇で光るサメと驚くほど美しい海洋生物たち
波のほんの数メートル下で、海洋生物学者であり、ナショナルジオグラフィックのエクスプローラーかつ写真家のデビッド・グルーバーは、素晴らしいものを発見しました。海の薄暗い青い光の中で様々な色の蛍光を発する驚くべき新しい海洋生物たちです。彼と一緒に生体蛍光のサメ、タツノオトシゴ、ウミガメ、その他の海洋生物を探し求める旅に出て、この光る生物たちがどのように私たちの脳への新たな理解を明らかにしたのかを探りましょう。[new]