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クルマづくりに誇りを持てば、不正は起こらないのか

MONOist 8月3日(水)6時25分配信

 三菱自動車の燃費不正問題に関する特別調査委員会は2016年8月2日、東京都内で会見を開き、三菱自動車に実施した調査の結果を報告した。軽自動車4車種をきっかけに明らかになった一連の不正について、2016年4月25日~7月31日までの約3カ月間で、関係者154人に対し延べ236回の聞き取り調査を実施した。

【開発を中止する新小型SUVのプラグインハイブリッドモデルなど三菱自動車の車両開発計画】

 三菱自動車と利害関係のない社外の人材で構成した特別調査委員会は「自動車の製造販売は単なる利益追求のツールではない。ユーザーとメーカー、販売店がわくわくする自動車を送り出すことが自動車メーカーにとっての誇りであるはず。働く人全員で理念を共有することが、最も重要な再発防止策だ」と指摘している。

●三菱自動車がやったこと、何が不正だったのか

 特別調査委員会は、元東京高等検察庁検事長で弁護士の渡辺恵一氏が委員長を務める。この他、元トヨタ自動車 理事でハイブリッド開発を統括した八重樫武久氏、弁護士の坂田吉郎氏や吉野弦太氏も委員として参加している。

 調査対象者は三菱自動車、日産自動車と三菱自動車の合弁企業であるNMKV、三菱自動車エンジニアリングの役職員や元役職員の154人。これら3社に残っている関係資料も収集、内容の精査や検証も行った。3社の役割や不正を行った車種、不正の中心となった部署、型式認証の取得に関わる手続きなどは、240ページに及ぶ報告書にまとめられている。

 一連の燃費不正問題は、時系列順に3つに分けられる。

・1991年12月ごろから、法規で定める惰行法ではなく、高速惰行法を使っていた
・2005年12月ごろから、目標の燃費値を達成するために、恣意的に走行抵抗値を低くして型式指定審査に使用した
・2013年6月に販売した軽自動車「eKワゴン」で、目標の燃費値を達成するために走行抵抗値を恣意的に低く算出した

●不正の背景とは

 特別調査委員会は、これらの不正の原因や背景として7項目を挙げた。

・性能実験部と認証試験グループが、燃費目標達成に向けた事実上の責任を負っていた
・開発日程や人材の在り方に起因する工数不足があった
・できないことを「できない」というのが難しい部署となっていた
・法規違反への意識が希薄で、法規を軽んじていた
・不正行為が長年発覚せず、改められもしなかった
・技術的な議論が不十分なまま、燃費目標が設定された
・会社が一体となってクルマを作って売るという意識が欠如していた

 一方、三菱自動車 会長の益子修氏は、身の丈を超えた過大な車種展開が不正の背景にあったと説明する。「1991年は、新型車16類別の発売に向けて動き出した時期で、工数が不足していた。そのため、本来の手順を省略することを目的とする不正がシステム化した」(益子氏)。

●1車種の開発中止を決定

 身の丈にあった車種展開を進めるため、1車種の開発中止を決めた。2020年までに市場投入する“SUV三兄弟”の次男坊である新小型SUVのプラグインハイブリッドモデルの開発を取りやめる。

 長男である「アウトランダー」や、末っ子の次期「RVR」はプラグインハイブリッドモデルを含めて開発を続ける。「地球に優しいクルマ作りをしていくことを考えると、次男坊の開発は中止しても残りの2モデルは残さざるを得なかった」(三菱自動車 副社長の山下光彦氏)。次男坊の新小型SUVについては内燃機関モデルは開発を続ける。

 また、この新型コンパクトSUVのプラグインハイブリッドモデルは開発工数の負担が大きかったという。「これをやめないと他の車種に影響が出るという現場の要望を聞いた。また、営業部門に確認すると、事業性と開発の苦労が見合わないことも分かった。工数の負担軽減のために開発を止めて良いと判断した」(益子氏)。

 三菱自動車は既に体制変更など再発防止策を発表し実行に移しているが、特別調査委員会は、会社が一体となってクルマを作って売るという意識が欠如していたという点がまだ社内に根付いていると見ている。

 同委員会は「不祥事を防げない会社なのは、三菱自動車に一体感がないから。経営陣や役員は開発現場への関心が薄く、働く人たちの思いが一致しているようには見えない。その状態で再発防止策を考え実行しても上手くいくはずがない。同じことの繰り返しになる」と指摘する。

●三菱自動車は、SUVと電動車に特別な思い入れを持っているか

 特別調査委員会がまとめた調査報告書では、クルマ作りにプライドを持つことが不正防止に重要だと強調している。

 「自動車がユーザーにとって特別な魅力を持ち続けるために、自動車メーカーは、ユーザー以上に特別な思い入れを持って、クルマ作りに向き合う必要がある。目指すべき方向が明確に定まっていないと、クルマ作りに関わる人たちが問題に直面したり迷ったりした時に立ち返るべき理念がなくなってしまい、会社全体が迷走する」

 「最悪の場合には、利益という分かりやすい目的の追求のために、問題やプレッシャーから目を背け、自動車に対して絶対にしてはいけないことをしてしまう。理念が存在し、共有されていれば、その理念を台無しにするようなことは誰もしない。大好きな自動車にうそをつくことはないのである」

 再発防止策の進捗だけでなく、三菱自動車が再出発に当たってどのようなクルマ作りの理念を打ち立てるのか、注目が集まる。

最終更新:8月3日(水)6時25分

MONOist