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異物は? 入っていません! ローソンの中国工場に潜入してきた

ITmedia ビジネスオンライン 8月3日(水)8時13分配信

 中国・上海の中心部からクルマで30分ほど。町工場がたくさん並ぶエリアに「上海片江食品」という工場がある。ここでつくられたお弁当やおにぎりが、上海にあるローソンに届けられる。いわゆるベンダーだ。

【中国の工場に潜入してみた!】

 片江食品の社長・周燕莉(しゅう・えんり)さんは、日本での留学経験があるので、日本語はペラペラ。「日本のお弁当はおいしいし、美しい。素晴らしい食文化を中国に定着させたい」という思いから、食品工場をスタート。ちなみに、なぜ社名に「片江」という文字が入っているのかというと、「日本でいたときに福岡市の片江という町に住んでいました。そのときの思い出が素晴らしかったので、社名に入れました」というほどの親日ぶり。

 ちょっと「ジーン」ときてしまったが、気を引き締めなければいけない。「中国の食品工場」といえば、やはりあのマクドナルドの事件を思い出す。工場の床に落ちているチキンを従業員がひろって再び製造ラインに放り込むシーンだ。その後も異物混入の騒ぎが続き、マクドナルドの屋台骨が揺らいだ。

 では、ローソンに弁当を提供している中国工場は大丈夫なのか。異物は入っていないのか。いい加減な仕事はしていないのか。今回は特別な許可をいただいて、工場を見学することに。上海片江食品の周さんと、ローソン商品部の野澤孝弘さんに案内していただき、現場に潜入した。さて、東京から約1800キロ離れた工場の中は、一体どうなっているのか。はじまり、はじまり。

●低価格のお弁当を提供するために

土肥: 中国と日本の工場とでは、どのような違いがあるのでしょうか?

野澤: 日本のお弁当と比べて、中国では3分の1ほどの価格で提供しなければいけません。嗜好品にはお金をかけるのですが、お弁当やおにぎりなどにはあまりお金をかけません。となると、手ごろな価格でボリュームがあって、おいしいモノを提供しなければいけません。

 では、どうしているのか。日本の場合、メーカーが食材をカットして、味付けをして、商品を工場に納入しています。日本の工場は、それを焼くだけ、煮るだけ、盛り付けるだけといったケースが多い。しかし、こちらは違う。価格を抑えなければいけないので、原材料をそのまま仕入れているんです。例えば、キャベツを仕入れたら、きちんと洗って、カットして、焼いたり、煮たり、盛り付けたりしなければいけません。

 日本の場合、調味料も用意してくれるんですよね。例えば、ある食材を炒める場合、そこに指定された調味料を入れると、完成といった感じ。中国では、砂糖、塩、醤油などイチから配合して、調味料をつくらなければいけません。そうすることによってコストを抑えることができ、お客さんに手ごろな商品を提供することができるんですよね。

土肥: 工場の中をみると、確かに従業員がモヤシを洗っていたり、ニンジンをカットしたり、鶏肉を揚げていたりしていますね。でも、手作業の工程が多かったら、人件費の負担が増すのでは?

周: 工場スタート時の従業員は200人ほど。当時、上海にあるローソンは180店ほどでしたが、現在は500店を超えています。生産量は増えても、現在の従業員は250人ほど。機械化できる部分はできるだけ機械を導入して、コストの削減を図っています。

土肥: 日本のように調理された食材を仕入れるよりも、原材料を購入して、工場でトントンと切っているほうが安くつくのですか?

周: はい。日本と違って、こちらでは手作業でやるほうが、コストを抑えることができるんですよね。

●検査は100%合格

土肥: 品質管理はどのように行っているのでしょうか? ご存じだと思いますが、日本ではマクドナルドの上海工場がやらかしてしまって、大問題に発展しました。

野澤: いい商品を提供するように、品質管理を行っています。日本に比べて、3倍ほどの人員を配置しています。

土肥: 具体的にどんなことをしているのでしょうか?

周: 異物が入っていないのか。菌が付着していないのか。といったことだけでなく、商品はきちんとマニュアルに沿ってつくられているのか。調味料の配合はちゃんとしているのか。品質だけだけでなく、ちゃんとおいしくつくれているのか。見た目はちゃんとしているのか。さまざまな項目をチェックしています。

土肥: 厳しい言い方をすると、みなさん「ちゃんとやっている」と言いますよね。「ちゃんとやっていません」なんて言いませんから。第三者によるチェックはしていないのですか?

周: やっています。調査会社が月に1回、店頭に並んでいる商品を購入して、菌検査を行っています。いつどこでどの商品を購入して、検査をするのか、私たちは知りません。

土肥: 結果は?

周: これまでのところ、100%合格しています。また、上海市による調査もあって、月に1回、店頭に並んでいる商品を検査しています。調査会社と同じように、いつどこでどの商品を購入して、検査をするのか、私たちは知りません。

土肥: 結果は?

周: 100%合格しています。

●原材料に異物が混入していることも

土肥: 他社の状況はどうですか?

周: 100%合格しているのは、上海市でウチの工場だけ。2012年、上海市はすべてのコンビニで検査を行いました。そのときの合格率は30%ほどでした。とあるコンビニの商品は合格率がかなり悪くて、上海市の担当者は「あなた方はたくさんの弁当を提供しているのに、この結果はひどい! この場で、あなたを逮捕してもいいくらいだ!」と怒っていました。

土肥: 全体的に合格率が低いのに、なぜ片江食品は100%という結果を出すことができたのでしょうか?

周: 先ほども申し上げましたが、私たちは毎日、検査をしています。綿棒を使っての拭き取り調査を行っていて、数にして1日に500本、月に1万5000本ほど検査しています。その合格率は99.5~99.8%。なぜここまで高い数字を維持できるかというと、インセンティンブが影響しているのかもしれません。

 当社では、合格率が○○%以上であれば、ボーナスを支給しています。日本人には理解しにくいかもしれませんが、こちらではきちんと仕事をした人にはそれだけの金額を支払わなければいけません。でないと「不公平」と感じるんですよね。というわけで、合格率の目標を達成するたびに、ボーナスを支給しています。

土肥: なるほど。原材料をそのまま仕入れているということですが、異物が入っているケースはないのでしょうか?

周: ありますね。シイタケ、クラゲといった農産物の乾燥品を仕入れているのですが、こうした食材に異物が混入しているケースがありますね。なぜか。食材を加工しているときに、品質管理が徹底されていないからでしょう。乾燥シイタケの場合、収穫してから干さなければいけません。しかし、いい加減な人が作業をすると、干しているところでタバコを吸っているんですよね。そのときにタバコの灰が混入するんです。

 タバコの灰以外にも、さまざまなモノが混入しています。当社では、そうした異物を見つけて、除去しなければいけません。選別するために、2重、3重のチェックをしているので、100%の合格率を達成することができたのかもしれません。

●韓国風の焼肉弁当、オルレアン弁当が好調

土肥: 工場ではお弁当やおにぎりなど、いわゆる米飯関連のモノをつくっているわけですが、どのような商品がよく売れているのでしょうか?

野澤: その話の前に、上海市場の話をさせてください。こちらでは、お弁当がよく売れています。1店舗当たりの売り上げ(1日)は、日本と比べて約1.5倍! でも、おにぎりは3分の1ほどし売れていません。

 以前は中華のお弁当ばかりつくっていましたが、徐々に和食や洋食のモノが売れるようになってきました。5年ほど前に、カレーはほとんど売れませんでしたが、いまでは食べる人が増えてきました。現在、全体の7割が中華で、1.5割りが和食、1.5割が洋食といった感じで、つくっています。

土肥: どんなお弁当が売れているのでしょうか?

野澤: 韓国風の焼肉弁当がよく売れていますね。豚肉を使っていて、味付けは甘辛い。

周: 商品開発の際、担当者と一緒に韓国料理の焼き肉店に行きました。その人は韓国料理のことをあまり知らなかったのですが、実際に食べて再現することができました。どんな調味料を使っているのか、といったことなどを考え、肉を焼く場合には温度、時間、下処理(漬け込む時間)などを何度も何度もテストをして、商品が実現しました。

野澤: 韓国風の焼肉弁当のほかに、オルレアン弁当もよく売れていますね。

土肥: オルレアン弁当? 何ですかそれは?

野澤: うーん、それが説明が難しくて……。いろいろ調べてみると、どうやらオルレアンって欧州で生まれた調味料のようなんです。ですが、このオルレアン弁当には欧州と中国の調味料をアレンジしたモノを使っています。

土肥: どれどれ、試食。オルレアン味は……(もぐもぐ)うーん、微妙。

野澤: 説明が難しいですよね(汗)。

土肥: 醤油とゴマの味が強いというか……。ま、食文化はその土地に長く住まなければ理解できない部分がありますし。

●女性向けの「ミニ弁当」が売れない

野澤: 上海の人はオルレアン味を好む人が多くて、例えば、ハンバーガーにもオルレアン味があるんですよ。

土肥: ということは、弁当以外にも扱っている?

野澤: はい。おにぎりのオルレアン味もあります。

土肥: 全体的にボリュームのある商品が多いですね。弁当を持つと、ズシっとくる感じ。

周: 日本の場合、おかずとご飯を合わせて、380グラムくらい。400グラム前後のお弁当が多いのですが、こちらでは500グラムほどなければ、満足しない人が多いんですよね。中には500グラムでも少ないと感じる人がいて、「腹持ちがよくない! なんとかしてくれ!」と電話をかけてくるんですよ(苦笑)。

土肥: もっと、ごはんの量を増やせと?

周: 足りなければ、おにぎりを買ってくれればいいのですが(笑)。

土肥: ははは。

野澤: こちらでは女性の方もたくさん食べられます。女性向けに「ミニ弁当」を販売したことがあるのですが、全く売れませんでした(涙)。

 なぜ「ミニ弁当」を販売したかというと、こちらの人はごはんを残すケースが多いんですよね。「あれ? 量が多いのかな?」と思って、少ない量の弁当を販売しました。でも、全く売れなかったので、その理由を探るためにグループインタビューを行いました。すると、こちらの人はごはんを残すことに抵抗を感じないんですよね。日本の場合、ごはんを残すと「悪いなあ」という気持ちを感じる人が多いと思うのですが、こちらではとりあえず「ボリュームの多いモノを注文して、半分残してもOK」といった感じ。

土肥: なるほど。

●手巻きずしが売れなかった

野澤: お弁当の平均単価は13元、日本円にして200円ほど。安いですよね? なんとか高級なお弁当として20元(315円ほど)のモノを発売したことがあるのですが、なかなか売れません。コンビニを利用されるお客さんは「買ってすぐ食べたい」というニーズが強い。「買ってすぐ食べたいので、高級なモノでなくていい」という考えが強い。というわけで、なかなか高級なお弁当が定着しません。

土肥: でも、中国って物価が上がっているんですよね。そうすると、自然にお弁当の価格も上がっていきそうな。

野澤: 物価が上昇しているので、コンビニでも値上げをしている商品が多いですね。ただ、高級なお弁当は定着していません。

土肥: 難しいですねえ。商品開発のときに「これは絶対に売れる!」と思っていたのに、実際に売れなかったモノってありますか?

野澤: ここ数年、長い棒のような形をしたおにぎりがよく売れているんですよね。ということは、「日本でも販売している『手巻きずし』が売れるはず」と思ったんです。でも、全く売れませんでした。

土肥: (長い棒の形をしたおにぎりを食べる)うん、鶏肉をマヨネーズであえていて、おいしい。

野澤: でも、手巻きずしはダメでした。なぜか。ボリュームが少ないんですよね。

土肥: 確かに、この棒状のおにぎりは重い。先ほどの話と同じで、ボリュームが足りないのですね。

野澤: あと、手巻きずしってちょっと面倒ですよね。フィルムを開けて、のりを引き出して、そののりを下にしてごはんをコロンと巻かなければいけません。

土肥: 言われてみると、慣れていなければ難しいかも。

野澤: 日本で売れているモノをベースにして、こちらの人の口に合うようにアレンジをしているのですが、正解がまだ見つかりません。今後も「これはどうだろう? 現地の人の口に合うかな?」と試行錯誤を繰り返さなければいけません。

●ごめんなさい、書きました

土肥: (机の上にたくさんの商品が並んでいるのを見て)わっ、おにぎらずのような商品がこちらでも売っているのですね。

野澤: えっ、お、おにぎらず? おにぎらずって何ですか? (注:6年前に中国に赴任)

土肥: おにぎらずを知りませんか? 昨年、日本で流行ったんですよ。握らないおにぎりが。

野澤: へー、そうなんですね。日本で働いているときには、7年間おにぎりを担当していたのですが……はっ、この部分はカットで(汗)。

――ごめんなさい、書きました。

(終わり)

最終更新:8月3日(水)8時13分

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