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元朝日記者の長女、SNS中傷訴訟に勝訴

ニュースソクラ 8/3(水) 18:20配信

ツイッター投稿の男性に170万円支払い命令

 日本軍慰安婦問題に関する記事を書いた元朝日新聞記者・植村隆氏の当時17歳の高校生だった長女が、ツイッターに氏名や写真をさらされ、「反日捏造工作員の父親に育てられた」などと書かれ名誉を傷つけられたとして、投稿した男性に170万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で東京地裁は3日、男性に請求額全額の170万円の支払いを命じた。

 朝倉佳秀裁判長は判決理由で、プライバシーと肖像権の侵害を認め、「未成年の娘に対する人格攻撃をした。悪質で違法性が高い」と指摘した。

 日本の「表現の自由」を調査した国連特別報告者デービッド・ケイ氏は今年4月、暫定報告の「歴史教育と報道への妨害」の章で、ジャーナリストでただ一人、植村氏の名前を挙げ、長女への攻撃について「性暴力、殺害を含む脅迫までされた」と異例の言及で問題視した。世界も注視する裁判だったといえる。

 男性は匿名で投稿したが、植村氏の長女は、米ツイッター社に発信機器を特定できる「IPアドレス」などの開示を求める仮処分命令の申し立てを、ネットのプロバイダー(接続業者)のビッグローブ社に発信者の氏名、住所、メールアドレスなどの情報開示を求める訴訟をそれぞれ東京地裁に起こし、1年近くかけて投稿した男性の所在を突き止めた。ネット上で匿名の誹謗中傷が起きた場合、発信元の特定が困難なケースが多い中、損害賠償までこぎ着けた珍しいケースと言えそうだ。

 訴状などによると、問題の投稿が行われたのは2014年9月8日午前4時1分。男性は「@anubis717」のアカウント名を使い、「朝日新聞従軍慰安婦捏造の植村隆の娘、A高校2年植村○○が、高校生平和大使に選ばれた。詐欺師の祖母、反日韓国人の母親、反日捏造工作員の父親に育てられた超反日サラブレッド。将来必ず日本に仇なす存在になるだろう」と書き込んだ(高校名A、長女の名前○○は実名)。制服姿の長女の写真も合わせて掲載。長女は「名誉が傷つけられ、プライバシー権、肖像権が侵害された」と主張していた。

 一方、男性は当初、プロバイダーの問い合わせに対し「ツイッターの投稿は15年12月6日、アカウントごと削除した」「植村氏の娘であることはネット上でも広まっていた公知の事実」「写真は高校のホームページでも公開され、転載にすぎない」などと回答。名誉毀損やプライバシー侵害には当たらないとの考えを示していた。ところが、前回6月22日の第2回口頭弁論に初めて姿を見せた際、裁判官には全面的に謝罪する姿勢に転じた。このため、裁判所は和解を提案したが、長女は「二度と同じ思いをする人が出てほしくない」と判決を望んだという。

 ネット上での長女の個人情報流出を巡っては、今回のツイッター投稿と同時期の14年8月末~9月ごろ、長女が自身のツイッターのアカウント名が広まっていることに気づき、アカウントを削除。14年12月には、長女が札幌法務局に人権救済を申し立て、「News U.S.」「社会科ニュース速報」の2つの情報サイトに掲載された氏名、高校名、写真などの個人情報と、「この一族、血を絶やすべき」などの脅迫、侮辱的な書き込みの削除を求めた。同法務局は、名誉毀損とプライバシー侵害などを認め、プロバイダー2社に削除を要請。15年3月末、削除が完了した、と長女側に伝えた。

 だが、ツイッター投稿者に賠償を命じる判決も、法務局要請による個人情報削除も、「焼け石に水」と言わざるを得ない。8月3日時点で、「植村隆」と「長女の名前」のヤフー検索でヒットするのは約1200件。今回のツイッター投稿が、転載を繰り返され拡散したように、長女の氏名も、写真も、いまだにネット上にあふれている状態だ。

 15年2月2日には、父親が非常勤講師を務める北星学園大学(札幌)に、長女を名指しした殺害予告が届いた。同2月7、17両日には、西岡力氏と文藝春秋を訴えた名誉毀損訴訟で植村氏側の代理人を務める神原元・弁護士の神奈川県内の事務所に、長女の写真が、ポルノ写真と慰安婦問題を否定する500枚近いファクスが送りつけられる偽計業務妨害事件も起きた。

 判決後、現在19歳になった長女は、弁護団を通じてコメントを出した。2年前、ネットにあふれた匿名の誹謗中傷を「計り知れない『闇』のようなもの」「怖かった。友達が読んだらどう思うか、心配で不安だった」と振り返った。そしてこう結んだ。「利己的な欲求のために誰かを攻撃し、プライバシーをさらすようなことは絶対に許されない。こんな酷いことが行えてしまう社会はおかしい」「こうした攻撃にさらされる人がない社会になってほしい」。男性は判決当日に出廷せず、コメントも出さなかった。

ニュースソクラ編集部

最終更新:8/3(水) 19:24

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