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社説[次期学習指導要領]「のびのび」を引き出せ

沖縄タイムス 8月3日(水)19時0分配信

 ほぼ10年ごとに改定される学習指導要領が、2020年度から、大きく変わる。

 どんなに立派な理念やプランも、現実から遊離し、学校現場が置き去りにされるようでは、達成はおぼつかない。丁寧な説明と合意形成、学校現場の環境整備が必要だ。

 文部科学省は、新たな学習指導要領の全体像を示した「審議のまとめ」を中央教育審議会(中教審)の特別部会に示した。

 大きな柱は「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる新たな学習方法をすべての教科に取り入れること。学習内容を定める指導要領が授業方法に言及するのは異例である。 教員が教える一方通行的な授業ではなく、学び手が主体的、能動的に参加する学習方法なのだという。「主体的・対話的な学び」(中教審)によって児童生徒の思考力や判断力を育むという理念は評価できる。

 ただ、これだけではあまりにも抽象的で、授業の具体的なイメージが描けない。グループ学習や教員と児童生徒の対話的な授業実践は、決して目新しい試みではない。

 「『ゆとり教育』か『詰め込み教育』か、といった二項対立的な議論には戻らない」と馳浩文科相は強調するが、「ゆとり」でもない「詰め込み」でもないような第三の道とはどのようなものか。

 上から一律にこまごまと教育方法を指示するようでは、多様性や独自性が失われ、「主体的・対話的な学び」を実現することはできない。学校現場の創意工夫をどう引き出すかが重要である。

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 審議まとめ案は時代の大きな変化に対応するため「英語教育」や「プログラミング教育」の充実を前面に打ち出している。

 小学5年から英語を正式な教科にし、「聞く・話す」中心の外国語活動の開始を3年に前倒し。小中高でプログラミング教育を導入し、論理的に考える力を育む。

 高校では選挙権年齢の18歳以上への引き下げを受け、公民に必修科目の「公共」を新設する。

 小学校では、英語教育の強化に伴い授業時間数が増えることになるが、増加分をどうやって確保するか。新たな英語教育を担う教員の確保も課題だ。

 新しい学力観を掲げた1998年改定の指導要領は「ゆとり教育」といわれた。08年に改定された現行の指導要領は、学習内容も授業時間数も大幅に増やし、「脱ゆとり教育」と呼ばれたが、教員増がないまま実施され、現場には疲弊感が広がった。

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 アクティブ・ラーニングの導入にしても英語教育の強化にしても、現場の教員が十分な研修を受け、学習方法について自主的に研究し準備する機会が確保されなければ、新たな指導要領は絵に描いた餅になるだろう。

 新たな学習指導要領は小学校が2020年度、中学校が21年度、高校が22年度以降、実施される。指導要領によって現場をがんじがらめに縛っては逆効果である。のびのびとした空気と創意工夫あふれる授業。教育の成果はそのような現場から生まれる。

最終更新:8月3日(水)19時0分

沖縄タイムス