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社説[防衛白書]負担軽減策には触れず

沖縄タイムス 8月3日(水)19時0分配信

 2016年版防衛白書が2日の閣議で了承された。

 沖縄に米軍が駐留する理由を「地理的優位性」として、これまでより強調しているのが特徴だ。地理的優位性という「神話」となった考えを持ち出すのにあぜんとする。

 米本土やハワイ、グアムなどと比較して、沖縄は「朝鮮半島や台湾海峡といった潜在的紛争地域に近い位置にあると同時に、一定の距離がある」からという。米軍再編で在沖米海兵隊9千人がグアムに移転することをどう説明するのだろうか。グアム移転で抑止力は維持されるといいながら、沖縄の地理的優位性を強調するのは整合性が取れない。

 歴史をひもとけば海兵隊は本土から沖縄に移駐してきた。海兵隊撤退論が浮上するたびに引き留めていたのは日本政府だったこともさまざまな公文書で明らかだ。

 本土の自治体が受け入れないから「移転は進まない」と、中谷元・防衛相が就任以前に語ったことがある。森本敏元防衛相も「沖縄でなければならない地政学的、軍事的な理由はない」と明言し「政治的な理由」を挙げた。

 米国の知日派の重鎮ジョセフ・ナイ元国防次官補は「中国の弾道ミサイルの発達で在沖米軍基地の脆(ぜい)弱(じゃく)性は高まっている」と指摘している。

 沖縄の地理的優位性は破綻しているのである。

 白書は米軍普天間飛行場移設問題で「辺野古が唯一」と言っている。しかし、政府はその根拠を一度も示したことがない。衆参の沖縄選挙区で全員が辺野古移設反対を掲げ当選していることを政府は真剣に受け止めるべきだ。

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 5月に発覚した元米海兵隊員で軍属の男による女性暴行殺人事件の記述はあるものの、6万5千人(主催者発表)の県民大会と海兵隊撤退を求めたことには触れない。再発防止策として政府による「沖縄・地域安全パトロール隊」発足は書き込みながら、派遣された職員が東村高江のヘリパッド工事の警備に当たっていたことは記述していない。

 2012年に普天間に強行配備されたオスプレイについてもCH46ヘリと比較して優れていることを地図と表を付けて力説する。県内41市町村議会が反対の意見書を決議し、安倍晋三首相に建白書を提出したが、強行されたことは取り上げない。配備後も、人口密集地や学校などの上空を避けるとした日米合意や夜間の運用を制限した騒音防止協定に違反し安眠を妨害していることも無視している。

 白書は「不都合な真実」の記述を避けているのである。

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 集団的自衛権の行使を可能にする安保関連法が昨年9月に成立してから初めての防衛白書である。安倍首相は安保法制定で「日米同盟は強化され、抑止力が強まった」というが、白書は安保環境が厳しさを増す傾向に変わりはないとの認識を示している。

 尖閣諸島を巡り中国が繰り返す領海進入を念頭に与那国に沿岸監視部隊を配置。宮古島・石垣島にもミサイル部隊などの計画を進めている。

 沖縄の負担軽減策は示さず、過重負担を前提にした安保政策はもう限界だ。

最終更新:8月3日(水)19時0分

沖縄タイムス