ここから本文です

日本の大富豪(5)隠された高収益の秘密 キーエンス創業者 ── 滝崎武光

THE PAGE 8月5日(金)7時0分配信

 滝崎武光氏は、計測機器メーカーであるキーエンスの創業者です。この会社は一般にはそれほど名前を知られていませんが、世界でも希に見る超高収益企業です。社員の給料もズバ抜けて高く、平均年収は何と1700万円を超えています。滝崎氏は同社株式の約25%を保有しており、資産総額は約1兆円です。滝崎氏は、まさに日本を代表する大富豪の一人ですが、同社の社員もまたプチ・リッチ層といってよいでしょう。

レベルが違うキーエンスの提案営業

 同社の2016年3月期の売上高は2900億円、経常利益は1570億円でした。経常利益率は何と54%という驚異的な水準となっています。ここまで儲かっていれば社員に1700万円の給料を払えるのも当然かもしれません。同社が高収益を維持できる秘密は、顧客に対する徹底した営業活動です。

 キーエンスは製造業であるにもかかわらず、半数以上が営業職の社員で占められています。同社の営業マンは、定期的に顧客を訪問し、顧客が抱えている課題について聞き出します。顧客のニーズがハッキリした段階で、顧客の予算内でそれを解消できる提案を確実に実施します。

 提案営業は、どの会社も試みていますが、キーエンスはレベルが違います。営業というものを徹底的に科学し、1回目の訪問では何を説明し、2回目ではどんな質問をするのかまで、過去の成功事例をもとに営業マンの言動を事細かく定めています。うまくいくことが分かったやり方については、汎用化を徹底し、全社員が同じやり方を踏襲するわけです。極論を言うと、同社の営業は、営業マンの個性を徹底的に消す仕組みといってよいでしょう。

 こうした没個性的なやり方については批判もありますし、一部の社員は息苦しいと感じているようです。しかし年収1700万円という破格の待遇を社員に提供できる事業というのはそうそう簡単に実現できるものではありません。

 滝崎氏はメディア嫌いとして有名で、その肉声が伝えられることはほとんどありません。彼は26歳の時に起業したのですが、過去に2度ほど会社を倒産させたことがあるそうです。その時の苦い経験から、現在のビジネスモデルを作り上げたといわれていますが、詳しい経緯は謎に包まれています。滝崎氏は昨年、創業40年を機に代表権を返上し名誉会長に退きました。滝崎氏が一線を退いてしまったことで、高収益の秘密は、このまま明かされないことになるかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)

最終更新:8月5日(金)7時0分

THE PAGE