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地熱発電に使わない熱水から8000世帯分の電力

スマートジャパン 8月4日(木)7時25分配信

 温泉地で有名な鹿児島県の指宿市(いぶすきし)にある「山川(やまがわ)発電所」は、1995年に運転を開始した九州電力で2番目に大きい地熱発電所である。地下から湧き出る高温の蒸気を使って、発電能力は30MW(メガワット)に達する。

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 これまで蒸気と一緒に噴出する熱水は発電に利用しないまま地下に戻していた。新たに熱水を使って発電する「山川バイナリー発電所」を構内に建設して、再生可能エネルギーによる電力の供給量を増やす。8月中に工事に着手して、1年半後の2018年2月に運転を開始する予定だ。

 発電能力は5MWを想定している。年間の発電量は3000万kWh(キロワット時)程度になる見込みで、一般家庭の使用量(3600kWh)に換算して8000世帯分を上回る。指宿市の総世帯数(1万9000世帯)の4割をカバーできる発電量になる。九州電力が熱水を供給して、グループ会社の九電みらいエナジーが発電所を建設・運営する。

 九電みらいエナジーは同様の発電方式による「菅原バイナリー発電所」を大分県の九重町(ここのえまち)で2015年6月から運転中だ。発電能力は同じ5MWで、九重町が所有する地熱井(ちねつせい)から蒸気と熱水の供給を受けて発電に利用している。

 いずれのバイナリー発電所の電力も固定価格買取制度で売電する。発電能力が15MW未満の地熱発電の買取価格は1kWhあたり40円(税抜き)に設定されている。年間の売電収入は1カ所で12億円にのぼる見込みだ。固定価格買取制度による地熱発電の買取期間は太陽光や風力などよりも短い15年だが、それでも売電収入は累計で180億円に達する。

温泉地に地熱バイナリー発電が広がる

 通常の地熱発電では地下から湧き出る蒸気と熱水を分離して、高温の蒸気だけを使ってタービンを回転して発電する。分離後の熱水は地下に還元する仕組みになっている。これに対して「バイナリー方式」では分離後の熱水をさらに低温の蒸気と熱水に分離して、発電用の媒体を蒸発させる熱として利用する。蒸発した媒体でタービンを回転させて発電することができる。

 この媒体には沸点が36度のペンタンを使うケースが多い。発電後には媒体を冷やして液体に戻してから、再び蒸気と熱水を使って蒸発させる方法だ。熱を取り出すサイクルと媒体を循環させて電力を作るサイクルの2つを組み合わせることから、2進法を意味するバイナリーで呼ばれる。

 九州電力は2013年から2年間かけて、山川発電所の構内で小規模の地熱バイナリー発電設備を使って実証試験を実施した。発電能力は0.25MWで、九電みらいエナジーが新たに建設するバイナリー発電設備の20分の1の規模だ。この実証試験を通じて商用運転の可能性を検証した。

 九州は北海道や東北と並んで地熱資源が豊富にある。九州電力は大分県で3カ所、鹿児島県で2カ所の合わせて5カ所で大規模な地熱発電所を運転中だ。このうち規模が最大の「八丁原(はっちょうばる)発電所」(発電能力110MW)では、2006年に初めてバイナリー発電設備(2MW)を稼働させた。

 さらに「滝上(たきがみ)発電所」(27.5MW)でも、発電用の地熱を供給する出光グループがバイナリー発電所(5.1MW)の建設を進めている。運転開始は2017年3月を予定している。

 地熱バイナリー発電は新規に地熱井を掘削する必要がない。このため短期間に運転を開始できて、環境に対する影響も小さく抑えられる。天候による出力の変動がなく、安定した電力を供給できる点で有利だ。最近では温泉水を利用した小規模な地熱バイナリー発電が全国に広がり始めている。

最終更新:8月4日(木)7時25分

スマートジャパン