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システムの運用管理を外部委託するときにIT部門がやるべきこと

ITmedia エンタープライズ 8月4日(木)10時34分配信

 最近は、「持つIT」から「使うIT」が主流になってきましたが、運用管理については、自社で継続するケースと外部に委託するケースが引き続き存在します。前回は自社管理する際にIT部門がとるべき立ち位置や必要な取り組みを紹介しました。この大きな流れや考え方は変わりませんが、企業におけるIT部門の立ち位置や人的リソースによってできること、できないことが変わってきます。

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 特に人的リソースが不足する場合は、社外に業務を委託したり、場合によっては全業務や全システム基盤の管理を任せたりすることで、効率よくITインフラを管理していく手法がとられます。今回は社外を生かして効率を上げるアウトソースをする際の方針の決め方を説明していきます。

●ITシステムの設置場所が変わってきた

 ITシステムを設置する場所は、自社の建屋に設置する(オンプレミス形式)以外に、データセンターに預ける方法が一般的です。これに加えて、最近ではクラウドも特別な選択肢ではなくなってきました。

 オンプレミス形式の場合、運用管理を委託することはできますが、リモートアクセスで外部の委託先からアクセスできるようにするなど考慮すべき点が多く、あまり現実的ではありません。そのため外部委託する際には、ITインフラの設置場所としてデータセンターやクラウドなど、委託しやすい場所にシステムを設置していることが一つの前提となります。

 最近では、「持つIT」で運用しているオンプレミス型企業でも定期停電などへの対策の必要性から、新規システムを自社で設置するケースは減ってきています。本稿では、「ITインフラをデータセンターに預ける」または「データセンターのインフラを利用する」という前提で説明します。

 データセンターは、古くは「電算室」や「電算センター」とも呼ばれていました。そのサービスを提供する事業者は、当初こそITインフラとして利用するモノを預かる、いわゆる場所貸しのみを実施しているところが大半でした。ただし、場所貸しだけではビジネス上の差別化が難しく、また、利用するユーザー企業からしてもメリットが少ないので、事業者は預かり方や提供の仕方を工夫して、コスト効率や自由度を高めてきました。

 預かり方や利用方法の違いをまとめたものが次の図になります。

 事業者はさらにこれを発展させ、「手元に預かっている」という状況を付加価値にした運用管理などのサービスを組み合わせて提供するようになりました。こうした形態を「マネージドサービス」と呼び、このサービスを提供している事業者が「マネージドサービスプロバイダー」(Managed Service Provider=MSP)と呼ばれるようになりました。

 最近では大半のデータセンター事業者が、最低でもMSPとして付加価値サービスを提供するようになっています。ユーザー企業はこれを活用することで、IT部門だけではできなかったことを実現させていけます。では、MSPに「何を(どこまでを)」「どうやって」任せればよいのでしょうか。

●MSPへのアウトソースとは?

 ITシステムに関する業務をMSPにアウトソースすることで、複雑な基本設計や運用管理を任せ、効率的な運用を実現することが第一の目標です。ビジネスプロセス全体を委託するかどうかはともかく、Webサイトのホスティングなどまで含めれば、ほとんどのユーザー企業で少なからず何らかのアウトソーシングを実施しています。

 この方式のメリットは、「餅は餅屋に任せる」ということ。ユーザー企業は本業に集中できるという点に尽きます。

 MSPによってはITインフラの知識だけでなく、ユーザー企業の業界・業種に特化したベストプラクティスに精通している事業者もいますので、ITシステムの多くの領域でこれを効率よく適用することが可能です。例えば、小売業の販売管理に特化した業務サービスを合わせて提供する、ガソリンスタンドのPOS端末管理をネットワーク経由で提供する、といったものがあります。こういったMSPは該当する業務パッケージソフトを提供しているベンダーだったり、特定業種内のIT子会社が源流になっている会社だったりと背景はいろいろです。ITインフラだけを提供する大手とは少し異なったアプローチが特徴的でしょう。

 これらのサービスは、企業の経営層からすれば非常に重要かつ効果的なメリットです。副次的なメリットとしては、ITシステムの運用を共用環境にすることでコストを低くできることや、最新技術を比較的容易に実装していけるという点が挙げられます。ただし、この方式には注意点もあり、預ける範囲を広げるほど自社内でのIT管理能力の低下を招くというデメリットが生じてしまいます。

 アウトソースといっても、預ける先が元々は自社のIT部門で子会社になったといった実質的にはオンプレミス型という特殊な場合を除き、どうしても社外の人からの声はなかなか現場には届きません。その結果、自社スタッフによる改善策の企画や課題認識に遅れが出てしまい、エンドユーザー部門との交流も減少することで、使いにくい(効率の悪い)システム設計やITリテラシーの低下が発生する可能性が高まります。

 この課題を防止するには、IT部門としておおよその方向性と意思決定をする人員、できればCIOまたはCIO相当の人材を社内に確保し、少なくとも計画段階ではユーザー企業が主導し、かつ現場サイドと有効な交流を維持できるようにすることが必要です。

 ただし一朝一夕にはできませんので、経営層が上記のデメリットを経営リスクとして把握し、その上でコストとのバランスを十分にとれば、短期的にはアウトソース先に全て依存する方法も現実的に有効な選択肢でしょう。この方式であれば、データ管理についても、基本的にユーザー企業側では業務要件の洗い出しを行ったうえで、提供されるサービスのどれに当てはめるかを検討する、というものになります。

 業務要件を洗い出す方法は自社管理方式と同じですが、追加して自社の業務のどの範囲までをアウトソースするか、という線引きをする必要はあります。アウトソースの部分をあまりにも増やしてはコストが上がるだけですし、中途半端では結果的に自社管理の場合と変わらない手間になってしまうこともあります。

 また、アウトソース先となるマネージドサービスプロバイダーの特徴にも左右されるため、「どこまで」行うかという範囲を次の観点で整理し、委託先について「何が強みか」という点を合わせて比較検討することが必要です。

 「どのレベルまで」という点は、「どこまで標準化したいか」という内容に関連しますので、これは自社管理と同様です。最も重視すべきは採用する、ひいてはシステムとして一蓮托生となるMSPの選定です。

 中小企業なら得意な業種・業務分野に注目してMSPを選ぶとよいでしょう。これは、自社が所属する業界のベストプラクティスをMSPが把握しているだけでなく、将来のサービス強化や変更、撤退の際、自分たちが利用するサービスが残りやすいかどうか、という経営リスクの判断に使えます。

 また、物理的な場所についても、災害対策などを考慮して遠隔地を選ぶケースもありますが、あまりにも遠地だと日々の運用負担が大きくなってしまいます。社員の生活環境を考慮して現実的に利用できる地域、例えば、「公共交通機関で2時間以内」といった目安を決めて選ぶと、選定時間の大幅な節約につながりますので重要です。

 大企業では業種・業務知識はもとより、自社内である程度運用できる体制を保有していることが前提となります。そのためMSPを検討する場合は、提供可能なサービスの範囲とその「柔軟性」が最も重要になります。ここで言う「柔軟性」は、「サービスについて取捨選択ができる」「オプションが豊富」という点です。あまりにもカスタマイズしてしまうとむしろ効率が悪くなりますが、大企業に存在する多数のシステムをカバーするには、ある程度のオプションがなければ「帯に短し、たすきに長し」という委託内容になってしまいかねません。

 こういった点を考慮した上でMSPを選定後、サービスを取捨選択していきます。とはいえ、この方式の場合に取り得る構成はMSPが提供する構成に限られますので、いったん方針とMSPを決めてしまえば、あとはシステム構成に制約がある分、比較的短期に管理方式が確定していくでしょう。

 次回は、企業規模の観点からユーザー企業がどうMSPへアプローチしていくのかについて説明します。

●執筆者紹介・森本雅之

ファルコンストア・ジャパン株式会社 代表取締役社長。2005年入社。シニアストレージアーキテクトおよびテクニカル・ディレクターを経て2014年5月より現職。15年以上に渡って災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)をテーマに、データ保護の観点からストレージを中心としたシステム設計や導入、サービス企画に携わる。現在はSoftware-Defined Storage技術によるシステム環境の近代化をテーマに活動中。

最終更新:8月4日(木)10時34分

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