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せりふを早く言わないと出演カット!? 樋口監督が語る「シン・ゴジラ」制作秘話 PS VRコラボも

ITmedia ニュース 8月4日(木)11時49分配信

 東宝が7月29日に公開したシリーズ最新作「シン・ゴジラ」と、10月に発売を控えるソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(以下、SIEJA)の「PlayStation VR」(以下、PS VR)がコラボレーション。PS VRの発売日である10月13日に、シン・ゴジラを題材としたVRデモコンテンツを期間限定で無料配信する。

【PS VRでゴジラのVRコンテンツを体験する樋口監督の表情は?】

 8月3日にSIEJAが開催した特別先行体験会には、シン・ゴジラの樋口真嗣監督と佐藤善宏プロデューサーが登場。シン・ゴジラのVRコンテンツや映画の撮影秘話について語った。会場に集まった招待客の多くはまだ映画を見ていないという状況に、樋口監督は「何しに来たんだ! みたいな(笑)」と早速つっこみを入れ、冒頭から笑いを誘っていた。

●せりふを早く言わないとカットされる?

 シン・ゴジラには多くの役者とせりふが登場するが、決して退屈しないテンポの良さが魅力。樋口監督らは撮影現場でのエピソードを次のように語った。

 「普通の映画って(せりふに)感情があるじゃないですか、劇中は仕事や会議をしているといった場面が多くて専門用語も多い。でも役者さんは覚える能力がすごいんですよね。それは忘れられる能力が優れているからだと思うのです。朝から晩まで撮影した後に、庵野秀明総監督が『やっぱり引き合いがほしい』とか言いだしたときは、みんな控え室に走って台本を必死に見ながら『もう忘れちゃったよー』って(笑)」(樋口監督)

 「劇中、役者のせりふ量が非常に多いことに関しては、『はやくせりふをしゃべらないとカットされる』みたいなうわさが楽屋というか芸能界で流れるほどでした。誰もそんなことは言ってないはずなんですが、面白いので首を斜めに振っておいたんですけどね(笑)」(佐藤P)

 「大御所の役者さんがたくさんいらっしゃって、本来なら手厚く迎えなきゃいけない場面。でも忙しくてそんなことをやっていられない現場だった。長机を用意して自由に座ってくださいみたいな(笑) スケジュールをあわせるのも大変だし、あの人数を集めるのはもうやりたくないなというのが本音ですね」(佐藤P)

 「役者さんって自分が見落としていることにすごい神経質。『さっきの演技どうだった?』と聞かれて見てなかったとはいえない(笑) とにかく人数に関しては大変でした」(樋口監督)

●ゴジラが乗り移ったような感じ

 「ゴジラのCGで利用するモーションキャプチャーのモデルは、日本で作るものだから日本らしさを出したかった。そこで狂言のサンプルを見ていたら、人間じゃないものを体の動きだけで表現するものが多くて面白かった。そういった理由もあって、能楽師の野村萬斎さんに監督から直接連絡しました」(佐藤P)

 「事務所を通して(仕事を依頼する)というよりも、ゴジラのアドバイスが欲しかった。会うなり『小学生のときのあだ名はレッドキングでした』と言われましたけど(笑)」(樋口監督)

 「ゴジラには伝統芸能のポテンシャルみたいなものを入れ込んだ感じ。(萬斎さんには)新作の狂言だと思ってゴジラをやってくれとお願いしました。すると彼は『面が欲しい』と言ってきた。面がついていると、そこに意識を集中できるのだとか。今回のゴジラはしっぽが長いのも特徴なので、(装着できる)しっぽも作った。萬斎さんにゴジラが本当に乗り移ったような感じがしましたよ」(樋口監督)

●ゴジラのデザイン

 「東宝としては、ゴジラのデザインとして守って頂かなくてはいけない最低限のルールはありますが、それ以外はすべてお任せしました。監督から『人が入る前提のデザインをやめませんか』という提案をいただいて、それはぜひと」(佐藤P)

 「1954年の1作目っぽいデザインにしたいという思いがありました。初代の造形は素晴らしかった。その後に何作も続いているが、それらは基本的に“怪獣と戦うデザイン”になっていった。ある意味人間的というか。東京をめちゃめちゃにするための形状は今回のゴジラが一番近いかなと思った。腕が小さいんですが、腕が大きいと人間っぽく見えてしまいます」(樋口監督)

 「平成ゴジラシリーズのデザインはいったん忘れましょう、という意識がみんなの中にあった。そういった意味でも初代ゴジラは意識しました」(佐藤P)

●樋口監督「本当は見る側にいたい」

 シン・ゴジラ公開後、樋口監督は知人から飲み会の誘いが頻繁に来るようになったという。実際は飲まずにひたすらゴジラを語ることが多いのだとか。

 「俺らは制作側だし、50回以上見ているし、お客さんが映画を見たもの同士で語るのとは少しニュアンスの違いは感じる。本当は見る側にいたかった。今日のイベントに来た人でまだ見ていない人はぜひ映画館へ。見た人は(会場は品川)港南口を左にいくと、ゴジラが進化を遂げた場所があるよね」(樋口監督)

 「実際に映画の舞台となった場所へ行ったお客さんもいる。われわれが目指してきたものを追体験してくれている人がいてありがたい。その場を感じてくださったというのがうれしい。伝わったんだって」(佐藤P)

●シン・ゴジラのVRコンテンツについて

 東映とSIEJAが共同制作した「『シン・ゴジラ』スペシャルデモコンテンツ for PlayStation VR」は、実際の映画用に制作された3DCGモデルを用いて、ゴジラ史上最大となる全長118.5メートルのフルCGゴジラをVR空間で体感できるというもの。

 VRコンテンツに携わったSIEJAの秋山賢成氏は、「東宝さんにPS VRを体験して頂く機会があり、『これはすごいぞ、これを使えばゴジラのコンテンツを拡張できるのは』という感想を頂けた。映画用の資料をお借りして作ったので、ディテールにもかなりこだわっている」と制作のきっかけを解説しながら自信を見せた。

 PS VRについて樋口監督は、「大人になるにつれてゲームからは離れてしまったが、久しぶりに欲しいと思えるものがきた。この前もAmazonで追加予約できず負け続けている。というわけで、今回のイベントでは大人の力でPS VRの入手に近づけるかもなんて(笑)。この企画をいただいたときに、以前体験したものに比べてHMDがすごく進化していると感じた。HMDって邪魔臭さがあるけどそれがなくなっている。眼鏡の上からの装着感もよくなっていて本当に欲しい。私は映画監督だけど、ゲームはエンドユーザーなので……欲しい。これはいいわ」と、とにかく「欲しい」を連発していたのが印象的だった。

 ユーザーが視点を動かせるという映画にはないVRの魅力について、樋口監督は脅威に感じているとも言う。「映画は“見せる”ものだが、VRは(ユーザーが)見たいものを見られる。これを同じコンテンツでやられたらどうなるだろう。お互いに相乗効果もあるだろうが、実際はライバルのように感じており、今回のコラボは挑戦的だなと。映画を作る上で重要なのは、どういったアングルでお客さんに見てもらうか。寄ったり引いたり、複数の絵を続けて見せたり、印象を変えていく手法は重要。VRはそれが全くない。映画のように見えて映画ではない」(樋口監督)

 「(VRコンテンツで)ゴジラの表現に関してこだわったところは、シリーズ最大のゴジラサイズ。ゴジラとの距離感、臨場感、足音などいろんな部分をこだわった。映像表現も、迫力を出すためにこのイベントの前日まで調整をしていた。ぜひ体験してほしい」(秋山氏)

 「ゴジラ最大級の118メートルを体験できる。映画だとフレームを動かさなくては入りきらないが、ユーザーが動いてサイズを体感できるのが魅力。今回はデモなので物足りないかもしれないが、これで映画を作ったらどうなるんだろうと思ってしまう」(佐藤P)

 シン・ゴジラは、公開から4日で71万人を動員し、シリーズ累計動員数も1億人を突破、興行収入も10億円を記録。現在までに国内で計29作品が製作されている。

最終更新:8月4日(木)11時49分

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