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原発被災地、避難指示解除で移住者呼び込みに必死

ニュースソクラ 8月4日(木)16時0分配信

シングルマザーや若者などに照準

 2011年3月の東京電力福島第1原発事故による福島県沿岸(浜通り)地域の避難指示解除が相次いでいる。

 しかし、事故から5年以上に及ぶ長期避難で、住民の多くは避難先に定着し、人口減少と高齢化が全国平均を超えるスピードで進んでいる。各自治体は新たな移住者を積極的に受け入れ、地域復興の担い手を確保しようとあの手この手の優遇策を打ち出している。

 都会に住むシングルマザーなどの片親世帯を対象に移住者を呼び込もうとしているのが福島県川内村だ。阿武隈山地の南端に位置し、モリアオガエルの繁殖地として国の天然記念物に指定されている平伏沼(へぶすぬま)がある自然に恵まれた村だ。

 なんとか人口を増やそうと、2016年度から、移住時の引っ越し費や生活に欠かせない自動車購入費の一部として50万円を支給することを決めた。移住から3年後の時点で居住し続けていれば、さらに30万円を追加支給する。民間賃貸住宅の家賃も半額(上限2万円)を補助するほか、村内の企業に正社員として就職を斡旋するという。

 村の保育園の利用料はすでに無料化されており、村は「田舎ならではの面倒見の良さもあるので、都市部よりはるかに余裕のある暮らしができる」(担当者)と協調。7月末には体験ツアーを実施し、「田舎暮らしの魅力」をするPRするという。

 川内村は6月14日に旧居住制限区域だった荻・貝ノ坂地区の避難指示が解除され、村内の避難区域はすべて解消された。しかし、震災前には約3000人いた住民のうち村に戻った住民は1800人にとどまる。このうち約40%が65歳以上の高齢者で、村内にある商業施設や介護施設、復興関連事業を受注する地元企業はいずれも働き手の確保に苦心しているのが実情だ。

 そんな中、職員不足の介護施設で働くことを条件に、昨年からシングルマザーの移住受け入れを始めた島根県浜田市などの試みが村職員の目に留まった。同市によると、すでに10人弱の受け入れ実績があるという。川内村は近く、村の婦人会や行政区長会などにも呼びかけ、子育て支援のあり方などを検討する協議会を発足させる予定だ。

 移住者を対象にした住宅取得への補助を検討している自治体も多い。

 7月12日に大半の区域で避難指示が解除された南相馬市では、以前からボランティアや復興関連事業で市に居住する人たちの住宅不足が指摘されてきた。現在、原町区大木戸地区に68区画の宅地整備を進めており、市では「福島第1原発がある双葉郡などへの帰還をあきらめる若い世代を中心に売却したい」と話す。

 具体的には18歳以下の子どもがいる世帯が住宅を新築する場合、100万円の定住奨励金を支給することを決定済み。同市でも幼稚園・保育園の利用料が無料化されており、若い世代の移住を後押ししたいと考えている。同様の支援策は、2015年9月に避難指示が解除された楢葉町などでも検討されている。

 ただ、若い移住者を呼び込みたいのは全国の過疎地に共通した課題だ。地方移住を支援するNPO「ふるさと回帰センター」(本部・東京)は、全国の自治体が実施する移住者向けの支援策などを紹介しており、若い世代の住宅取得に補助金を支給する自治体などは福島県以外にも多くあるという。

 実際、川内村の移住体験ツアーへの応募状況は低調で、同村は7月中旬までだった応募の締め切り期間を25日まで延長した。特に浜通り地区では、移住の最大のネックとされる雇用の受け皿が確保できても、「原発への不安」という重しがのしかかっている。

 放射線量自体は周辺他県と同水準に下がっている自治体が多いものの、関係者からは「田舎暮らしの魅力をPRするだけでなく、特区の設定などで他県以上にお金が稼げるなどの利点がないと、目を向けてもらえない」(自治体首長)厳しい現実がある。

ニュースソクラ編集部

最終更新:8月4日(木)16時0分

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