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お荷物、東京商品取引所は救われるか

ニュースソクラ 8月4日(木)18時0分配信

大阪取引所とのシステム共同化が近くスタート

 日本取引所グループの大阪取引所は7月19日、デリバティブ(金融派生商品)を取引する新たなシステム「J-GATE」を稼働させた。より高速の取引に対応できるほか、取引時間も拡大する。「金先物」など同じくデリバティブを扱う東京商品取引所も大阪取引所の新システムに近く移行する。

 「新システムは大きなトラブルもなく、出足は順調」。大阪取引所の幹部は強調する。J-GATEは処理能力をアップさせたことが特長。注文を受けてから処理するまでの速度が100マイクロ(マイクロは100万分の1)秒と従来の20倍に上がる。人間の手作業で注文を出していた時代にはとても考えられない速度だが、専用コンピューターで売り買いするプロにとってマイクロレベルの速度は利益に直結するため重要。投資家の利便性を向上する。

 新システム導入よって取引時間が拡大することに対しても投資家の期待は高い。日中取引は15分前倒しし、午前8時45分開始に。夜間取引の終了は2時間半延長され、午前5時30分になった。日銀短観や国内総生産(GDP)などの日本の重要な経済指標はいずれも午前8時50分に公表される。これまで午前9時までの10分間は取引できなかったが、発表直後に取引できる意義は大きい。

 夜間取引の延長は米国の夕方の時間帯に公表される情報を受けた取引ができるように配慮したものだ。この結果、大阪取引所の取引時間は日中取引の午前8時45分~午後3時15分、夜間取引の午後4時半~翌日午前5時半となり、1日のうち、場が開いていない時間帯は4時間半のみになった。

 近年は米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)だけでなく、シンガポール取引所など世界各地の取引所と顧客(取引参加者)争奪戦が展開されており、新システム導入は競争力を高める狙いもある。大阪取引所は新システム導入に伴い、東証マザーズ指数先物を新規上場し、品ぞろえの充実も図った。

 ただ、世界の大手取引所の背中は遠い。2015年のデリバティブ取引ランキングによると、トップは米CMEで出来高(取引量)は35億3100万枚。2位インドNSEで30億3100万枚、3位ドイツ取引所で22億7200万枚と続き、日本取引所グループ(大阪取引所)は13位(3億6100万枚)にようやく顔を出す。

 東京商品取引所にいたっては35位(2400万枚)という体たらくだ。今回の取引時間延長にしても、24時間取引できるCMEには半歩近づいた程度。このため、新システム稼働から1週間ほど、全体に取引量は大きな増減はみられず、「静かで無難な滑り出し」(関係者)といったところだ。

 世界で35位と深刻な東京商品取引所は、金や原油などの「商品先物」を扱う、経済産業省所管の取引所だ。ちなみに大阪取引所は日経平均先物など「金融先物」を扱い、金融庁所管。世界では商品先物の扱いが伸びているのに、東京商品取引所は振るわず、エネルギー関連の商品を増やすことで生き残りを目指しているが、2016年3月期までの5年間は1年おきに3回の最終赤字を計上し、経産省から天下りした社長の経営能力に疑問を持つ向きもある。

 今回の取引システムを自前から大阪取引所に移行したことによるコスト削減や、新システムを生かして上場商品を増やすといったことも含め、2018年3月期は赤字体質を抜け出せるというが、どこまで効果があるかは、現時点では不透明だ。

 東京商品取引所が日本取引所グループと経営統合してワンストップの「総合取引所」となれば、世界の取引所に対する競争力や取引参加者の利便性が高まるとみられている。日本経済新聞も7月24日付朝刊でそのような社説を掲載したが、一向に進まないのが実情だ。安倍政権下で勢力を保つ経産省が天下り先を失いかねないため拒んでいる――というのが市場関係者の一致した見方だ。

 実は、2012年末に安倍政権に交代する直前の民主党政権時代に総合取引所構想がかなり前進したが、安倍政権発足で経産省が巻き返した経緯がある。監督官庁の対立などというレベルの話で日本の取引所の競争力が失われているとすれば、「アベノミクスの負の側面」の一つといえなくもないだろう。

ニュースソクラ編集部

最終更新:8月4日(木)18時0分

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