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社説[安倍新内閣と沖縄]強硬路線は自治の破壊

沖縄タイムス 8月4日(木)7時10分配信

 第3次安倍再改造内閣が3日、発足した。

 新基地建設を巡って政府が再び県を提訴する中、沖縄担当相には鶴保庸介元国土交通副大臣、防衛相には稲田朋美前政調会長が起用された。

 初入閣となる鶴保氏の最初の仕事は、今月末に迫る来年度予算の概算要求である。

 懸念されるのは、県との対立で政府・自民党内に沖縄を敵視するような見方があり、「予算に厳しく臨むべき」という声がもれていることだ。

 翁長雄志知事就任直後の2015年度予算で、基地を踏み絵に露骨な嫌がらせがあったことを思い出す。

 振興策は沖縄振興特別措置法に基づき国の責任で実施されるもので、基地受け入れの「見返り」ではない。

 鶴保氏には、現職の担当相だった島尻安伊子氏が参院選で大差で敗れた理由に謙虚に向き合ってもらいたい。 

 首相と政治信条が近い稲田氏の防衛相就任に、どんな狙いがあるのか。東村高江でヘリパッド工事が強行され、キャンプ・シュワブ陸上部の工事が近いとされる中、県内からはさらなる強硬路線を警戒する声が上がっている。

 先月末、全国知事会は沖縄の基地負担軽減を協議する機関の設置を決めた。沖縄県に米軍基地を押し込める安全保障政策のいびつさに向き合う姿勢を示すものだった。

 国も「辺野古が唯一」という思考停止状態から脱却し、県との話し合いを通して解決策を探るべきである。強硬路線は地方自治をないがしろにする最悪の選択だ。

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 今回の内閣改造では、麻生太郎財務相や菅義偉官房長官ら安倍晋三首相を支えてきた「盟友」は留任し、「安倍サポーター」が周りを固め、後は入閣待機組を充てるといった三重構造が維持された。

 注目すべきは閣内から去った石破茂前地方創生担当相の動向である。「自民党に多様な意見があることが大事だ」と語ったのは、2年後の総裁選をにらんでのことだろう。

 この動きは、安倍政権の下で続いてきた「総主流派体制」が崩れ、党内バランスに変化を起こす可能性がある。

 消費増税の再延期決定に象徴されるように、今の日本の政治は官邸主導があまりにも強い。自民党も官僚も官邸の顔色をうかがうだけで、チェック機能が働いているとはいえない。異論の言えない空気が続くのは、日本の政治にとって大きなマイナスである。

 安保法制や新基地建設などで民意との乖離(かいり)が指摘されるように安倍首相への支持は絶対的なものではない。党内での自由闊達(かったつ)な議論につながる動きをむしろ歓迎したい。

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 参院選の結果、自民党など改憲勢力は憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を確保し、安倍政権はこれまでにない盤石な足場を築いている。

 しかしだからといって、選挙戦でほとんど語らず、争点にもならなかった改憲に前のめりになるのは、有権者を軽んじるものである。

 安定政権だからこそ、むしろ最優先課題として取り組まなければならないのは、国民の関心が高く、生活に直結する雇用や社会保障の問題だ。

最終更新:8月4日(木)7時10分

沖縄タイムス