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フィクションと現実のせめぎ合いを描く。大友啓史監督が語る『秘密 THE TOP SECRET』

ぴあ映画生活 8月5日(金)16時55分配信

生田斗真が主演を務める大友啓史監督の新作『秘密 THE TOP SECRET』が間もなく公開になる。本作は死者の脳内の“記憶”を手がかりに迷宮事件の謎に挑む者たちを主人公にしたミステリー・エンタテインメントだが、脚本と監督を務めた大友啓史監督は、清水玲子の人気コミックを基に、観客が「ジェットコースターに乗っている」ような娯楽作品を描き、さらに“その先”の境地に挑んだ。

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映画は、MRIスキャナーを使って事件を解明する特殊脳内捜査チーム、通称“第九”室長の薪(生田)と新人捜査官の青木(岡田将生)らが、家族3人を殺して死刑になった露口(椎名桔平)の脳に潜入し、行方不明になった長女・絹子の行方を捜しだそうとするところから始まる。通常の捜査では決して出てこない人間の記憶によって次々に真実が発覚していく過程はスリリングだ。しかし、大友監督は「試行錯誤の連続だった」という脚本づくりの中で、単なるエンターテインメント以上の可能性をこの題材に見出したようだ。「人間の脳の中が見えるということは、他人に見せたくない秘密を暴くということだから、その人の本質に踏み込んでいくことになる。その人のルーツにある体験、人には語りたくない体験を描くわけだから、ドラマとして当然深い部分に入っていかざるを得ない」

繰り返し語られていることだが、カメラは人間の“心”を写すことができない。しかし、この設定を使えば、通常のミステリーやサスペンスでは描くことができない新たな領域に踏み込むことができる。一方でそれは、観客が安全圏の中で楽しめる娯楽映画の“定型”を踏み出す行為でもあった。「昨今の映画は、三幕構成(設定・対立・解決から構成される脚本の代表的な構成)など脚本の構成が定型化しているんですけど、『この映画で伝えるべきこと、描くべきものは何なのか?』を考えれば考えるほど、定型や方法論を気にしている場合ではなくなってきた。結果として他人には絶対に見せたくないものを覗き見る俗っぽさや、人間の業を描くことになるので、よくあるドラマとは一味違ったものを見せていくことになったんです」

その結果、劇中の登場人物も、それを観ている観客も、事件の謎を解きながら、同時に不確かな記憶や他人の秘密に向き合うことになる。「“第九”のメンバーは、自分の立っている場所がいかに脆いかわかっているし、行っている行為が正義ではないことをわかっていると思うんです。現代社会では、何が正義で、何が真実なのかわからなくなってきていますよね? これまでのように権威のある大新聞やテレビが間違いないことを言っているとは思えなくなって、どの視点に立つかで世界の見え方が変わるし、どの視点に立つのかを常に問われている。一方で、この映画では、脳の中に真実が残っていると思って警察が覗いてみると、人間の記憶は主観と感情に左右されていて、それが真実かどうかはわからない。逆に混乱の渦に巻き込まれていく。この構造こそがとても現代っぽいと思ったんですね。だから、この映画にはヒーローがいなくて迷宮があるだけ。登場人物がボロボロになり、人間の心の奥底で何が起こっているのかは決してわからないという無力感と不信感の中で、いかにして前向きに生きていくのかを発見するまでを描きたかったんです」

観客を魅了する“ジェットコースター的な娯楽”の面白さと、我々が生きる社会の複雑さを描こうとする試みのせめぎ合いが、本作の最大の魅力だ。「ドキュメンタリーをやってきた経験から言うと、世の中は頭の中で考えた通りにはいかなくて、伏線をはったサスペンスではなくて、おもいがけない“サプライズ”が次々に起こっていって、最終的にすべてがキレイにつながることなんてない。それを1本の映画やドラマの中に描こうとするせめぎ合いの中で、もしかしたら新しい物語が生まれてくるかもしれない。あくまでフィクションなんだけど、どうやって“フィクションではないように描くか?”という視点を取り入れることで、現実の世界とつながっていくと思うんですね。現実の延長線上にこの物語があることを考えると、僕はこの映画は『るろうに剣心』以上に観る人を選ばない映画になっていると思いますし、仮にストーリーを全部わかっていたとしても最後まで飽きずに観てもらえる映画になったと思います」

『秘密 THE TOP SECRET』
8月6日(土)全国ロードショー

最終更新:8月5日(金)16時55分

ぴあ映画生活

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。