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あなたは知っていますか? 空室率と家賃推移から考える東京不動産の本当の実力

ZUU online 8月5日(金)6時10分配信

日銀の黒田総裁による、金融の「異次元緩和」が2013年3月にスタートしてから丸3年が経過しました。しかし、目標であった「2%の消費者物価上昇率」は依然として達成されていません。また、2016年2月には日本初のマイナス金利政策が導入されました。その結果、銀行の普通預金の金利引き下げや、投資信託などの金融商品が運用難で販売停止に追い込まれるなど、個人の資産運用に影響が出始めています。

一方、不動産投資の人気はさらに高まっているようです。マイナス金利政策によって、住宅ローンだけでなく不動産投資ローンの金利も下落しており、借入を利用して投資をするには絶好の機会となっています。

都心の一部マンションなどでは価格が高騰し過ぎたため、利回り低下が懸念されていますが、東京ビジネス地区と呼ばれる渋谷区や中央区などのオフィスビル市況は好調で、東京の不動産の底力を改めて実感する状態が続いています。

そこで今回は、この1年間の東京ビジネス地区における最新オフィスビルの空室率や家賃推移を分析しながら、2020年に五輪開催が予定されている東京の不動産の現状に迫ってみたいと思います。

■1. 都心5区のオフィス平均空室率は2か月連続悪化、原因は新築ビル竣工が関係

オフィスビルのマーケット情報を定期的に発表している三鬼商事が、東京ビジネス地区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)内にある100坪以上の主要貸事務所ビル2,599棟(新築21棟、既存2,578棟)を対象に行った調査によると、2016年3月の同地区におけるオフィスの平均空室率は4.34%で、小幅ながら前月よりも0.30%上昇し、2カ月連続で悪化したことが分かりました。

その理由について、三鬼商事は「新宿区や港区に募集面積を残して竣工した新築ビルの影響」と分析しています。東京ビジネス地区全体の空室面積はこの1カ月で約7万9,200平方メートルも増加し、新築ビルの3月時点の空室率は29.04%と前月よりも6.23%と大きく上昇したことが分かりました。

実際、この分析結果を裏付けるようなデータも出ており、3月の地区別平均空室率は、新宿区が前月から1.03%上昇して4.86%となったほか、港区や千代田区でも上昇が確認できています。

新宿区、港区、千代田区で空室率が上昇し、既存、新築を含めた平均空室率も2カ月連続で悪化していることから、オフィスビル市況に悪化の兆しが見え始めているのではないかと心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、その心配は今のところ必要ないようです。前述した3月の空室率上昇の背景は、新築ビルの竣工が大きく関係していると考えられ、新築ビルで大型成約があった一方で、解約の動きは少なく、既存ビルの空室率も拡張移転などの成約で、小幅ながら前月よりも0.02%低下しています。

また、地区別平均空室率を見てみも、3月時点の中央区や渋谷区の空室率は低下しており、特に渋谷区では昨年6月から空室率は2%台とタイトな状況が続いています。2015年6月に実施された日本政策投資銀行による大企業を対象にした全国設備投資計画調査でも、好調な業績に支えられ、国内で成長分野への投資が広がるという見方が示されています。新築ビルへの移転や統合などに伴う大型成約が期待できることなどから、今後もオフィスビルの需要は高まると予測できます。

■2. 東京ビジネス地区の平均賃料は全地区で前月より上昇

次に、東京ビジネス地区における平均賃料はどうなっているのでしょうか。

上述の三鬼商事の資料を基に分析を行った結果、東京ビジネス地区の3月時点の平均賃料は1万7,973円で、前月より69円、前年同月比で778円上昇していることが分かりました。このうち、新築ビルの同平均賃料は2万9,142円で、前月より1,229円、前年同月比で2,982円と大幅な上昇が確認できました。

一方、既存ビルの同平均賃料は1万7,730円で、前月より63円の上昇、前年同月比で786円値上がりしています。

地区別平均賃料を前月比で見てみると、東京ビジネス地区すべてで値上がりしていることが分かりました。新宿区は189円上昇して1万5,295円、港区でも90円上昇して1万8,409円、渋谷区も78円アップの2万153円、中央区は75円アップして1万6,453円、千代田区は12円とわずかにアップして1万9,454円となりました。

地区別平均賃料を前年同月比で分析してみると、地区別平均空室率が2%台の渋谷区は、1,450円と大幅に上昇しており、千代田区や港区でも800円以上の上昇が確認できます。

■3. オフィス市場の供給過剰と対策

上述の分析結果から、2016年の東京オフィス市場は底堅い需要に支えられ、賃料も上昇傾向を継続していくものと予測できます。

ただし、順調に見えるオフィス市場ですが、気がかりな点もあります。東京23区では2015年以降に完成する延床面積1万平方メートル以上の大規模オフィスビルが100棟以上もあり(計画中のプロジェクトを含む)、2018年まで平均100万平方メートル超の供給ペースが続くと見られ、2019年は現在判明している計画だけで200万平方メートル超、総延床面積は943万平方メートルに達すると言われています。

2020年開催の東京五輪を前に、オフィス市場は供給のピークが到来し、供給過剰になる可能性が考えられますので、投資を行う場合は十分注意する必要があります。また、オフィス市場の過剰な供給を回避するためにも、今後は国内企業の誘致だけでなく、新たな需要が見込める外国企業をいかに日本市場に呼び込めるかが鍵となるでしょう。これはオフィス市場だけでなく、ホテルやマンション市場も同様です。

「東京五輪後に不動産需要が落ち込む」というマイナスの予測をどこまで払拭できるかが、今後、東京の不動産価格の動向に大きな影響を与えそうです。(提供:TATE-MAGA)

最終更新:8月5日(金)6時10分

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