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電力の未来を変える「リソースアグリゲータ」の実証開始

スマートジャパン 8月5日(金)9時25分配信

 NEC(日本電気)や東京電力グループなど9社が新たな実証事業を8月1日に開始した。テーマは「バーチャルパワープラント(仮想発電所)」の構築と「リソースアグリゲータ」の実現だ。地域に分散する電力源を1つの発電所のように運営するのと同時に、集約した電力を小売電気事業者に供給するビジネスモデルを作り上げていく。

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 このモデルを実現できれば、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入量を最大化できるうえに、小売電気事業者は必要とする電力を低コストで調達できるようになる。地域全体の電力の需給バランスを調整しやすくなって、送配電事業者のコスト削減にもつながる。発電・送配電・小売の3分野すべてにメリットをもたらす理想的なシステムとして期待がかかる。

 すでに欧米の先進国では取り組みが進んでいて、再生可能エネルギーを最大限に生かした電力の安定供給体制を実現している。実際にリソースアグリゲータの仕組みを構築するためにはICT(情報通信技術)が不可欠で、日本でもICTの大手と電力会社が組んで実用化に動き出した。

 企業や家庭などの需要家が生み出す電力は今後ますます拡大していく。太陽光発電のほかにも、家庭用の燃料電池(エネファーム)や工場などのコージェネレーション(熱電併給)システムが増え続ける。経済産業省によると、2030年には大規模な火力発電所の24基分に匹敵する電力を需要家側で作り出せるようになる見通しだ。

 その一方でHEMS(家庭向けエネルギーマネジメントシステム)やEV(電気自動車)が普及して、需要家側でも自律的に電力の需要と供給を調整できる。こうした節電・蓄電の機能を生かすと、火力発電所の13基分に相当する電力が調整可能になる。発電する電力と合わせれば3770万kW(キロワット)にのぼる。東京電力の管内で春や秋の需要が小さい時期の最大電力と同等の規模である。

 この火力発電所37基分の電力の中から、余剰分をリソースアグリゲータが集約して小売電気事業者に供給できるメリットは大きい。夏や冬の電力需要が増える時期には、供給力が不足する状況にもかかわらず、太陽光の電力が余るケースが発生してしまうのが現状だ。

 特に太陽光発電が急増している九州では、発電設備の出力を抑制する必要性が高まってきた。その結果、発電事業者は一時的に再生可能エネルギーの電力を作ることができなくなって、売電収入も減ってしまう。リソースアグリゲータの目的の1つは、再生可能エネルギーの出力抑制を可能な限り少なくすることにある。

5万kW以上の電力を制御できる仕組み

 NECや東京電力などが取り組む実証プロジェクトでは、リソースアグリゲータに求められる各種のサービスの効果を検証していく。発電事業者に向けて余剰電力の蓄電サービスや出力抑制の補償サービス、需要家にはエネルギーマネジメントや蓄電池のレンタルサービスが考えられる。

 実証プロジェクトに参画した各社は2015年10月から2016年2月にかけて、栃木県の日光市で実際の設備を使ってリソースアグリゲータの事業性を検証した。市内にある太陽光発電設備と工場のコージェネレーションシステム、さらに家庭や事業所に設置した蓄電池を情報通信ネットワークで制御する試みである。

 新たに取り組む実証プロジェクトでは日光市の検証結果をもとに、1000kW級の電力を調整できるシステムを構築する予定だ。家庭や企業の蓄電池と連携した需給調整をはじめ、リソースアグリゲータから需要家に節電を要請するデマンドレスポンスも実施する。

 リソースアグリゲータが提供するサービスを実現するためには、ICT(情報通信技術)に加えて電力分野のさまざまな技術を組み合わせる必要がある。実証プロジェクトを通じて全体のシステムを改善しながら、新たな技術の開発や規格・制度づくりにも取り組んでいく。

 経済産業省は2016年度から「バーチャルパワープラント構築事業」に乗り出した。総額29億5000万円の予算で事業者を公募して、7月29日に7つのプロジェクトを採択して補助金の交付を決めた。各プロジェクトは2020年度までの5年間にわたって実施する計画だ。バーチャルパワープラントを構築して5万kW以上の電力を制御できる技術の確立を目指す。

最終更新:8月5日(金)9時25分

スマートジャパン