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上司から「OK」をもらう人、「NO」を突きつけられる人――どのような違いがあるのか

ITmedia ビジネスオンライン 8月5日(金)6時10分配信

 どうして仕事が、やり直し、差し戻しになってしまうのか。それを防ぐために重要な、準備段階での「結果を出す“下ごしらえ”」について、たくさんの取材経験から考えてみる連載第3回。

【イメージを共有することがポイント!】

 第1回、第2回では、それぞれ「目的」「ターゲット」というキーワードを掲げたが、第3回のキーワードは「アウトプットイメージ」だ。

 上司であれ、取引先であれ、お願いされた仕事の「アウトプット」について、そのイメージを確認しておく、ということである。どのような仕事の全体像なのか、しっかり理解しておくことだ。

 そんなことは当たり前に思えるが、意外にこれができていなかったりするのである。例えば取材で耳にしたのは、こんな例。上司から、ある商品カテゴリーの直近の売り上げ推移について、まとめてグラフ化を命じられた。

 頼まれた本人が頭の中に描いた「グラフ」は、棒グラフ。直近といえば3年。商品カテゴリーの種類ごとに積み上げ式でビジュアル化することを考えた。エクセルで緻密(ちみつ)に作成をしなければ、とイメージした。

 ところが上司が求めていたのは、折れ線グラフ。過去10年にさかのぼって、商品がどのような推移をしたか、ざっと見られるもの。となれば、その商品を扱う業界全体の動きとの違いも一緒に見たい。丁寧なものを作る必要はなく、ざっくりとした手書き的なものでもよい、とイメージした。

 同じ「ある商品カテゴリーの直近の売り上げ推移についてのまとめグラフ」も、仕事を発注する側と、仕事を受け取る側で、そのイメージがまるで違ってしまっていたのである。

 これでは、実際にグラフを作って持っていったとき、「うーん、ちょっとイメージが違うんだよ」と上司に言われ、差し戻しをくらってしまっても仕方がない。実際、そういうことが起きてしまったのだ。

●「アウトプットイメージ」の共有が大切

 では、やり直し、差し戻しの仕事にしないためには、何が必要だったのか。これが、「アウトプットイメージ」の共有なのである。仕事の発注者が、どんなアウトプットイメージを描いているのか、しっかり確認しておかなければいけないのだ。

 自分の頭の中にアウトプットのイメージができたとしても、それが発注者が持っているイメージと一致するとは限らない、ということを強く認識しておく必要があるのである。では、アウトプットイメージを一致させるために有効な方法とは何か。ひとつは、「ビジュアル」にすることだ。

 大手企業の経営企画部門で仕事をするある社員が、取材でこんな話をしていた。彼は仕事柄、書類を作ることがとても多いのだが、発注者から仕事を委ねられたとき、アウトプットイメージを必ずビジュアルで確認していたのである。

 それこそ、先に書いた「棒グラフか、折れ線グラフか」も、口頭で「グラフ」と言ってしまうとお互いの頭の中は別々のグラフになってしまいかねないが、手書きでもかまわないのでビジュアルにしてみれば、一目瞭然になる。

 打ち合わせのときに、ささっとメモ用紙にラフスケッチを描いて、「こんな感じでいいですか?」と確認すれば、イメージの共有ができたはずなのだ。

 だから、この社員は常にビジュアルでアウトプットイメージを確認していた。スライドを作るときも、人にはそれぞれ好みがある。文字の大きさ、デザインの雰囲気なども、なんとなくイメージで持っているものだ。

 それも、ラフスケッチの形で確認する。資料をアウトプットにするのであれば、ラフデザインを紙に書いてみる。図やグラフ、表などを下記ながらやりとりしていく中で、文字の大きさや書体なども確認する。「ざっとこんな感じですよね」とレイアウトイメージを指し示せば、「いや違うんだよ、こんな感じで」という具体的な指示も受けられる。

 ちょっと手間を加えるだけで、アウトプットイメージの共有レベルは大きく高まるのである。実はそもそも、イメージの共有は簡単ではない。ビジュアルを使うことで「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができるわけだ。

 こうしたイメージ共有のために、この社員は大き目のノートで、しかも無地のものをメモ用紙として使っていた。仕事を受ける場合には、ただ話を聞くだけでなく、ビジュアルで確認するためである。

●必ずサンプルをもらう

 アウトプットイメージを共有する、もうひとつの方法を教わったのは、経営コンサルティング会社の経営者からだった。

 コンサルティング会社も、大量の資料が行き交う職場だが、それだけにイメージ共有は極めて重要になる。多忙な中で、イメージと違うものが上がってきてしまったら、ロスは発注者としても、仕事の受け手としても大きい。

 そこで彼が強く意識していたのが、「サンプル」だった。仕事を受ける側のときには、発注者から必ずサンプルをもらうようにしていた。サンプルとは、過去にあった似たようなアウトプットだ。実物に近いものや、似た雰囲気のもの、リアルに参考になるもの、見本になるものを一緒に見るのである。そうすることで、アウトプットイメージがそろえやすくなるのだ。

 書類を依頼されたとき、過去に同じようなものがあったとすれば、一目瞭然である。A4サイズの紙にまとめる、と一口に言っても、びっしりと書くものなのか、要点を箇条書きにするものなのか、まったく異なる。しかしこれも、サンプルを共有すれば、ズレることはない。

 だが、うまくサンプルが見つかればいいが、必ずしもそういうわけではない場合もある。発注者がサンプルを持っていないこともあるし、自分で過去のサンプルを思い浮かべられない場合もある。

 そこで彼は何をしたか。これは、さすが経営者に登り詰めた人物はやることが違う、と感じたのだが、例えば、組織を変わったときなど、その組織にある過去の書類のすべてに目を通した、というのである。

 そうすることで、その組織では過去にどんな書類がやりとりされていたのかが理解できる。また、書類にどんな傾向があるのかも分かる。何か仕事をお願いされたとき、「ああ、あの書類の感じかな」ということも理解できるということだ。

 それこそ多くのケースで、組織では過去に似たようなものを作っているものだ、と彼は語っていた。だから、過去の書類をすべてチェックすることには意味がある。しかも、書類に目を通すことで組織のことがよく理解できるのである。

 取引先から提出物を求められるときにも、「もし何か見本のようなものがあれば」「類似物や参考にできるものはありますか」などと、何かサンプルになるものはないか必ず確認していたという。

 取引先とて、ピント外れなものを出してもらっても困るだけである。できるだけ協力してくれたという。そうすることで、相手が求めるものを確実に提出することができたのである。

●アウトプットの全体像を意識しておくこと

 こうしてアウトプットイメージの共有を図っていく場は、いわゆる打ち合わせだ。このとき、注意しなければいけないことがある、と語っていたのは、ある広告クリエイターだった。それは、ディテールにとらわれて過ぎてはいけない、ということだ。

 超多忙な彼は、デスクの上でアイデアを考えるような時間はない。では、どこでアイデアを考えているのかといえば、打ち合わせの場だった。しかも、クリエイター同士の打ち合わせではない。クライアントとの打ち合わせなのだ。打ち合わせこそが、最もクリエイティブな時間になっていたというのである。

 アイデアというと、ウンウンうなってひねり出すようなイメージがあるが、あるアーティストへの取材で目からウロコの話を聞かせてもらったことがある。芸術作品は、1人で考えて生まれるのではない、というのだ。スタッフといろんな議論を戦わせる中で、ポンと出てくるというのである。

 脳の奥底に潜んでいる情報は、自分で絞りだそうと思っても出てくるものではない。ところが、誰かとコミュニケーションをしていると、何かの一言がトリガーになって、出てくることがある。これがアイデアになるのだ。

 クリエイターの場合も同じ。打ち合わせは、ディスカッションをしながらアイデアを出す場になっていた。そしてこれが、文字通りアウトプットイメージを共有することになるのである。

 このとき、ついついやってしまうのが、細かなところに目が向かってしまうことだと彼は語っていた。いわゆるディテールに入っていってしまう。そうすると、大きな枠組みがブレていってしまうことが多いのだ。それこそ細かいところが気になり始める。しかし、この時点で重要なことは、アウトラインをしっかり捉えること。アウトプットの全体像を常に意識しておくことなのだ、と。

●アウトプットイメージを「考える」

 同じように書類づくりでも、企画づくりでも、取引先への提案書づくりでも、まずは大きな枠組みを捉えること。大きな枠組みを意識し、それを一致させてから仕事を始める。ディテールはそれから、と考えなければいけない。注意をしなければならない点だ。

 そしてアウトプットイメージの共有の重要性が、実はもうひとつある。それは、発注者にアウトプットイメージがない場合があることだ。

 これは危険だ。受け手に非がなくても、「こんなはずではない」ということがこれでは起こりかねない。なぜなら、元々のイメージがないのだから。だから、その場での確認が必要になる。こういう場合は、一緒にアウトプットイメージを「考える」ことがあってもいい。

(上阪徹)

最終更新:8月5日(金)6時10分

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