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名優ダグラスと若きキューブリックが組んだ野心的反戦映画『突撃』(1957年)【名画プレイバック】

シネマトゥデイ 8月5日(金)22時16分配信

 第一次世界大戦の独仏戦の最前線を描いた『突撃(原題:Paths of Glory)』は、邦題からドンパチがメインの戦争映画を想像するかもしれない。確かに、前半の塹壕戦での無謀な突撃は熾烈を極めるが、後半は一転して、形ばかりの軍法会議を通して戦争の矛盾と理不尽さを浮き彫りにする。当時、若手監督として頭角を現し始めていたスタンリー・キューブリックの企画を、大スター、カーク・ダグラスの強力な後押しにより実現した気骨のある秀作だ。(今祥枝)

 1915年9月、塹壕戦が膠着(こうちゃく)状態にある西部戦線。フランス軍のブルラール大将(アドルフ・マンジュー)は、ドイツ軍の要害堅個な陣地、通称「アリ塚」を占拠せよと、ミロー将軍(ジョージ・マクレディ)の師団に攻撃を命じる。ミローの部下でフランス軍701歩兵連隊の隊長ダックス大佐(カーク・ダグラス)は、兵士たちの疲労はピークにあり士気も低く、無謀な攻撃は戦死者を出すだけだと抗議するが一蹴される。かくして勝ち目のない作戦は決行となり、ダックスは連隊の先頭に立ち進軍するが、雨あられのように降り注ぐ砲弾と機銃掃射で敗退を余儀なくされる。翌日、ミローは命令不服従だとして生き延びた兵士たちを逮捕監禁し、ダックスに第一波の各中隊から“臆病者”を代表する兵士3人を選び、軍法会議にかけると言い放つ。司令部と自らの判断ミスを兵士たちの責任にすり替えようとするミローに激怒するダックスは、本職が刑事訴訟の弁護士であることから、軍法会議で3人の部下を弁護することに。だが、ダックスの奮闘も虚しく、形ばかりの軍夫会議で3人は無情にも有罪判決を受ける……。

 冒頭からして、戦争がどれほど理不尽なものであるのかをよく伝える脚本が素晴らしい。命令を受けたダックスが、どれだけ死傷者が出ると思うのかと問うと、「5%が味方の砲火で死ぬ。10%が無人地帯を、20%が鉄条網を通り抜け、最悪の仕事の後に残るのは65%。その25%が『アリ塚』を奪取する」と答えるミロー。「半分以上が殺されるというんですね」 と憤るダックスが、部下を見捨てることはできないと言って、指揮を執るべく最前線へ戻っていく。そもそも、この戦線の後方にある司令部は貴族の豪邸なのが皮肉だ。デコラティブで洗練された室内の美術にはキューブリックらしいディテールへのこだわりがうかがえるが、疲弊しきった兵士たちが泥まみれになってひしめいている塹壕との対比が凄まじい。優雅に食事をしながら、膠着状態を打破するためには名もなき市民、労働者で構成される下っ端の兵士が何人犠牲になろうが、彼らにとっては取るに足らないことを端的に伝えている。

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最終更新:8月5日(金)22時16分

シネマトゥデイ