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「データローミング=怖い」を解消したい――KDDIに聞く「世界データ定額」の狙い

ITmedia Mobile 8月5日(金)18時31分配信

 「この夏、auは大きく、変わります」――。KDDIが打ち出したキャッチフレーズ通り、auでは海外でのデータ通信サービスを大きく進化させ、「世界データ定額」の提供を7月22日に開始した。

【「海外ダブル定額」と「世界データ定額」の違い】

 世界データ定額の料金は24時間980円で、「海外ダブル定額」の1日1980円~2980円よりも大幅に安くなっている。また、海外ダブル定額では日本時間の0時~23時59分を1日としてカウントしていたが、世界データ定額では「利用開始」ボタンを押してから24時間に変更されたので、課金の期間が分かりやすくなった。

 海外ダブル定額では24.4MBまで1日1980円、それ以上はどれだけ使っても1日2980円だったが、世界データ定額で使えるデータ容量は、国内のデータ定額プランから賄う形になった。例えば7GBプランなら、7GBの中から国内と海外の通信を分け合う。

 世界データ定額ではどのような経緯で提供されることになったのか。プロジェクトを進めてきた、商品・CS統括本部 商品企画部 国際モバイル企画G グループリーダーの石丸亜希氏、商品・CS統括本部 商品企画部 国際モバイル企画G マネージャーの藤井洋平氏、コンシューマーマーケティング本部 コンシューマーマーケティング2部 マネージャーの白井大介氏に、サービスの詳細を聞いた。

●「利用開始」ボタンを押さないと、データ通信が発生しない

――(聞き手、らいら) まず「世界データ定額」とはどんなサービスでしょうか。

藤井氏 24時間980円で、国内で利用するデータ定額プランの容量を、海外でも同じように使えるサービスです。今まではデータローミング設定をオンにしてしまったことで、勝手にデータ通信が走り高額請求が発生する怖さがあったと思います。世界データ定額ではその怖さをなくすため、お客さまが必ず自分で「利用開始」ボタンを押さないと、データ通信が発生しない作りにしました。

―― サービスを立ち上げた背景を教えてください。

石丸氏 法人は会社用ケータイがスマホに変わったことで、データローミングの利用率は増加していますが、一方で個人での利用が減少しており「ユーザーのローミング離れ」が甚だしい状況です。

 海外に行く個人のauユーザーのうち、データローミングの利用率は3割程度。ホテルのWi-Fiやレンタルルーターを利用するお客さまが多いのです。スマホでマップを見たり、お店を探したりするのも旅の醍醐味(だいごみ)だと思いますが、分かりづらい料金プランや高額請求の不安があると、旅を楽しめないよね、というところから始まりました。

白井氏 最近弊社は「ライフデザイン企業」と称しているように、国内外で同じネット体験が提供できれば、お客さまにとって便利だという思いもあります。

―― 世界データ定額を利用するための詳しい使い方を教えてください。

石丸氏 サービスを利用する方法は、Webブラウザとアプリの2通りがあります。

藤井氏 国内にいるうちに「世界データ定額」アプリをダウンロードして、画面の指示に従って初期設定を済ませておけば、簡単にサービスを使えるようになります。アプリで旅行先を検索すれば「世界データ定額」「海外ダブル定額」「従量制」のうち、どのプランが対応しているかも確認できます。サービス開始当初は、日本人の海外渡航先約7割を占める海外32の国と地域をカバーします。

―― 日本で初期設定と下調べをしておくわけですね。旅行先に到着したら、(テスト端末で実際にやってみる)アプリを立ち上げて利用開始ボタンをタップ。ポップアップの「利用開始しますか?」の画面で「はい」を選択すると……おお、終了時間までのカウントダウンが始まりました。ここからローミング料金が発生すると。

藤井氏 はい、日本であらかじめデータチャージオプションにさえ入っていれば、全世界、世界データ定額未対応の地域でも、端末の設定でデータローミングをオンにしていても、完全にノーリスクです。

石丸氏 従量制のみの対応地域だったとしても、高額になる可能性があるという注意が画面でアナウンスされます。今後はデータローミングオンがデフォルトの状態で、端末を出荷するくらいでもいいかもしれませんね。3Gを使うフィーチャーフォンやiPhone 4sはサービス対象外となります。

●海外での利用が「怖い」という認識がある

―― 世界データ定額は「24時間980円」という安さだけでなく、データローミングによる高額請求の解消が注目ポイントのようですが、やはり高額請求によるユーザーからの不満の声が多かったのでしょうか。

石丸氏 というより、「海外でデータ通信を“使えなくする”にはどうしたらいいですか」という声の方が多く寄せられていました。それだけ海外での利用が「怖い」という認識がお客さまの中にある。あとは1日最大2980円の海外ダブル定額が、「思ったより高かった」というご意見もありました。

藤井氏 ユーザー調査をしていると、「使い方が分かりにくい。何回もショップに通って聞くけれど、心配で心配でしょうがない」という声があるのです。

―― 先日、ソフトバンクのアメリカ放題の定額キャンペーンが突然終わり、混乱が起きました(その後、キャンペーンは再開した)。ああいったニュースを見ると、不安になる人もいるでしょうね。

石丸氏 地元に帰ったとき、まったくスマホのリテラシーがない人の間でも、「データローミングは絶対オフにしなきゃいけないよ!」とそこだけ妙に伝達されていました。「何も分からないけど、怖いよね」というネガティブな状態が起きてしまっています。

●レンタルルーターにはない利点は?

―― 私も海外旅行を予定する友達に相談されたとき、「よく分からないならデータローミングをオフにして、ルーターを借りる方が楽だよ」と返事をすることがよくあります。最近はレンタルルーターの他にも、プリペイドSIMなどの選択肢も増えてきました。それらとの差別化はどうお考えですか?

藤井氏 レンタルルーターは借りて返す手間がありますし、SIMは差し替える必要があります。詳しい方はいいのですが、SIMの差し替えは一般的にはまだハードルが高い。その中で、ワンタッチでそのまま使える点は大きな強みだと思います。

石丸氏 グループでの女子旅で聞いた話では、代表者がルーターを借りると、「お金を割らないといけないかな? ワリカンならいくら?」と、出発前に気持ちに負担が生まれるのだそうです。同じ人が手続きするにしろ、持ち回りにするにしろ毎回大変だし、なんとなく心にもやもやができるという話はありました。

―― 確かに! 私も友達と海外旅行に行くたびに同じ経験をします(笑)。レンタルルーターは友達とシェアできる値ごろさはありますが、24時間980円なら割り切ってそれぞれが接続する形でもよさそうですね。

石丸氏 現地合流のパターンだと、なおさらややこしいですしね。

藤井氏 レンタルルーターだと移動中にも料金が発生するムダがありますよね。米国や欧州など、移動距離が長いと損した気分になります。その点、世界データ定額なら、滞在中の好きな時間から接続を開始できるのもメリットです。

●24時間980円の価格を実現できた理由

―― 世界データ定額が発表される前は、「海外ダブル定額」が24.4MBまで1980円/日、それ以上は2980円/日で提供されていました(現在も162の国と地域をカバー)。データ容量の制限があるとはいえ、今回半額以下の安さを実現できたのはなぜですか?

白井氏 もともと「ローミング料金が高い」と言われていますが、それは海外のネットワークを使っているからです。お客さまが使えば使うほど、海外キャリアのネットワークコストが上がり、弊社は利益率が低くなる。それが今までのデータローミングの構造でしたが、本来であればたくさん使っていただけるほど利益を生む構造にしなければいけません。そこで交渉部隊が現地の通信事業者と交渉し努力した結果、コストを削減できました。

石丸氏 今までは使用量に反比例して価格が下がるビジネスモデルだったので、高いから使わない→ユーザーが減る→価格が上がるという悪循環でした。どこかでこのループをバチッと切らなければいけないと思い、現地の通信事業者に「たくさん使うから、まず安くして」と交渉しました。「ニワトリが先か、卵が先か」論になりますが、ある程度リスクを背負ってお客さまを集めるという気持ちのもと、価格を安くするところから始めました。

白井氏 ユーザーに聞き取りをして、値ごろ感のある価格で、事業者とそれぞれ交渉をしていきました。

石丸氏 また対象国のキャリアなら、どこを使ってもOKというルールにしました。当然キャリアによって価格の違いがありますが、お客さまに「キャリアによって価格が変わりますよ」と言った途端に難しくなってしまうので、それは絶対にやりたくなかったですね。

―― サービスを実現するには海外のそれぞれの事業者と全て交渉したわけですよね。時間も手間もかかりそうですが、プロジェクト自体が走り出したのはいつごろですか?

石丸氏 1年半くらい前です。価格をかなり下げることに対しては、社内でも「本当にできるの?」と半信半疑の声があって難しかったですね。こちらも利益が確保できると断言できず、ある種賭けだったので。いったん走りだすと早かったのですが、社内でのせめぎあいの時間がけっこう長かったですね。

●海外と国内データ通信のひも付けが大変だった

―― 実現にあたって大変だった点はありますか?

藤井氏 いろいろありすぎて……(苦笑)。

白井氏 技術的に新しいことをやっているので、技術陣とコミュニケーションを取るのが大変でした。本当にサービス内容が実現できるのか、1つ1つ確かめていきました。

藤井氏 自社内のテクノロジーで賄おうという話はあったのですが、今回は外部のソリューションを含めもっと広い範囲で連携して成り立たせています。例えばデータ容量をつかさどるシステムと外部システム連携をどうするかなど、技術面は非常に苦労しました。

石丸氏 今までのやり方を続ける文化が通信キャリアにはあるので、新しい要素を入れることが当初社内で抵抗がありました。心配の声もありましたが、変わらなければいけないのであえてチャレンジしました。

白井氏 例えばauの料金プランと海外の中継事業者の設備をひも付ける仕組みは新しい試みです。国際ローミングで消費したデータ容量を、auのデータチャージオプションからほぼリアルタイムで減らしていく作業です。

石丸氏 あとは、なんといってもアプリのデザインです。分かりやすいUIにとことんこだわりました。本当は外部にお願いして作ってもらうほうが早いし楽なのですが、時間がないのに別にデザイナーを立てて、一から作ったのでかなり大変でした。

 以前からある海外データローミング用のアプリ「GLOBAL PASSPORT」も好きではありますが、見た目がビジネス用途っぽいんですよね。「ビジネス・男性・40代!」みたいな属性は、「みんなが気軽に使える」テーマとはかけ離れている。先ほど話にも出た、グループ旅行でルーターを借りている人や、韓流スターを韓国まで追っかけているような奥様方にまで使ってほしいです。

 そのためアプリは少ないステップで迷わず使えるようにデザインしています。例えばOS側のローミング設定の導線も、非常に分かりやすく説明しています。またトリップアドバイザーと連携し、アプリからホテルの情報に飛べるなど、情報収集面でも役立ちます。

―― 今後、対応地域はどの程度カバーされる予定でしょうか。サービス開始時点では、日本人の海外渡航先の約7割に対応していますが、例えば日本人の渡航が多い中国は未対応です。一方でバチカンは対応していたり……。

白井氏 中国では法人利用が圧倒的に多く、ITリテラシーも高い人が多い。一方、個人ユーザーのローミング利用はそれほど多くありません。世界データ定額は、プライベートで渡航する数の多い国を優先的に選んだので、中国は今回は外しました。しかし要望の声も挙がっているので、今後検討していきます。

石丸氏 欧州はなるべく固めて多くの地域を対応させました。狭い地域で対象の有無が出てくると、移動中に世界データ定額から海外ダブル定額に切り替わって思ったよりコストが掛かった、なんて可能性が出てきて危ないですからね。

―― 最後に今後の目標をお願いいたします。

石丸氏 現状は海外に行くauユーザーのうちローミング利用率は3割程度ですが、3人に1人から最終的には全員に使ってもらえるようになるのが目標です。

白井氏 人数でも、日数でも、世界データ定額の利用率を上げたいですね。8月29日スタートの「au STAR ギフト」では、毎月24時間分を無料でプレゼントします。まずは1日無料で使ってみて、世界データ定額の便利さを体感してもらいたいですね。(1日無料は)毎月もらえるので、頻繁に海外に行く人にも使っていただきたいです。

最終更新:8月8日(月)19時8分

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