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虚構に勝てるのは虚構だけだ! 「シン・ゴジラ」中盤が最恐だった理由 【ネタバレ注意】

ねとらぼ 8月5日(金)21時5分配信

●ネタバレしますよ、本当に良いですね?(総理に念押しする防衛大臣風に)

 「シン・ゴジラ」が公開され早1週間が経過しました。ネット上では内容について語りたくてムズムズしつつも、これから見る人に配慮して自重気味な感想を上げている方を多く見掛けます。しかし8月6日にはネタバレ全開な関連商品が発売されることですし、そろそろぶっちゃけレビューを書いても大丈夫なはず!

【上陸した怪獣(※イメージ)】

 逆に、気になってるけどまだ見てませんという人は本日以降どんどんネタバレ情報が降り注ぐようになってくるはずですので、なるべく急いで映画館へGOしましょう。まあ、多少ネタバレを食らっても圧倒的な面白さは揺らがないと断言できますけどね! というわけで以下、本編のネタバレを含みます。

●これがゴジラなのか!?

 まず面食らうのは、ゴジラの初上陸シーン。いきなり「どちらさま!?」状態です。確かに上陸前に尻尾だけが映るシーンで既に、予告編のゴジラの尻尾とは異なるツルっとした質感に違和感がありました。しかしまさかこんな似て非なるものが飛び出てくるとは。見ている側としては、この時点ではこいつがゴジラなのか、はたまたゴジラのライバル怪獣なのか一切判別できません。

 また、事件発生直後の行政の対応は後手気味で、案外コミカルに描かれています。会議やテレビ中継で「上陸の可能性は無い」と断言した直後にもかかわらず、不思議な形をした怪獣は既に上陸をしていて、人々が必至に逃げ惑っている。鷺巣詩郎さんが手掛ける不穏な音楽も合わさり、事態をどの程度深刻に受け止めるべきか分からないまま、どんどん話は進行していきます。

 パンフ掲載のゴジライメージデザイン・前田真宏さんへのインタビューによると、ゴジラ第2形態の姿は実在する深海魚「ラブカ」を参考にしているそうです(※第1形態は海中から尻尾だけが見えている状態。陸に上がった時点で第2形態へと進化済みです)。もぞもぞと腹ばいで都市を横断していく姿は異形そのもの。そしてしばらく進行したところで、ゴジラは第3形態へと進化し、直立します。観客としてはこの段階になってはじめて、「こいつがゴジラだったのか!」と確信するわけです。合わせて、事態がもう相当やばいところまで来ていると認識できるのもこの瞬間でしょう。

●なぜ恐怖のピークは中盤なのか

 今回のゴジラはでたらめに強いです。前例の無い形態変化。巨神兵にしか見えないビーム。イデオンやガンバスターを思わせる全方位攻撃……。東京を火の海に沈めるまでゴジラの恐ろしさはどんどんエスカレートしていきます。ところが中盤の見せ場をピークに、ゴジラはいったん活動を停止。そこから人類側の猛反撃(主に会議や関係各所との交渉)が始まり、終盤の「ヤシオリ作戦」へと雪崩れ込みます。

 ヤシオリ作戦では中盤の重苦しいムードが一変、人類側が終始押せ押せで、ゴジラは防戦一方となります。ここである種の逆転現象に気付きます。それまで「現実的」に描かれていた日本政府の対応が、ヤシオリ作戦では一気に「虚構的」となっているのです。『シン・ゴジラ』には「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)。」という素晴らしいキャッチコピーがつけられていますが、本編の最終決戦においては現実と虚構の関係性が逆転しているのです。現実の公務員は「この機を逃すな! 無人在来線爆弾、全機投入!」なんて号令は出しません。これは「虚構=フィクション=映像作品」の力を信じているという、庵野総監督の宣誓のようにも受け取れます。

 実はニッポン・ゴジラ間の性質反転にはもう一つ布石があります。中盤まで人智を超えた存在だったゴジラは、「巨大不明生物特設災害対策本部(通称:巨災対)」の総力を上げた解析により、徐々に正体が明らかとなっていきます。中盤までのゴジラが怖いのは、何をしでかすか分からない正体不明の存在だから。しかしゴジラと言えど絶対不滅の存在ではなく、極限環境微生物を血液凝固剤でゴニョゴニョすると何とかなるらしい! と「現実」側の存在として引き寄せることで、絶対的に見えたゴジラの存在に付け入る隙ができるのです。

●最強の非実在生物「ゴジラ」

 ゴジラにニッポン渾身の虚構性をぶつけたヤシオリ作戦は見事成功し、「ニッポン対ゴジラ」はいちおうニッポン側の勝利に終わります。ところがそのままスッキリ終わらせてくれないのが庵野節。最後は観客の頭にさまざまな「?」を残す尻尾のクローズアップで終わります。「尻尾から出てこようとしているのは人間なのか?」「いや巨神兵では?」「映画冒頭で失踪したマキ元教授はどうなったのか?」「マキ元教授がゴジラとなったのか?」……。

 結局のところ、ゴジラの出自や正体については大きな謎が残されたまま、答えは観客に委ねられます。正体が分からないから怖いという意味では、今回のゴジラは妖怪や魑魅魍魎(ちみもうりょう)の類に分類したくなるほどです。そんなゴジラを倒す作戦名が、日本最古の妖怪「ヤマタノオロチ」の退治譚にちなんで「ヤシオリ作戦」と命名されたのは必然だったのかもしれません。そして最後の最後にゴジラの存在にブラックボックスが明示されたことで、ゴジラは凍結されていながら「制御下ではない」ことが強調され、虚構に生きる非実在生物としてさらなるパワーアップを果たしたように思えてなりません。

最終更新:8月5日(金)21時5分

ねとらぼ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。