ここから本文です

<特別連載>ミャンマーのロヒンギャ問題とは何か? (12) 上座仏教の拡がりとミャンマー 宇田有三

アジアプレス・ネットワーク 8月5日(金)10時43分配信

Q.  ロヒンギャに対して今、どうすればいいのですか?
A. 問題なのは、もっとも虐げられているロヒンギャ・ムスリムたちの状況を救うために、何ができるか、ということです。ミャンマー政府の主張、ロヒンギャ・ムスリムの人びとの主張、どちらがより正しいという議論ではないのです。

【関連写真を見る】 写真特集ロヒンジャ難民は今

もちろん、現在進行形での迫害を止めさせなければなりませんが、積年の問題を解決するために、まずはできるだけ正確な情報を知ることから始めるのが一番です。

A. ところで、もしミャンマー観光に行くなら、どこで何を見たいですか?

Q. やっぱり世界三大仏教遺跡の一つ、パガンのパゴダ(仏塔)遺跡群、崖から落ちそうになっている奇妙な岩に立つゴールデン・ロック、それに黄金に輝くヤンゴンのシュエダゴン・パゴダでしょうか。

A. そうですね。多くの観光客はそう答えます。ミャンマー人たちも同じです。ゴールデン・ロックは、現地の人のハネムーン先としても人気です。

実は、パガンの仏教遺跡はビルマ族の仏教遺跡です。でも、ゴールデン・ロックやシュエダゴン・パゴダは、モン族の仏教遺跡なのです。

実は、ミャンマー国内の上座仏教には大きく4つの流れがあります。
(1)ビルマ(ミャンマー)族の仏教
(2)モン族の仏教
(3)ラカイン族の仏教
(4)シャン族の仏教

モン族が暮らす地域の州都は、サルウィン河(タンルウィン河)の河口に位置するモーラミャインです。しかし昔、モン族が活動した場所の中心は、タトンというところにありました。そのタトンはもともと「スワンナブーミ= 黄金の国」と呼ばれていました。

Q. スワンナプームといえば、隣国タイの国際空港の名前ではないですか?
A. そうです。タイも敬虔な上座仏教の王国ですし、国民から敬愛されている現在のプミポン国王が新空港の開港に当たってこの名前を付けたのは不思議ではありません。日本語ではスワンナプームといいますが、英語では仏教徒の伝統地「Suvarnabhumi(スワルナブーミ)」=黄金の国です。

ミャンマーとタイは上座仏教が信奉されていた地域ですし、信仰の枠組みで見ると、今の国境線を考えずに捉えた方がいいのです。それにモン族がたくさん暮らすモン州は海に面しており、彼らはかつて海洋民族として交易に従事していた支配勢力のひとつでした。(つづく)



宇田有三(うだ・ゆうぞう) フリーランス・フォトジャーナリスト
1963年神戸市生まれ。1992年中米の紛争地エルサルバドルの取材を皮切りに取材活動を開始。東南アジアや中米諸国を中心に、軍事政権下の人びとの暮らし・先住民族・ 世界の貧困などの取材を続ける。http://www.uzo.net
著書・写真集に 『観光コースでないミャンマー(ビルマ)』
『Peoples in the Winds of Change ビルマ 変化に生きる人びと』など。

最終更新:8月11日(木)23時36分

アジアプレス・ネットワーク