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幻の花「幽霊ラン」、再生へ研究者が奮闘 米フロリダ

AFPBB News 8/5(金) 8:59配信

(c)AFPBB News

【8月5日 AFP】米フロリダ(Florida)州南部に広がるフロリダパンサー国立野生生物保護区(Florida Panther National Wildlife Refuge)。マイク・ケイン(Mike Kane)氏はオレンジ色の大型ホチキスと、緑色の根が絡みついた四角い麻布数十枚を手に、腰ほどの深さの沼地を分け入っていく。長年にわたって違法に採取され続けてきた結果、激減してしまったある植物の個体数を回復させるためだ。

 その植物は名前を「幽霊ラン(学名:Dendrophylax lindenii)」という。

 幽霊ランは、かつてはフロリダ州のエバーグレーズ(Everglades)に多数自生していたが、専門家によると現在は州全体で2000株足らずしか残っていない「絶滅危惧種」だ。対岸のキューバでもいくらか確認されているが、その数についてはよく分かっていない。

 フロリダ大学(University of Florida)の環境園芸学の教授であるケイン氏は、幽霊ランの生息を最も脅かしているものとして、密採のほかに都市化や農薬汚染などを挙げる。農薬の散布で生息地が汚染されると、受粉を媒介する昆虫の数が減ってしまうのだという。

「このままでは絶滅してしまう」。そう危機感を募らせるケイン氏は、幽霊ランを沼地で繁殖させるプロジェクトを率いている。今まで誰もしてこなかった試みだ。

 ケイン氏と大学院の学生たちは、フロリダ州北部にある研究室で遺伝子の異なる種子から幽霊ランを栽培。数年かけて育てた苗を、フロリダパンサー国立野生生物保護区内の奥まった人けのない場所に運んで植え付けている。今年は160株を植えたという。

 ケイン氏によると、昨年植えたのは半分の80株だった。植え付けから数週間後に沼地に見に行ったところ、大半が無事に生育しているのが分かり、当時大学院生だったベトナム人のグエン・ホアンさんとその場でハイタッチを交わして大喜びしたという。「とても順調に育っていて、にわかには信じられなかった。とても驚いたよ」

■環境の変化を予告

 密採者に狙われることが多い幽霊ランは、「The Orchid Thief(邦訳:蘭に魅せられた男―驚くべき蘭コレクターの世界)」という書籍が刊行され、さらに同書を原作にニコラス・ケイジ(Nicolas Cage)とメリル・ストリープ(Meryl Streep)が主演した映画『アダプテーション(Adaptation)』が制作されたことで、ポップカルチャーの世界でも有名になった。

 幽霊ランの愛好家を虜にしているのは、葉のないエロチックな見た目や純白の色、風になびいて揺れる風情だ。花は年に1度、通常6~7月に1週間ほど咲き続ける。

 幽霊ランは生育が難しいことで知られ、特に自然環境から引き離されると枯れずに育つのは輪をかけて難しくなる。

 フロリダ州マイアミ(Miami)にあるフェアチャイルド熱帯植物園(Fairchild Tropical Botanical Garden)のカール・ルイス(Carl Lewis)園長は「幽霊ランが絶滅しかけているのは、密採者が幽霊ランを木から取り出し、森から持ち出し、室内用の鉢植え植物として育てるために国内各地に送ってしまったからだ」と指摘する。

 幽霊ランの保全に努めている研究者らは、これは1つの花の保護にとどまらない取り組みだと訴える。

 ケイン氏は「ランは環境の変化を最初に教えてくれる存在だ」と語り、「幽霊ランの生育方法や元の自生地に戻す方法を理解することは、自然保護にとって非常に重要な土台になる」とその意義を強調している。(c)AFPBB News

最終更新:8/5(金) 8:59

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