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耐震性は大丈夫!? 「瓦屋根」の魅力と注意点とは

SUUMOジャーナル 8月5日(金)7時30分配信

2度の震度7に見舞われた熊本地震では住宅の倒壊が目立ちました。全壊した瓦屋根の家の映像などによって、「瓦は重いから地震に弱い」という印象をより強くした方は少なくないかもしれません。でも本当にそうなのでしょうか? 瓦屋根の家に住む人、新築やリフォームを考えている人にとって気になる耐震性。この機に改めて瓦屋根の利点や注意点について知っておきましょう。

■主犯は瓦屋根ではない! 倒壊の主な原因は構造躯体と地盤の弱さ

「瓦は重いから他の屋根材に比べて耐震性が低い」といった風評がよく聞かれますが、本当に屋根材の違いによって家の耐震性に差が生じるのでしょうか? 屋根と耐震性について、一般財団法人全国工務店協会(JBN)の政策調査委員で、坂下工務店社長でもある坂下託一さんに伺いました。

「屋根の重さによって家の耐震性が変わることは確かです。家の構造が同じ場合、屋根が軽ければ軽いほど建物の揺れは小さくなります。しかし、『瓦屋根だから倒壊する・軽い屋根だから倒壊しない』ということではありません。問題は建物の構造なのです。先日、熊本地震の状況を視察しましたが、倒壊している家のほとんどは構造が脆弱な家や地盤の弱い土地に建っていた家ばかり。地震に弱い原因は屋根だけにあるのではないのです」(坂下さん)

「脆弱な構造とは、[壁の量が少ない][梁が太くない][基礎が堅固でない][開口部の位置やバランスに偏りがある]ということ。こうした構造では、いくら屋根が軽くても揺れが大きくなります」(坂下さん)
また、屋根も含めて建物全体が強固に一体化しているかどうかも耐震性に影響します。

1981年6月に改正された建築基準法では、屋根の重さを考慮した構造計算が義務づけられており、屋根重量に応じた壁量、柱・梁の太さ、強固な基礎等が確保されます。そのため、瓦屋根の家が軽い屋根の家に比べて、耐震性が劣るということはありません。

また、全日本瓦工事業連盟が1999年に定めた「ガイドライン工法」によって葺かれた瓦屋根の場合、従来の瓦屋根に比べて瓦を強固に接続するので、耐震性や耐風性が飛躍的に高まっています。

しかし、改正前の建築基準法は現行法に比べて耐震基準が弱く、その基準に沿って建てられた家は細い柱や梁を使ったり筋交いが少なかったりと、耐震強度に問題がある家が多いのも事実です。
一方、本来の日本家屋は瓦の重さに耐えられるよう太い柱や梁を使って建てられていたため、築35年以上の古い家でも耐震性に問題のない家も多く存在します。

弱い構造の家は、構造の耐震補強や屋根材の葺き替え、減築等の工事が必要な場合もあるので、心配な人は耐震リフォーム、屋根リフォームを行っている工務店・建築会社・屋根職人に相談してみると良いでしょう。

耐震診断や耐震リフォームは思った以上に費用が掛かりますが、自治体からの補助金も受けられます。地震大国の日本で暮らすのだから、安心費用として前向きに考えたいものです。

■屋根材はライフサイクルコストで選ぶのがお勧め

そもそも屋根材には瓦を含めてどんな物があるのか、それぞれの特徴は何かを確認しましょう。
主な屋根材は下図の通り、[瓦][セメント瓦][化粧スレート][ガルバリウム鋼鈑]の4タイプあり、耐久性の高さ、メンテナンスの頻度など、素材ごとに特徴が異なっています。

【図1】主な屋根材の特徴(取材により編集部作成)

瓦の最大の特徴は耐久性の高さ。長年に渡って美しさを保ちます。他の屋根材が20~50年ほどで葺き替えが必要になることを考えると、100年間もつ屋根というのは魅力です。
「初期コストはかかりますが、製造→維持管理→廃棄までトータルで考える『ライフサイクルコスト』で見ると、瓦が一番のお勧めです」(坂下さん)

重量のある瓦屋根にする場合、軽量な屋根の家に比べて耐力壁(建物を支える壁)や通し柱の確保等で、設計の自由度が若干減ったり、構造を強固にするために建築コストが若干増す等の注意点もあります。

「ガルバリウム鋼鈑もメンテナンス性や軽量である点で魅力がある屋根材です。シャープでモダンな住宅デザインに仕上げられるので、特に建築設計事務所等ではよく採用されています」(坂下さん)

「あまりお勧めしていないのは化粧スレートです。製品にもよりますが、20年ほど放っておくと割れやすくなるので、10年ほどで塗装、20~25年で葺き替えといった維持管理が欠かせません。その都度、施工費や材料費の他、足場代だけで100万円ほど掛かってしまうこともあるので注意が必要です。家を建ててから10年後というと教育費が一番掛かる時期と重なるお施主さんも多く、メンテナンス費用が掛けられないという状況も多いですね」(坂下さん)

上記の他、[トタン](亜鉛をめっきした薄い鋼鈑屋根材)や[銅板]も住宅の屋根材として見られます。
トタンは安価で軽量ですが、防錆・防音・断熱・耐久性が劣ります。庇など部分的に使われることが多い銅板は、軽くて防錆・耐久性が高く、基本的にメンテナンスがほとんど不要ですが、高額です。

【画像1】左:スレート葺き屋根、右:ガルバリウム鋼板の屋根(写真/PIXTA)

■今、選ぶなら[軽量防災瓦]と[自然石粒付鋼鈑]

屋根材は以前より性能が進化しているようですが、注目すべき新製品や新素材はあるのでしょうか。

「瓦屋根にするなら、[軽量防災瓦]がお勧めです」と坂下さん。
軽量防災瓦とは一般的な瓦の特徴を持ちつつ、重量を1割ほど軽量化し、瓦同士がかみ合う構造によって、台風や暴風での浮き上がり、地震でのずれ、大雨での雨水侵入等を防ぐ屋根材です。価格は製品にもよりますが、瓦とほぼ同程度か若干高めです。

坂下さんの地元、三重県志摩市では台風の被害や塩害が多いことを考えて、全てのお施主さんに防災瓦を勧めているそう。「海水、雨、湿気など水に強いのも瓦の魅力です」(坂下さん)

「また、ガルバリウム鋼鈑の表面を自然石粒でコーティングした[自然石粒付鋼鈑]もどんどん普及してきています」と坂下さん。

自然石粒付鋼鈑の良いところは、ガルバリウム鋼鈑のメリットはそのままに、遮熱性、防音性、防錆性、防傷性を高めている点。価格は瓦と同程度でガルバリウム鋼鈑よりは高額になります。
日本瓦や洋瓦の形をしたタイプもあり、デザインの自由度が高いのも特徴。日本家屋の伝統的な屋根「入母屋」は複雑な形状で瓦の数が多く、重量のある屋根ですが、自然石粒付鋼鈑によって軽量に仕上げることも可能です。

【画像2】洋風デザインの家に似合うタイプなど、瓦のデザインは意外と豊富です(写真/PIXTA)

■屋根のメンテナンスやリフォームで家の寿命を延ばす

屋根のメンテナンスは家の耐久性や住み心地を保つ点で大切です。雨漏りしてから屋根の隙間を防ぐのでは遅いからです。
「瓦は基本的にメンテナンスフリーではありますが、築年数の経っている家は、瓦の隙間を塞いでいる漆喰が劣化したり、棟(屋根の一番高い部分)の瓦がずれていたりすることも多く、定期的な点検が必要です」(坂下さん)

一番劣化が早い化粧スレートの屋根は、今後のメンテナンスを考えて、耐久性が高く軽量な屋根材への葺き替えを検討しましょう。「元のスレート屋根に防水シートを敷き、その上に軽い屋根材を葺く[カバー工法]を採用する人が多いですね」(坂下さん)

カバー工法は比較的低コストで工期も短いですが、重量が増すので、構造が脆弱な家は負担がかかる可能性を工務店に考慮してもらう必要もあります。

【画像3】こんな屋根の風景にほっとなごむ(写真/PIXTA)

■おわりに

現在、新築住宅で最も多く使われている屋根材は化粧スレートだそうです。理由は、屋根や構造躯体の建築コストが最も安く済むから。デザインの洋風化、簡素化が進み、重い屋根材は地震に不向きという風評から、瓦を敬遠した結果ということもあるかもしれません。
しかし、化粧スレートはメンテナンスや葺き替え、廃棄まで含めたトータルコストでは結果的に高くつく可能性が大きい屋根材です。

それに比べると瓦は結果的にトータルコストが安く済みます。懸念の耐震面でも建築基準法で倒壊しない構造計算の元、建てられていることや、軽量防災瓦の使用、ガイドライン工法での強固な屋根構造によって、古い家に比べて耐震性は格段に高まっています。

そもそも日本で瓦が普及してきたのは、[防火・類焼対策としての性能が高い][高温多湿に合ったほどよい通気性や断熱性がある][台風や強風でも屋根が吹き飛びにくい重さがある]といったように、日本の気候風土に合った性能を持ち合わせているから。また、デザイン的にも日本の景色に似合う落ち着いた装いです。今改めて、日本の風土に適した瓦の魅力を感じる人も増えているのではないでしょうか。

「屋根も家も、命を守る役目を担っているものです。地震や災害に強い家にすることを最優先に考えたいですね」という坂下さんの言葉が印象的でした。

●取材協力
・一般財団法人 全国工務店協会(JBN)

金井直子

最終更新:8月5日(金)8時4分

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