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業績好調の3キャリア――MVNOやY!mobileの台頭、公取委の指導で市場変化の可能性も

ITmedia Mobile 8月6日(土)6時25分配信

 ドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ3社の第1四半期決算が出そろった。3社とも業績は好調。ドコモは、売上高1兆1087億円、営業利益2993億円で増収増益。「年間計画達成に向け、順調な滑り出しになった」(ドコモ 代表取締役社長 吉澤和弘氏)と、一時の苦境は完全に脱したようだ。KDDIも傾向は同じで、売上高1兆466億円、営業利益2310億円と増収増益を達成した。

【板挟みに遭うauはどうする?】

 ソフトバンクグループは孫正義社長が「円高の影響。ドルで見ると(Sprintは)去年(2015年)と今年(2016年)で、売上が減っていないことが分かる」と述べているように、為替の影響で、円立てでの増収は小幅にとどまった。ただし、同社も増収増益は達成。売上高2兆1265億円、営業利益3192億円となり、業績を伸ばしている。KDDIやソフトバンクは、モバイル専業というわけではないため、ドコモと直接的な比較はできないが、それでも3社とも、第1四半期は好調だったとはいえるだろう。

●データ利用増や光回線の増加が業績を押し上げる

 3社が順調に業績を伸ばしている要因は、どこにあるのか。モバイル分野に関していえば、3社とも傾向は近い。1契約あたりの収入であるARPUが伸び、光回線とのセット販売が本格化してきたことや、総務省のガイドラインによって定められた「実質0円禁止」が始まった結果、解約率も低下している。その上で、通信料収入以外が増えているのも、3社共通だ。

 スマートフォンの移行が進むと、データ利用が増え、収入が増加する。また、各社ともタブレットなどの2台持ちを推進。ドコモは「今年(2016年)の第1四半期も、変わらない伸びを示している。2台目需要は非常に強いと思う」(吉澤氏)といい、KDDIも「マルチデバイスの推進によってARPA(1ユーザーからの収入)の成長をけん引している」(KDDI 田中孝司社長)。タブレットやWi-Fiルーターなどの2台持ちは、単純な2回線の合計よりもキャリアが得られる収入は低くなるものの、ユーザー1人あたりに換算すれば、収益が増加するというわけだ。

 固定回線とのセット販売では、「auスマートバリュー」でリードしていたKDDIだが、ドコモやソフトバンクも、NTT東西の光コラボレーションモデルを活用し、追随する。その効果は第1四半期の決算にも表れており、ドコモはARPUを130円教え上げる効果があった。「1年目はどちらかというと、フレッツからの転用が伸びていたが、転用はある程度のところで数に限りがある。第1四半期は、新規の割合が増えている」のが、市場を拡大できている要因だ。これまでとの違いは、「(ひかり電話などの)オプションサービスへの加入が増えている」(吉澤氏)ところにもある。

 ソフトバンクは、「解約率が史上最低レベル」(孫氏)という形で効果が表れている。ソフトバンク光の累計契約者数も224万人に上り、「急増している」と孫氏は自信をのぞかせた。ソフトバンクはYahoo!BBなど、他の固定通信事業もあり、単体で見るとユーザー数は減少しているが、ソフトバンク光の押し上げ効果もあったため「累計でも急激に回線が伸びており、モバイルも安定している」(同)状況になった。

 一方で、通信収入の伸びには限界もある。各社が付加価値領域に注力しているのも、そのためだ。第1四半期では、ドコモが「スマートライフ領域では、25.7%増の289億円」(吉澤氏)の営業利益があり、dマーケットのユーザー数は6月末で1448万契約となった。「2月、3月は積極的な販売促進をした反動もあり、昨年(2015年度)第4四半期の数字(契約者数)より減少しているが、7月27日時点では1511万と回復の方向に向かっている」(同)と、契約者数も増加傾向にある。パートナーとのコラボレーションを促進する「+d」については、「6月末で66件まで増加した」(同)。

 KDDIも付加価値領域を広げており、「au経済圏」を拡大する方針だ。「au WALLET Market」や「auでんき」、各種保険サービスなどを立て続けに始めているのはそのためで、「損害保険と住宅ローンは、計画に比べてかなり伸びている」(田中氏)という。au WALLET Marketについては、「au STARとの連携で、秋からもう少し上がってくる」(同)見込みだ。

 対するソフトバンクは、投資を強化。海外事業ではSprintを買収し、再建の最中にある。ポストペイドでは17万の純増を記録、フリーキャッシュフローも四半期ではプラスに転じ、「反転のめどが見えてきている」(孫氏)という。アリババ株やSupercellの売却で手に入れた現金を使いながら、CPUの設計を手掛ける英ARMを買収したのも記憶に新しい。ドコモやKDDIとはやや異なるアプローチだが、ソフトバンクも、モバイルの“次”を模索している様子がうかがえる。

●MVNOやY!mobileの台頭で競争環境が徐々に変化

 順風満帆に見える3キャリアだが、一方で、MVNOやY!mobileをはじめとするサブブランドへの流出も徐々に大きくなっている。KDDIの田中氏は「MNOとしてID(顧客)の成長は、厳しくなってきている」と率直にその影響を認める。光回線のセット販売やガイドラインの影響で3キャリア間のMNPは沈静化している一方、契約者獲得競争の舞台が、MVNOやサブブランドに移りつつあるということだ。

 「数そのものは申し上げられないが、全体的にかなり増えてきている」(吉澤氏)MVNOだが、ドコモやKDDIにとって、脅威になっているのがY!mobileだ。田中氏は「大きな流出先はY!mobile」と語っており、吉澤氏も「動きとして、ドコモから行っているのは確かにある」と認める。MVNOはそのほとんどがドコモのネットワークを借りている。そのため、仮に流出先がMVNOなら、ドコモの契約者数はプラスマイナスゼロで、ネットワーク使用料という形で間接的に収入を得ることもできる。一方で、ソフトバンクのサブブランドであるY!mobileへの流出は打撃になる。

 このY!mobileに、ドコモは「パケットについては、シェアパック5などで料金的に対応、対抗できる。dマーケットのサービスをしっかりご利用いただける方を、ドコモのお客さまとして維持したい」(吉澤氏)という見方を示す。よりドコモを積極的に使うユーザーを自社に残しつつ、Y!mobileに対しては、ネットワークを借りるMVNOが戦うという構図に持っていきたいというわけだ。

 一方で吉澤氏によると、「フィーチャーフォン(iモードケータイ)からY!mobileに行かれる方もいる」という。ここに対しては、Androidベースのフィーチャーフォンで対抗していく方針だ。同氏は「秋にLTE対応フィーチャーフォンを出すときに、それなりのプランを検討している」と述べており、端末だけでなく、料金での対抗策も準備しているようだ。フィーチャーフォンからスマートフォンに移るユーザーは、ARPUの上昇が見込める。吉澤氏の発言からは、Y!mobileに移るのであれば、多少料金を下げてでも自社にとどめておきたいという思惑も透けて見える。

 より深刻なのがKDDIで、「3社間の流動はないが、MVNOやソフトバンクのY!mobileに対しては、流動が見られる」(田中氏)。ドコモ系のMVNOと、ソフトバンクのサブブランドであるY!mobileに、挟み撃ちにあっている格好だ。KDDIは「IDが自分たちから流出しないよう、チャーンレート(解約率)を下げる行動に出なければならない」(同)。傘下のUQ mobileを強化したのはそのためで、「他のキャンプにいるMVNOより、auの回線を使うMVNOがリクープすれば(損失を取り戻せば)、少なくとも回線収入はわれわれのものになる」(同)からだ。 

 2社にライバル視されているY!mobileは「非常に順調」(孫氏)だが、ソフトバンクと合算した主要回線の純増数は第1四半期で11万2000と微増にとどまっている。PHSや通信モジュールといった非主要回線まで含めると、37万7000の純減だ。ドコモやKDDIが純増を維持していることを考えると、かつての勢いが失われつつあるようにも見える。また、ソフトバンクとY!mobileは、ブランドこそ分かれているものの、あくまで同じ会社だ。見方を変えれば、単にユーザーがより安い料金プランを選択していることにもなる。実際、主要回線のARPUはじわじわと下がっており、第1四半期には4610円(総合ARPU)となった。好調な一方で、素直に喜べないのがソフトバンクの本音かもしれない。

●公取委の指導で市場がさらに変化する可能性も

 3キャリアの決算発表と前後して、8月2日には、公正取引委員会が「携帯電話市場における競争政策上の課題」と題した報告書を発表した。報告書は総務省の示したガイドラインを下敷きにしているが、内容を見る限り、一歩踏み込んだものにもなっている。

 中でも大きな影響が出そうなのが、端末の割引に関する要請だ。報告書には、月々サポート、毎月割、月月割を「価格競争の表れであり、それ自体は望ましい」とする一方で、「競争政策の観点からは前記販売方法は見直されることが望ましい」とも記載されている。割引そのものを止める必要はないが、金額は減らすべきというわけだ。キャリアの割引により、もともと高額だったハイエンド端末が「実質価格」で販売されると、本体価格だけで勝負しているSIMフリースマートフォンが不利になる。その競争環境が公平ではないというわけだ。

 また、割賦によって支払い総額の決定権が事実上、キャリアにあることも問題視している。排除措置命令などの行政処分がくだったわけではないが、報告書には「独占禁止法に違反する疑いのある具体的な事実に接した場合には調査を行うとともに、違反する事実が認められたときには厳正に対処する」ともあり、厳しい姿勢で臨んでいく公取委の意思も見え隠れする。

 報告書が発表されたのが8月3日だったため、キャリア3社はまだ具体的な対応を取れていない。同日説明会を開催したKDDIの田中氏も、「先ほどサイトに載ったばかりで、詳細を見ていないので何とも言えない」とコメントを控えた。ドコモの吉澤氏も、7月29日の段階で、「完全にダメということではなく、それをやることで本当に競争が阻害されるのか。(端末と通信料を)分離していないことが、競争阻害の要因になっているかどうかを明確にしていく必要がある」と述べるにとどまっている。

 具体的な数値や、実際のケースが挙げられているわけではないため、影響の範囲がどこまで広がるのかは未知数だが、報告書の内容を文字通り受け止めると、今後は割引を減らしていかざるをえなくなるかもしれない。これは、ガイドラインの「実質0円禁止」以上に、キャリアの端末販売を冷え込ませる要因になりそうだ。結果として大手キャリア3社の流動性はさらに低くなり、より安価な端末がそろっているMVNOへのシフトが一段と進む可能性もある。第1四半期の決算が順調だったキャリア3社だが、市場環境が劇的に変わる可能性もあり、予断を許さない状況だ。

最終更新:8月8日(月)17時31分

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