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復興のコメ今秋収穫 被災地を活性化 後藤直之さん、脱サラで農業

福島民報 8月6日(土)9時19分配信

 福島県新地町駒ケ嶺の後藤直之さん(32)は脱サラし今春、コメの大規模生産を手掛ける株式会社グラン・ファームを設立した。有機農法にこだわる。会社設立後、今秋に初めての収穫を迎える。「若い人に農業で稼げることを示し、被災地の農業を活性化したい」。若き耕人は出穂を目前にした稲を手に希望に胸を膨らませている。
 新地町の兼業農家に生まれたが、農家は継がなかった。相馬高を卒業し平成14年春、相馬市にあるIHIの相馬事業所に入社し、ジェットエンジンの製造に携わった。何かが足りない-。どこか心のモヤモヤが晴れない。人生の目標が見いだせなかった。
 東日本大震災、東京電力福島第一原発事故が起きたのはそのさなかだった。実家は津波で浸水し、代々受け継いだ水田は海水をかぶり、がれきが散乱した。荒涼とした光景を見つめながら思いが心に浮かんだ。
 「やっぱり農業が好きだ」
 豊かな自然の中で大地とともに生きる仕事を生涯のなりわいとする決心をした。25年末に思い切って退社した。
 前途は多難だった。水田のがれきを撤去し、土壌から塩分を取り除く作業に追われた。本格的な農業経験はほぼゼロ。祖父から手ほどきを受け、先輩農家の指導を仰ぎながら営農技術を磨いた。収益性を考えて農地の集約も進めた。つてを頼って水田の受託栽培を打診。後継者のいない高齢の生産者を中心に好意的な返答を得た。現在の作付面積は40ヘクタール。町内有数の規模となった。
 有機農法にこだわったコメの味は評判となった。「コメ本来の味がする」「冷めてもおいしい」。確かな手応えをつかんだ。
 会社設立は後継者を育成し、農業で町を活気づけたいとの思いからだった。現在、従業員は二人だが、徐々に増やす計画だ。営農技術を身に付けた従業員には独立してほしいと考えている。意欲に満ちた担い手が町で活躍する姿を思い描いている。
 「農業の魅力を感じない若者が多いとされているが、そんなことはない。経営を盤石にして農業の重要性や魅力を伝えたい」。言葉に自信と決意がのぞいた。
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 グラン・ファームでは今秋に収穫するコメの販売申し込みを受け付けている。問い合わせは同社 電話0244(26)3423へ。

福島民報社

最終更新:8月6日(土)10時26分

福島民報