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夏休みに読みたい「金融・経済小説10選」 半沢直樹、小説 巨大(ガリバー)証券……

ZUU online 8/7(日) 11:40配信

2013年の半沢直樹シリーズで金融・経済の小説の面白さに目覚めた人が多いようで、未だに池井戸潤の一連のシリーズは本屋で平積みにされているほどの人気だ。

金融界はリーマンショック、バブル崩壊、ITバブル崩壊など、まさに「事実は小説よりも奇なり」を地でいく、スケールの大きな実話がたくさんある。そしてそれぞれの話の裏には、人間ドラマが隠されている。

証券投資が社会人として当たり前のたしなみになってきた今、金融界の真実に迫るようなレベルの高いストーリー、スリリングな展開、人間ドラマが見えるような、夏休みに寝るのを惜しんで読んでしまいたくなる小説を紹介しよう。

国際金融の最前線でスリリングなのは、真山仁 、黒木亮、高杉良の金融・経済3大作家だろう。銀行や証券会社の第一線で活躍した人や金融担当のジャーナリストだった人が多いだけに、彼らの見た金融界の大事件を疑似体験することは、金融リテラシーを上げるのにもうってつけだろう。

■(1) 『ハゲタカ』作者: 真山仁 講談社 2004年

日本を代表する金融・経済小説と言えば「ハゲタカ」だ。続編『バイアウト(文庫版のタイトルは「ハゲタカⅡ」)』もあり、2007年にNHKでドラマ化、2009年には映画化されている。

未曾有の資産バブルの崩壊で日本は、株や不動産が大暴落、多くの金融機関が不良債権に苦しめられた。不良債権の急増で日本の証券会社、銀行も倒産の危機に面していた。日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、東京相和銀行の破綻、三和銀行、東海銀行、東洋信託がUFJホールディングスとして合併するなどの実話をもとにした壮大なストーリーだ。

作中では、ニューヨークの投資ファンドを運営する鷲津政彦は、不景気に苦しむ日本に舞い戻り、強烈な妨害や反発を受けながらも、次々と企業買収の成果を上げていった。不良債権を抱え瀕死状態にある企業の株や債券を買い叩き、手中に収めた企業を再生し莫大な利益をあげる、こうした 外資系の再生ファンドを「ハゲタカ」と称した。

ただ鷲津の目的はハゲタカではなく、外資の資金を利用し経営難から救うことにあった。

■(2)『巨大投資銀行』作者: 黒木亮 角川書店 2005年

同作品の時代背景は「ハゲタカ」と同じ頃だ。主人公の設定も似ており、ウォール街の大手投資銀行に勤める日本人が、投資銀行業務で培った経験を活かし、邦銀の再生に取り組むストーリーラインだ。

物語の主人公である桂木英一は、日本の都市銀行を飛び出し、実力勝負のウォール街の巨大投資銀行モルガン・スペンサーに転職した。巨額のM&Aや証券引受で勝機をつかみ、一流のインベストメント・バンカーへと駆け上っていく。

端的には、同作はバブル経済崩壊から今日に至るまでに、米・日金融戦争の最前線で繰り広げられた攻防を描いた経済小説だ。実在する組織や史実が巧みにストーリーに織り込まれている。ソロモンの通称「ソルト」と呼ばれる日本人トレーダー竜神宗一は、伝説のトレーダー明神氏がモデルだと言われている。

■(3)『獅子のごとく 小説 投資銀行日本人パートナー』作者:黒木亮 幻冬舎 2010年

『巨大投資銀行』もいいが、黒木氏の作品では講談社100周年記念で書き下ろしたこの『獅子のごとく』も面白い。高給取りで、夢のようなサクセスストーリー世界を渡り歩いている国際金融マンが、実はどれだけ孤独で苦しいのかが切ない小説だ。

ゴールドマン・サックスのパートナーの持田氏をモデルにした小で説だと言われている。作中には、投資銀行は、狙った大型ディールとるためには違法すれすれの手段もいとわない様子も描かれており、投資銀行マンの厳しい現実も垣間見られそうだ。主人公の逢坂丹は、NTTの幹事獲得の実話と思われるディールをすすめながら、投資銀行で上り詰める一方で、壊れていくちょっと悲しいストーリーだ。

■(4)『小説 巨大(ガリバー)証券』 作者:高杉良 講談社 1990年

時代はバブル真っ只中。「銀行よさようなら、証券よこんにちは」と証券会社の時代だった。インサイダー取引、主幹事をめぐる激烈な争い、会社乗っ取りなど、バブル経済を演出し、経済界に暗躍した巨大証券の現場を克明に綴っている。 野村證券をモデルにした作品といわれている。

ほかにも、野村證券については、1989年にアル・アレツハウザーという外人が米国で内幕を描いた『ザ・ハウス・オブ・ノムラ 』という書籍を発表しており、94年には日本語訳されていて、『小説 巨大証券』とともに話題になった。

■(5)『小説 ザ・外資』作者:高杉良 光文社 2002年

真山仁「ハゲタカ」、黒木亮の「巨大投資銀行」と同じ頃で同じようなテーマの作品で、米系投資ファンドであるリップルウッド・ホールディングスが日本長期信用銀行を買収した事件をモデルに描いたとされる小説だ。

不良債権にまみれて朽ちた邦銀を、外資系のハゲタカファンドが骨の髄までしゃぶろうという典型的な構図で描かれている。映画化された『金融腐蝕列島』では旧第一勧業銀行の総会屋事件をモチーフにした著者が、どのように描いたのか。金融・経済3大作家のそれぞれの描き方を比較できるのが楽しみだ。

■(6)『訣別 ゴールドマン・サックス』作者:グレッグ・スミス 講談社 2012年

外国人の暴露本で面白い本をすこし紹介しておこう。中でも名門として知られるゴールドマン・サックスは別格の存在だが、グレッグ・スミスが記した同書は、名門投資銀行の内幕を赤裸々に綴っている。

投資銀行はエリートにとって憧れの職場だ。その最難関ともいえる倍率をこなしてゴールドマンに入ったエリートが、会社や業界の内情を暴露した。同時多発テロがあり、リーマンショックがあり、株式デリバティブ部門で昇進して若くして幹部になっていたスミスのサクセスストーリーだけでなく、挫折や悩みが赤裸々に描かれている。

ちなみに、同書の原稿はもともと、ニューヨークタイムズに寄稿されて話題になったもの。ゴールドマン・サックスを退社する社員が、経営陣を批判することは極めて異例で、読み応えある内容だけではなく、珍しさからも一読の価値があるといえるだろう。

■(7)『ライアーズポーカー ウォール街は巨大な幼稚園』作者:マイケル・ルイス 角川書店 1990年

バブルの頃の米投資銀行ソロモン・ブラザーズは債券や株のトレーディングで名門だった。その債券トレーディングチームを引っ張っていたのが、後のLTCMという過去最大のドリームチームのヘッジファンドを設立して破綻するメリーウェザーの著書となっている。

同氏は債券セールスマンとしてソロモンに勤務した、退社後に発表した、ウォール・ストリートの内情をつぶさに紹介するドキュメンタリーだ。同書の中では、債券トレーダーたちの傲慢さ、尊大さ、日常的な乱暴・狼藉などが描かれており、アメリカでは大ベストセラーとなった。投資銀行のトレーディング・フロアの様子を体験するにはもってこいの本だ。

ちなみにマイケル・ルイスは、2003年にも「マネー・ボール」という大リーグ弱小球団の小説でベストセラーを出した。マネー・ボールは2011年にブラッド・ピット主演で映画化されている。

■(8)『私がベアリングズ銀行をつぶした 』作者:ニック・リーソン 新潮社 1997年

1995年にイギリスの投資銀行であるベアリングス銀行が破綻した事件を破綻させた本人が書いた手記だ。1996年にイギリスで出版され、1999年にはイギリスで映画が公開された。

ベアリングス銀行は、イギリスで女王陛下の資産運用をしていたほどの名門投資銀行であったが、1980年代の金融ビッグバン以降にはトレーディングに特化した投資銀行化していく。

同銀行は日本株の高騰で大きな利益をあげたが後に、日本のバブル崩壊で大打撃を被った。1995年にはシンガポール支店のニック・リーソンのデリバティブ取引の失敗で当時史上最高の1380億円の損失を出し、ベアリングス銀行は破産。233年の歴史に幕を閉じた。

リーソンはシンガポール国際金融取引所 (SIMEX) および大阪証券取引所に上場される日経225先物取引を行っていたが、1995年に阪神・淡路大震災が起きて日経株価指数が急落し、損失が拡大。損失を秘密口座に隠蔽すると同時に、先物オプションを買い支えるための更なる膨大なポジションを取った。

儲かっているときのシンガポールでのバブリーな様子、損失が出始めてからの苦悩が生々しい。トレーディングをやる人には是非読んでほしい作品だ。

■(9)『希望の国のエクソダス』作者:村上龍 文藝春秋 1998年

“金融小説”ではないかもしれないが、行き詰まった日本で80万人の中学生が学校を捨て、ネットビジネスで蜂起して、共同体や社会を建設していくストーリーを描く小説だ。

同作では、80万人の中学生達が情報戦略を駆使して日本の政界、経済界に衝撃を与える一大勢力に成長。その後、全世界の注目する中で、エクソダス(脱出)が始まった。

壮大な規模で現代日本の絶望と希望を描く傑作長編で、今でも十分にスリリングな展開にのめり込んでいける。 18歳選挙も開始され今まで以上に若者の社会参加が目立ってくるとの見通しとも重なる。

■(10)『オレたちバブル入行組』作者:池井戸潤 文藝春秋 2004年

ドラマ化もされ非常に大きな話題にもなった「半沢直樹」シリーズの第一作だ。バブル絶頂期にエリート銀行員として入行した半沢直樹は、気がつけばつらい中間管理職になっていた。会社の利益と顧客の狭間にたち、会社の出世競争にも巻き込まれる年代になっていた。

バブル入行組の意地と頑張りと出向などのちょっと悲しいストーリーはサラリーマンなら自分の姿とダブらせて応援したくなるだろう。シリーズ作品には他にも、「オレたち花のバブル組」「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」などもあり、まとめて夏休みに読むのには最もふさわしい作品だろう。

平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

最終更新:8/9(火) 17:29

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北朝鮮からの脱出
北朝鮮での幼少時代、『ここは地球上最高の国』と信じていたイ・ヒョンソだったが、90年代の大飢饉に接してその考えに疑問を抱き始める。14歳で脱北、その後中国で素性を隠しながらの生活が始まる。 これは、必死で毎日を生き延びてきた彼女の悲惨な日々とその先に見えた希望の物語。そして、北朝鮮から遠く離れても、なお常に危険に脅かされ続ける同朋達への力強いメッセージが込められている。