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津賀パナソニック社長、「これからは、Better Lifeです」

ニュースソクラ 8/7(日) 18:00配信

「わが経営」を語る 津賀一宏パナソニック社長(2)

――2018年度に連結売上高を10兆円にするという目標の代わりに、どんな旗印を掲げていくのでしょうか。(聞き手は森一夫)

 ブランドスローガンがすべてを象徴しています。「A Better Life, A Better World」ということです。創業者の時代から方向は同じで、人々の暮らしを昔の言葉ならば豊かにする。これからは「Better Life」です。

 何がよいかは今や、お客様によって異なります。だからお客様お1人お1人に寄り添って、どのようなお役立ちができるのか、多様な視点で、お客様の暮らしを少しでもよくして行こうというわけです。
 従来、我々は「家電メーカーです」というスタンスだったのかもしれません。しかしこれからはお客様が起点です。例えば自動車メーカーと一緒になって、高齢者の方が運転される場合に必要なことは何か探って、それに応えて行きます。

 同時に「Better World」を目指します。地域によって問題は、エネルギー、あるいは大気汚染など、様々です。日本について言えば、エネルギーもそうでしょうし、高齢化が進んでいますから、それに伴って住宅、空き家問題などいろいろな課題があります。こうした国や地域が直面する問題も含めて、お客様へのお役立ちを絶えず探して、解決に努めるというのが、私たちが今後目指す姿です。

――「A Better Life, A Better World」という標語は以前からありましたね。

 そうです。社長に就任してすぐに発信した言葉です。しかし必ずしもまだ実現できていないので、これから皆様に実感していただけるようにしたいと思っています。例えば日本では、住宅リフォームや高齢者介護など、お客様に直接向き合う事業を強化したりPRしたりして、パナソニックはお客様に寄り添うようなお役立ちを目指しますというメッセージを出しています。こういうことをより具体化していきます。

――どこまで実現できたのか、測る尺度は何ですか。

 2014年度の連結売上高7.7兆円に、新しいお役立ちによる売り上げを足し算して行って、10兆円にしようと思ったわけで、その気持ちは今も変わりません。発射台になる既存事業が小さくなり、新たなお役立ちの売り上げも目標の18年度までに足しきれない分があるので、今回「10兆円」の目標を下ろしました。でもお役立ちを足し算して、見える化することは引き続きやっていきます。

――社長は今まで「ユニークな会社にしたい」とも言っていましたが。

 パナソニックは、昔の言葉では総合電機メーカーかもしれませんが、目指すのは他にはできない新しい提案ができる会社です。例えば、車の中に住環境の良さを持ち込もうとしたとき、どこの会社ができますかと問われれば、パナソニックはできますと言えるわけです。1次自動車部品メーカーの大手は車のことを熟知していますが、住環境についてはよく知らないので難しいでしょう。

 住宅に関しても、例えばエネルギーやロボットという視点で、電機メーカーが得意とするシステムを組み込んだ住宅を提案できれば、やはりユニークな会社と言えます。

――社内のいろんな事業部の技術を掛け算すれば新しいものを提案できる「Cross-Value Innovation」という考え方を社長は唱えていますね。

 まさにユニークということは、掛け算ができるということなんです。住空間、車の移動空間、飛行機の中、公共スペースといった様々なところで技術の掛け算ができて、多様なお客様のお役立ちができる会社は少ないですよ。

 我々は事業部が37もあるので、専門性の高い技術や物づくり力があります。これらを使えば、Cross-Value Innovationがお客様により近いところでできます。世の中で一般的に言われているオープンイノベーションではなかなかできない点です。

――前期は減収増益で、今17年3月期は先行投資を優先して「意思を込めた減益」との見通しを出しています。目指す方向はよいとして、どこまでできているのか、今は途中経過なのか、どうですか。

 全く途中経過ですね。そういうCross-Value Innovationをやろうと思えば、どこの領域でお客様と向き合うのかを、会社として決めなければいけないのです。それをトップダウンで決めて初めて、いろいろな事業部がそのお客様の方に一緒になって行って提案しようとなるわけです。

 例えば車の分野であるとかリフォームであるとか、トップダウンで決めて、どのような商材が用意できるのか、どんな連携ができるのか、みたいなことが今始まっているところです。それが回って、売り上げの増加が来年、再来年とつながって行く状況です。

――的はある程度、つかめたのですか。

 ターゲットは見えてきていると言えます。事業方針の発表で、家電と住宅と車載に、最後にB2Bを挙げました。家電、住宅、車載の3つの領域は、どこに向かうべきかだいぶはっきりしてきたのは事実です。

 ただB2Bという企業など法人向けの領域は、用途ごとに個々のお客様とパートナーにならなければいけないので時間がかかります。訪問して、ぜひ一緒にやりましょうとなって、具体的な提案を求められます。試作を持って行くと、これでは駄目だから別の物を持ってきてとか、事前のやりとりがありますからね。

 もうひとつ、M&A(合併・買収)によって新しい領域に出て成果を上げるには、お客様のことをよく知る必要があります。米国のハスマンという冷凍ショーケースの会社を買収しましたけれど、ああいう場合には、新しいお客様のニーズを知って、関係を一から構築するのに少し時間が要ります。しかし我々の進むべき方向はだいぶ見えてきました。それは間違いないと思います。

■森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:8/7(日) 18:00

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